雨があがっても、君のとなりで

ねずみ色の雲が薄く広がった空の下。小鳥たちがチュンチュンと朝の訪れを告げている。


蓮がゆっくりと目を覚ます。


「蓮、おはよ。体調どう?」


いつも通りの、悠真の笑顔。

「———悠真!」

蓮は悠真にしがみついた。絶対に離したくない、と言っているかのような強い力だった。


悠真は一瞬顔を歪ませたが、すぐにそれをこらえ、蓮の背中や頭を撫でる。


「大丈夫。俺はここにいるよ」


蓮が悠真の胸にぎゅっと顔をうずめる。


トクトクと繰り返す鼓動と、あたたかな匂いに、強張っていたからだがゆっくりと緩んでいく。


しばらくして蓮が落ち着きを取り戻すと、ふたりは朝食を済ませてゆったりとソファに腰掛けた。

ベッドを出てからの蓮に、普段と変わった様子はない。

でもその瞳の奥で、確実に何かが壊れている。

(このままじゃ、あの時と一緒だ————)

焦った悠真が「蓮、昨日———」と言いかけて、咄嗟に口をつぐんだ。

無理に思い出させては、余計に苦しくさせてしまう。


すると今度は蓮が「夜のことだろ?」と問いかける。

「ごめんな」

「……え?」

「ちょっと変な夢見てさ、子供の頃の……。

それで取り乱してたみたい。迷惑かけて悪かったな」

乾いた声で笑いながら言った。


「……なんで、"ごめん"なんだよ」

悠真の口から漏れた言葉は、かすかに怒りを含んでいた。

「なんで、"助けて"って言ってくれないんだよ」

悠真は息を震わせながら続ける。

「なんでいつも、笑って誤魔化そうとするんだよ」

「……なにか、あったんだろ?」


蓮はゆっくりと首を横に振る。

「……ごめん」


「またそれ?」

悠真は思わず笑った。笑って、俯いた。

「……俺は、そんなに頼りないやつなのかよ………」

その声は、泣き出す寸前のように小さかった。


「違う」と言って蓮が悠真の手を握る。

「そうじゃないんだよ、悠真」

込み上げてくる何かを、必死にこらえているような表情だった。


「じゃあ、どうして……?」


「……俺が、悠真のこと泣かせたから」

想定外の答えに、悠真は唖然とする。


「俺が"キズ"のことを話したせいで、悠真が泣いたから——-」