第九話 月曜の夜、揺れる心
月曜日は、やけに長い。
朝のホームルーム。
数学の小テスト。
昼休みのざわめき。
全部、どこか上の空だった。
教室の後ろの席。
窓の外を見ながら、昨日の言葉が頭をよぎる。
『覚悟しといて』
『好きって言わせるから』
瑠奈と葉英。
違う温度の“本気”。
「七斗」
声に顔を上げる。
葉英が立っている。
「今日の部活、走り込み多いって」
「まじか」
「逃げる?」
「逃げねえよ」
小さく笑う。
でもその目は、どこか探っているようにも見える。
放課後。
体育館はいつもより熱い。
シューズのきしむ音。
ボールの弾む音。
笛の音。
「もっと声出せ!」
顧問の声が響く。
走る。
跳ぶ。
ぶつかる。
汗が床に落ちる。
葉英と何度もマッチアップする。
視線が合う。
負けたくない、という純粋な闘志。
その奥に、別の感情が混じっている気がする。
「ナイス」
ハイタッチ。
一瞬触れる手。
体温が残る。
動揺を振り払うように、さらに走る。
練習が終わる頃には、足が重かった。
更衣室。
「今日バイトだろ」
チームメイトが言う。
「ああ」
「大変だな」
笑って流す。
でも正直、少しきつい。
体も、頭も。
夜。
コンビニのレジに立つ。
エプロン姿。
蛍光灯の白い光。
「いらっしゃいませ」
機械みたいに言葉を繰り返す。
おにぎりを袋に入れる。
レシートを渡す。
単純作業のはずなのに、思考は止まらない。
(俺、どうしたいんだろうな)
自動ドアが開く。
顔を上げた瞬間、息が止まる。
「……七斗」
瑠奈だった。
制服姿のまま。
「こんな時間に?」
「塾帰り」
カウンター越し。
距離はあるのに、近く感じる。
「疲れてる?」
「まあな」
「無理しないでよ」
その言い方が、優しい。
商品を受け取るとき、指が少し触れる。
「昨日のこと」
小声。
「忘れないでね」
ドアベルが鳴る。
瑠奈は振り返らずに出ていった。
胸がざわつく。
その数分後。
またドアが開く。
「いらっしゃいませ……」
顔を上げて、固まる。
葉英。
ジャージ姿。
「飲み物買いに」
淡々としている。
でも目が鋭い。
「さっき、瑠奈ちゃんいたよね」
見られてた。
「偶然だ」
「ふーん」
ペットボトルをカウンターに置く。
「七斗」
真っ直ぐな目。
「私は、遠慮しないから」
それだけ言う。
会計を済ませ、店を出る。
静まり返った店内。
蛍光灯の音がやけに大きい。
(なんで今日に限って……)
二人とも、偶然か必然か。
まるで試されているみたいだ。
閉店後。
外に出ると、夜風が冷たい。
空を見上げる。
月が出ている。
ポケットの中のスマホが震える。
メッセージ。
瑠奈:『お疲れ様。ちゃんと寝てね』
ほぼ同時に。
葉英:『明日、朝練来るよね?』
思わず苦笑する。
二人とも、違う形で隣にいる。
どちらも本気。
どちらも逃げない。
(俺は……)
まだ決められない。
でも。
このまま曖昧でいるのは、たぶん一番ずるい。
俺はどうしたいのだろうか
答えが出ないまま俺は眠りにつく
月曜日は、やけに長い。
朝のホームルーム。
数学の小テスト。
昼休みのざわめき。
全部、どこか上の空だった。
教室の後ろの席。
窓の外を見ながら、昨日の言葉が頭をよぎる。
『覚悟しといて』
『好きって言わせるから』
瑠奈と葉英。
違う温度の“本気”。
「七斗」
声に顔を上げる。
葉英が立っている。
「今日の部活、走り込み多いって」
「まじか」
「逃げる?」
「逃げねえよ」
小さく笑う。
でもその目は、どこか探っているようにも見える。
放課後。
体育館はいつもより熱い。
シューズのきしむ音。
ボールの弾む音。
笛の音。
「もっと声出せ!」
顧問の声が響く。
走る。
跳ぶ。
ぶつかる。
汗が床に落ちる。
葉英と何度もマッチアップする。
視線が合う。
負けたくない、という純粋な闘志。
その奥に、別の感情が混じっている気がする。
「ナイス」
ハイタッチ。
一瞬触れる手。
体温が残る。
動揺を振り払うように、さらに走る。
練習が終わる頃には、足が重かった。
更衣室。
「今日バイトだろ」
チームメイトが言う。
「ああ」
「大変だな」
笑って流す。
でも正直、少しきつい。
体も、頭も。
夜。
コンビニのレジに立つ。
エプロン姿。
蛍光灯の白い光。
「いらっしゃいませ」
機械みたいに言葉を繰り返す。
おにぎりを袋に入れる。
レシートを渡す。
単純作業のはずなのに、思考は止まらない。
(俺、どうしたいんだろうな)
自動ドアが開く。
顔を上げた瞬間、息が止まる。
「……七斗」
瑠奈だった。
制服姿のまま。
「こんな時間に?」
「塾帰り」
カウンター越し。
距離はあるのに、近く感じる。
「疲れてる?」
「まあな」
「無理しないでよ」
その言い方が、優しい。
商品を受け取るとき、指が少し触れる。
「昨日のこと」
小声。
「忘れないでね」
ドアベルが鳴る。
瑠奈は振り返らずに出ていった。
胸がざわつく。
その数分後。
またドアが開く。
「いらっしゃいませ……」
顔を上げて、固まる。
葉英。
ジャージ姿。
「飲み物買いに」
淡々としている。
でも目が鋭い。
「さっき、瑠奈ちゃんいたよね」
見られてた。
「偶然だ」
「ふーん」
ペットボトルをカウンターに置く。
「七斗」
真っ直ぐな目。
「私は、遠慮しないから」
それだけ言う。
会計を済ませ、店を出る。
静まり返った店内。
蛍光灯の音がやけに大きい。
(なんで今日に限って……)
二人とも、偶然か必然か。
まるで試されているみたいだ。
閉店後。
外に出ると、夜風が冷たい。
空を見上げる。
月が出ている。
ポケットの中のスマホが震える。
メッセージ。
瑠奈:『お疲れ様。ちゃんと寝てね』
ほぼ同時に。
葉英:『明日、朝練来るよね?』
思わず苦笑する。
二人とも、違う形で隣にいる。
どちらも本気。
どちらも逃げない。
(俺は……)
まだ決められない。
でも。
このまま曖昧でいるのは、たぶん一番ずるい。
俺はどうしたいのだろうか
答えが出ないまま俺は眠りにつく

