呪いは傍に在るもので

 この田舎で事件が起きると思っているよりも大勢の人間が、事件を知る。
 高校生が事故に遭った件も周りの近隣住民はよく知っていた。
 事故に遭ったのは、不運だと思う。
 それに、夜中だし気づかないのも仕方ないことなのだろう。
 しかし、今回の事件は違和感が強い。
 タブレットでドラレコの映像を見返す。
 誰かに押されたかのように車道に飛び出している春正春也。
 事故に遭った後、運転手がスマホを耳にあて救急車を呼んでいる。
 その後、秋山美苗が体を揺すって声をかけ続けている。
「春正春也は誰に背中を押されたんだ」
 角度的に見ても隣の秋山ではないのは確かだ。
 お互い驚いた表情を見せるに後ろに誰かがいたと考えるべきだが。
 コーヒーが机に置かれる。一緒に捜査をすることになった女警察柴田。
 配属されたばかりで今回の件を事故処理しようとしている。
「事故なんだから、早く報告書まとめてくださいよ」
「お前も、運転手の話聞いたろ?」
 運転手は『光里村』出身。迷信を信じる村の出だ。にしてもこのドラレコに映る二人も……。
「聞きましたけど、迷信ですよね。そもそも」
「お前はこのクソ田舎の昔話を知らないからな」
 配属されたばかりでデパートがないだとか映画館が遠いとか文句ばかり言う柴田。
「ずっとこの田舎で生活して息苦しくないですか?そもそも迷信信じていまだに捜査を続けようだなんて」
「それがなぁ」
「なんですか」
 ホワイトボードに貼ってある地図の神社を指差す。
「この森のどこかに神社があるんだ」
「神社?」
「もうとっくに壊されて、普通の地図じゃ見つかんない。だけど、その神社が壊されてから災いが多いんだとさ」
「災いって……。そもそもその地図担当エリアじゃないですよね。神社とか言われても困ります」
「まぁまぁ。特に学生が危険で、その噂を信じるものは、みんなお祓いに行くんだってさ」
「角田さんはそんなことしました?」
「いや。してないね。だから、信じてないんだけど」
 あの運転手は、事情聴取の間ずっとそれに怯えていた。
 町の中でも山奥で端の方。にしてもここ2年前くらいから『光里村』からの引っ越し者が多い。
 あの風習は密かに行われているのか?
 柴田も話を聞いているが、全く信じる様子が見られない。
「災いってたとえば?」
「命を持ってかれるとかなんとか」
「信じ難いです」
「だよな。な、一度その神社行ってみるか?」
「いやですよ。さっさと事故処理して済ませましょ」
 柴田はどうしても事故処理で終わりにしたいらしい。
 彼女に一度、どうして少年課に入ったのか聞いてみたいところ。
 最悪、休職中の先輩に事故の件を話してみるのもありか。何かご教授願いたいところだ。
 刹那、電話が鳴る。
 手に取った柴田が、こちらを見やる。
 また事件が起きたと彼女は伝えている。我々は現場に向かった。