第十四話 気づいてしまった人(瑠奈視点)
月曜日の放課後。
七斗の「おつかれ」が、いつもより少し遅れた。
ほんの一瞬だけ、視線が別の方向に向いていた。
その先にいるのは、葉英。
気づかないわけがない。
だって私は、七斗をずっと見てるから。
体育館。
ボールが弾む音。
声。
靴が擦れる音。
その全部の中で、七斗の視線だけが浮いて見える。
パスを出したあと。
シュートが決まったあと。
タイムアウトのとき。
ほんの一瞬、葉英を見る。
無意識。
たぶん本人も気づいてない。
でも私は分かる。
(ああ、そっか)
胸の奥が、ひやっとする。
嫌な確信。
練習後。
「今日元気ない?」
さりげなく聞いた。
七斗は少し間を空けて「別に」と言う。
嘘。
昔からそう。
考えてるときは、目が泳ぐ。
「葉英となんかあった?」
一瞬だけ、動きが止まる。
それで十分。
「なんでもない」
そう言いながら、無意識に葉英の方を見る。
その視線。
胸がちくりとする。
たぶんこれが、嫉妬。
初めてちゃんと自覚した。
帰り道。
並んで歩く。
距離はいつもと同じ。
でも心の距離が、少し遠い。
「七斗さ」
「ん?」
「好きな人いる?」
冗談みたいに笑って言った。
本当は全然冗談じゃない。
「……分かんない」
曖昧な返事。
でも、分かってる。
“分かんない”って言うときは、もう誰かがいる。
私じゃない誰か。
名前は出さなくても、分かる。
葉英。
夜。
ベッドに寝転ぶ。
天井を見つめる。
七斗と初めて話した日を思い出す。
どうでもいい話で笑って。
くだらないことで盛り上がって。
隣にいるのが当たり前みたいになって。
それが、ずっと続くと思ってた。
でも違う。
七斗の目は、最近違う。
私を見る目と、葉英を見る目。
同じ優しさなのに、温度が違う。
葉英を見るときは、少しだけ熱がある。
(ずるいなあ)
私のほうが先に好きだったのに。
そう思った瞬間、自分が嫌になる。
好きに先も後もないのに。
スマホを見る。
七斗からメッセージ。
『今日はありがと』
それだけ。
普通の言葉。
なのに泣きそうになる。
返そうとして、止まる。
もし今、私が一歩踏み込んだら。
七斗はどうするんだろう。
選ぶのかな。
それとも、また曖昧なまま?
怖い。
でも。
取られるのはもっと怖い。
胸がぎゅっとなる。
静かな嫉妬は、声にならない。
笑っていられる。
普通に話せる。
でも確実に、削っていく。
(負けたくない)
心の中でだけ、そう思う。
七斗の視線が、完全に葉英に向く前に。
私は動くべき?
それとも待つ?
答えはまだ出ない。
ただ一つだけはっきりしている。
七斗が誰を見るのかで、私の明日が変わる。
月曜日の放課後。
七斗の「おつかれ」が、いつもより少し遅れた。
ほんの一瞬だけ、視線が別の方向に向いていた。
その先にいるのは、葉英。
気づかないわけがない。
だって私は、七斗をずっと見てるから。
体育館。
ボールが弾む音。
声。
靴が擦れる音。
その全部の中で、七斗の視線だけが浮いて見える。
パスを出したあと。
シュートが決まったあと。
タイムアウトのとき。
ほんの一瞬、葉英を見る。
無意識。
たぶん本人も気づいてない。
でも私は分かる。
(ああ、そっか)
胸の奥が、ひやっとする。
嫌な確信。
練習後。
「今日元気ない?」
さりげなく聞いた。
七斗は少し間を空けて「別に」と言う。
嘘。
昔からそう。
考えてるときは、目が泳ぐ。
「葉英となんかあった?」
一瞬だけ、動きが止まる。
それで十分。
「なんでもない」
そう言いながら、無意識に葉英の方を見る。
その視線。
胸がちくりとする。
たぶんこれが、嫉妬。
初めてちゃんと自覚した。
帰り道。
並んで歩く。
距離はいつもと同じ。
でも心の距離が、少し遠い。
「七斗さ」
「ん?」
「好きな人いる?」
冗談みたいに笑って言った。
本当は全然冗談じゃない。
「……分かんない」
曖昧な返事。
でも、分かってる。
“分かんない”って言うときは、もう誰かがいる。
私じゃない誰か。
名前は出さなくても、分かる。
葉英。
夜。
ベッドに寝転ぶ。
天井を見つめる。
七斗と初めて話した日を思い出す。
どうでもいい話で笑って。
くだらないことで盛り上がって。
隣にいるのが当たり前みたいになって。
それが、ずっと続くと思ってた。
でも違う。
七斗の目は、最近違う。
私を見る目と、葉英を見る目。
同じ優しさなのに、温度が違う。
葉英を見るときは、少しだけ熱がある。
(ずるいなあ)
私のほうが先に好きだったのに。
そう思った瞬間、自分が嫌になる。
好きに先も後もないのに。
スマホを見る。
七斗からメッセージ。
『今日はありがと』
それだけ。
普通の言葉。
なのに泣きそうになる。
返そうとして、止まる。
もし今、私が一歩踏み込んだら。
七斗はどうするんだろう。
選ぶのかな。
それとも、また曖昧なまま?
怖い。
でも。
取られるのはもっと怖い。
胸がぎゅっとなる。
静かな嫉妬は、声にならない。
笑っていられる。
普通に話せる。
でも確実に、削っていく。
(負けたくない)
心の中でだけ、そう思う。
七斗の視線が、完全に葉英に向く前に。
私は動くべき?
それとも待つ?
答えはまだ出ない。
ただ一つだけはっきりしている。
七斗が誰を見るのかで、私の明日が変わる。

