蓮の脳裏に、あの雨の日の記憶が蘇る。
蓮は、少し遠くを見るように目を伏せた。
———まだ付き合い始めたばかりの頃、急に降ってきた雨の中をふたりで駆け抜けて帰った日のことだ。
「うわぁびしよびょ。俺こんなに濡れたの初めて」
水を吸い込んで重たくなったブレザーをぬぐ悠真の声は、どこかたのしげだった。
はあはあと肩で息をしていた蓮も、悠真の無邪気な笑顔にふふっと笑みをこぼす。
そのまま悠真の家でシャワーを浴びていた蓮が脱衣所へ出たばかりのとき、突然悠真が入ってきた。
「着替え、これ使って」と蓮を見た瞬間、悠真のからだが硬直する。
悠真の目線の先は、蓮の右脚だった。
太ももの付け根のあたりに、切った痕のような傷が無数についている。
蓮は咄嗟にタオルで隠した。
「……蓮?その傷って———」
「なんでもない。転んだだけだよ」
蓮は苦し紛れに誤魔化すが、もちろんそんなことは通用しない。
「転んでも、そんなふうに怪我しないよ……それに、そんなにたくさん————」
今にも泣き出しそうな悠真に他のどんな話を持ち出しても、気を逸らすことはできなかった。
「脚の傷、転んでできたんじゃないよね」
着替えを終えた蓮をベッドに座らせて、悠真が問い詰める。
じっと目を見つめて、蓮が答えるのを待っている。
カチッカチッと時計の針が進み、ふたりの間に緊張した空気が走った。
そしてようやく、張り詰めた空気を断ち切るように蓮が口を開いた。
「———脚なら、バレづらいと思ったんだ」
蓮は、少し遠くを見るように目を伏せた。
———まだ付き合い始めたばかりの頃、急に降ってきた雨の中をふたりで駆け抜けて帰った日のことだ。
「うわぁびしよびょ。俺こんなに濡れたの初めて」
水を吸い込んで重たくなったブレザーをぬぐ悠真の声は、どこかたのしげだった。
はあはあと肩で息をしていた蓮も、悠真の無邪気な笑顔にふふっと笑みをこぼす。
そのまま悠真の家でシャワーを浴びていた蓮が脱衣所へ出たばかりのとき、突然悠真が入ってきた。
「着替え、これ使って」と蓮を見た瞬間、悠真のからだが硬直する。
悠真の目線の先は、蓮の右脚だった。
太ももの付け根のあたりに、切った痕のような傷が無数についている。
蓮は咄嗟にタオルで隠した。
「……蓮?その傷って———」
「なんでもない。転んだだけだよ」
蓮は苦し紛れに誤魔化すが、もちろんそんなことは通用しない。
「転んでも、そんなふうに怪我しないよ……それに、そんなにたくさん————」
今にも泣き出しそうな悠真に他のどんな話を持ち出しても、気を逸らすことはできなかった。
「脚の傷、転んでできたんじゃないよね」
着替えを終えた蓮をベッドに座らせて、悠真が問い詰める。
じっと目を見つめて、蓮が答えるのを待っている。
カチッカチッと時計の針が進み、ふたりの間に緊張した空気が走った。
そしてようやく、張り詰めた空気を断ち切るように蓮が口を開いた。
「———脚なら、バレづらいと思ったんだ」
