雨があがっても、君のとなりで

"あの人"————母が時折、酔った夜に名前を呟く男。


母の元彼であり、蓮の父親だ。


街のバーで出会った2人。

付き合い始めたころはとても幸せだった。


だが半年ほどたったある日、彼が浮気をしていることに気づいてしまった。


「私のことは遊びだったって言うの?」

彼女は責め立てたが、彼は動じる様子もない。


「まあまあ落ち着けって。お前が1番に決まってるだろ」

彼女を抱きしめて続ける。

「今すぐには無理だけどさ、あいつは切るから。そしたら2人で幸せになろう。な?」

彼のその場しのぎの約束も、彼女は本気で信じていた。


だが、そんな彼は彼女のお腹に子供ができていたことが
わかると 「俺、子供とか無理だから」と言って逃げていってしまった。

「私ひとりでどうしろっていうの……」

まだ彼の匂いが残った毛布。

どんなに深く潜り込んでも、震えが止まらない。

 日に日に不安は増していき、押しつぶされそうになる心。

そんなことには構わずに大きくなっていくお腹。


気がつけば、もう引き返せないところまで来てしまっていた。