[インタビュー 60〜70代女性]
(土の上を歩く足音、鍬が土を叩く音が大きくなる)
松平:すみません、こんにちは。
(鍬の音が止まる)
女性:あ?
松平:今日みたいな気候だと、外作業も精が出ますね。
女性:……誰だいあんた?
松平:私たち、週刊レビスタという雑誌の者でして。この辺りのことを少し調べているんですが。
女性:……なにを調べてるんだ。
松平:この辺りで、三十年くらい前に子供が行方不明になった事件があったと聞いて——。
(沈黙)
松平:あの……?
女性:何の用だい。
松平:当時のことをご存知の方を探してまして。
女性:知らないね。
松平:五人の子供が山に入って——。
女性:知らない。
松平:一人だけ戻ってきたという——。
女性:あんた、耳が悪いのか。知らないって言ってるんだ。
(沈黙)
女性:……何を書くつもりだい。
松平:え?
女性:記者だろう、あんたたち。何を書くつもりで来たんだい。
松平:書くというか、事件のことを取材できればと——。
女性:誰がそんなもの読みたがるんだ。
松平:当時のことを覚えている方、このあたりにいらっしゃいませんか?
(沈黙)
松平:一人だけ、山から戻ってきた子供がいたと──。
女性:知らないって言ってるだろう。帰ってくれ。
(鍬の音が再開する。さっきより間隔が早い)
(砂利を踏んで近づいてくる足音)
別の女性:お母さん、どうしたの? お客さん?
松平:こんにちは。週刊レビスタの松平と申します。
女性:マサミ、家に入っといで。この人たちはすぐに帰るから。
マサミ:でも——。
女性:いいから!
(沈黙)
女性:あんたたち。
松平:はい。
女性:あの家には関わらない方がいい。
松平:それは——。
女性:……帰ってくれ。
松平:あの——。
女性:帰れって言ってるんだよ!
マサミ:お母さん!
(砂利を踏む音)
マサミ:すみません、失礼します。
松平:いえ。あの、もしよろしければ、お話を少しだけ──。
マサミ:すみません、本当に。
(沈黙)
マサミ:……あの。
松平:はい。
マサミ:……なんでもないです。すみません。
(沈黙)
(足音が遠ざかる。戸が閉まり、鍵をかける音)
木田:……行っちゃいましたね。
(松平のため息)
木田:松平さん。
松平:何だ。
木田:あのおばあさん、知らないって言ってましたよね。
松平:言ってたな。
木田:でも最後、「あの家」って言いましたよね。俺たち、どの家かなんて一言も言ってないのに。
(録音終了)
(土の上を歩く足音、鍬が土を叩く音が大きくなる)
松平:すみません、こんにちは。
(鍬の音が止まる)
女性:あ?
松平:今日みたいな気候だと、外作業も精が出ますね。
女性:……誰だいあんた?
松平:私たち、週刊レビスタという雑誌の者でして。この辺りのことを少し調べているんですが。
女性:……なにを調べてるんだ。
松平:この辺りで、三十年くらい前に子供が行方不明になった事件があったと聞いて——。
(沈黙)
松平:あの……?
女性:何の用だい。
松平:当時のことをご存知の方を探してまして。
女性:知らないね。
松平:五人の子供が山に入って——。
女性:知らない。
松平:一人だけ戻ってきたという——。
女性:あんた、耳が悪いのか。知らないって言ってるんだ。
(沈黙)
女性:……何を書くつもりだい。
松平:え?
女性:記者だろう、あんたたち。何を書くつもりで来たんだい。
松平:書くというか、事件のことを取材できればと——。
女性:誰がそんなもの読みたがるんだ。
松平:当時のことを覚えている方、このあたりにいらっしゃいませんか?
(沈黙)
松平:一人だけ、山から戻ってきた子供がいたと──。
女性:知らないって言ってるだろう。帰ってくれ。
(鍬の音が再開する。さっきより間隔が早い)
(砂利を踏んで近づいてくる足音)
別の女性:お母さん、どうしたの? お客さん?
松平:こんにちは。週刊レビスタの松平と申します。
女性:マサミ、家に入っといで。この人たちはすぐに帰るから。
マサミ:でも——。
女性:いいから!
(沈黙)
女性:あんたたち。
松平:はい。
女性:あの家には関わらない方がいい。
松平:それは——。
女性:……帰ってくれ。
松平:あの——。
女性:帰れって言ってるんだよ!
マサミ:お母さん!
(砂利を踏む音)
マサミ:すみません、失礼します。
松平:いえ。あの、もしよろしければ、お話を少しだけ──。
マサミ:すみません、本当に。
(沈黙)
マサミ:……あの。
松平:はい。
マサミ:……なんでもないです。すみません。
(沈黙)
(足音が遠ざかる。戸が閉まり、鍵をかける音)
木田:……行っちゃいましたね。
(松平のため息)
木田:松平さん。
松平:何だ。
木田:あのおばあさん、知らないって言ってましたよね。
松平:言ってたな。
木田:でも最後、「あの家」って言いましたよね。俺たち、どの家かなんて一言も言ってないのに。
(録音終了)
