雨があがっても、君のとなりで

幼い頃の記憶に、ずっと心を蝕まれてきた蓮。

日々のどんなに小さな失敗にも、どうしようもなく大きな不安の波が押し寄せてくる。

そんなとき、自分を傷つけることでしか自分を保っていられなかった。

当時の蓮にとって、それは"傷つけるため"というより"生きるため"の行為だった。


「お母さんは俺のせいで幸せになれないんだって。俺さえいなければ、ずっと幸せになれたんだって」

蓮は目にいっぱいに涙をためて、震える声で叫んだ。

「———俺なんて、生まれてこなければよかったんだ」

「そんなこと言うな———!」

普段の姿からは想像もできないほど、声を張り上げる悠真。

涙に歪んだ視界の中で見た悠真は、自分よりもずっと苦しそうにからだを震わせていた。

透明な雫が、次々と頬をつたっていく。

その涙を拭おうと、蓮が手を伸ばした。


次の瞬間、蓮は悠真に抱きつかれていた。

強い力で抱きすくめられ、驚きのあまり動けない。

「蓮は大事だよ!」

悠真は蓮の背中を何度も撫でる。

まるで、「自分がその痛みをもらいたい。」そう言っているみたいに。

「生まれてこなければ良かったなんて思わないで。自分のこと傷つけないでよぉ」

蓮に抱きついたまま泣きじゃくる悠真。

昔から泣き虫な悠真を慰めるのは、蓮の役目だった。

それなのに

(悠真、泣いてる………"俺のせい"で……?)

声を詰まらせながら嗚咽を漏らす悠真の姿に、蓮は胸が痛んだ。

「……やめる。こんなこと言うのも傷をつけるのも、もうやめるから」

蓮は涙をこらえて俯いた。

「だからもう、泣くなよ……」