処刑人は、後宮で花を拾う

 その夜、刃は十六年間のことを考えた。
 詰め所の椅子に座って、行燈の光を見ていた。部屋の中に澪がいた。廊下の先に銀河がいた。三日後に処刑命令が執行される。その事実と、執行しないという自分の決断が、椅子の上で並んでいた。
 下層街の子どもが処刑人になって、十六年間命令通りに動いてきた。感情がないから選ばれた。感情がないから続けられた。それが自分の存在理由だった。下層街には帰る場所がなかった。処刑人という役割だけが、刃の居場所だった。
 だが今、感情があることを知った。
 澪の前でだけ、何かが動く。収監室の格子の前で動けなかった夜から、ずっと動いている。守りたいという言葉が、喉の奥にある。その言葉が何を意味するかは、まだわからなかった。だが確かにあった。十六年間なかったものが、今ある。
 処刑人は後宮の制度の中にいる。制度に逆らえば、自分は処刑人でなくなる。処刑人でなくなれば、後宮との関係も、皇帝との関係も切れる。瑞華国の中で生きることが、難しくなる。
 それでいい、と刃は思った。
 十六年間守ってきた誇りを、最初に澪を処刑しなかった朝に捨てた。その朝、後悔がなかった。今も後悔はない。今更、戻ることはできない。戻るつもりもなかった。
 
 銀河は翌日一日かけて準備を整えた。迂回路を二本確認した。国境の先の小屋の場所を調べた。食料と水と、傷の手当てに使える布を用意した。
「傷の手当て用の布まで用意したんですか」と澪が銀河に言った。
「追手が来たとき、刃さんが傷を負う可能性があるので」と銀河は言った。
「あの人、自分の傷は後回しにするので」
 刃はその会話を聞いていた。銀河が自分のことを知っていた。十六年間一緒にいたわけではないが、銀河は刃の動き方を見ていた。追手が来たとき刃がどう動くかを、銀河は想定していた。想定した上で、布を用意した。
 澪が布の量を確認した。
「これだと足りないかもしれません」と澪は言った。
「もう少し多めに用意してください」
 銀河は澪を見た。澪の顔は静かだった。
「わかりました」と銀河は言った。
 準備が終わった夜、銀河が「明日の夜明け前に出ます」と言った。刃は頷いた。澪も頷いた。三人の間に、それ以上の言葉はなかった。必要なことは全て確認した。あとは夜明け前を待つだけだった。
  
 処刑の前日の夜、澪が刃に言った。
「明日、連れ出してくれるんですか」
「そうだ」と刃は言った。
「どこへ」
「国境の外」
 澪は少し考えた。詰め所の行燈の光の中で、澪の顔が静かだった。驚いていなかった。この女はいつも驚かない。事実を受け取って、確認する。
「あなたは、処刑人でなくなる」と澪は言った。
「そうだ」
「後悔しませんか」
 刃は澪を見た。後悔という言葉の意味を、刃は感情として初めて理解しようとした。後悔とは、選ばなかった方を惜しむことだ。処刑人でいることを選ばなかった場合、何を惜しむか。刃は考えた。十六年間の命令書を思い出した。処刑台の石畳を思い出した。謁見の間の床の冷たさを思い出した。それらを惜しむかどうかを、刃は確かめた。
 何もなかった。
「後悔はない」と刃は言った。
 澪は刃を見続けていた。
「なぜ私なんですか」と聞いた。
「わからない」とまた言いかけて、刃は止まった。十六年間使ってこなかった言葉が、今夜は出てきそうだった。止まった。止まったまま、少しの間があった。
「俺は、お前を生かしたかった」と刃は言った。
「それだけはわかる。なぜかはわからない。でも、最初の朝から、お前が死ぬことを俺は望んでいなかった」
 澪は黙っていた。
「それが何かは、まだわからない」と刃は続けた。
「だが、お前が死ぬのを見るくらいなら、処刑人でなくなる方を選ぶ」
 澪の目が赤くなった。泣かなかったが、目が赤くなった。刃はその変化を見た。澪が泣かないことを、刃は知っていた。収監室の夜も、命令書を見た夜も、澪は泣かなかった。今夜も泣かなかった。ただ目が赤くなった。その赤さが、刃の中で何かに触れた。
「私も、あなたに死んでほしくないです」と澪は言った。声が少しだけ違った。いつもより低かった。
「あなたが私のために制度に背いて、何かを失うことが、怖いです」
「失うものはない」と刃は言った。
「そんなことはないはずです」
「俺には、もともと何もなかった」と刃は言った。
「処刑人になる前も、処刑人になってからも。下層街に家族はいなかった。処刑人の詰め所に、俺のものは何もない。命令書と道具だけだった。お前と一緒にいるこの十日の方が、十六年より長い気がする」
 澪はしばらく刃を見ていた。刃の顔の変化を、澪は記憶した。この男がこういう言葉を言うとき、どんな顔をするか。目の奥が、いつもより少しだけ開いていた。口元は動かなかった。肩の位置が、わずかに違った。澪はその全てを一度見て、記憶した。この顔を忘れない、と思った。
 澪は視線を落とした。
「私も、そう思います」と言った。
「この詰め所にいた時間の方が、後宮の三ヶ月より長い気がします」
 それから二人は黙った。
 行燈の光が揺れていた。詰め所の中に、二人分の沈黙があった。刃は澪が視線を落としたまま動かないでいることを、見ていた。澪の手が膝の上で重なっていた。収監室の格子の向こうで初めて見たときと同じ、膝の上に重なった手だった。あの夜と今夜は、同じ手が違う場所にあった。収監室では格子の向こうにあった。今夜は詰め所の中にある。明日、この詰め所から出る。出た後、この手がどこにあるかを、刃は考えた。
 答えは出なかった。答えが出ないまま、刃は行燈の光を見た。光が揺れるたびに、部屋の影が動いた。十六年間、この光の揺れを見てきた。命令書を読みながら、夜明けを待ちながら、一人でこの揺れを見てきた。今夜は澪がいる。澪の輪郭が、行燈の光の中にあった。その輪郭が明日この詰め所から出る。明日以降、この光の中に澪はいない。別の光の下に、澪はいる。その事実を、刃は今夜初めてはっきりと感じた。感じている、という自覚があった。十六年間なかった種類の自覚だった。
 澪の寝息が聞こえてくるのを、刃はいつも待っていた。今夜はまだ聞こえない。澪が眠っていないことを、刃は知っていた。眠れない夜を、二人でここで過ごしていた。それが今夜最後だった。
  
 処刑当日の夜明け前、刃と銀河と澪は詰め所を出た。
 空が白む前の、一番暗い時間だった。刃は出発の前に、詰め所の中を一度確認した。道具を確かめた。十六年間使ってきた道具だった。今日以降は使わない。置いていく、という判断を、刃は昨夜決めていた。処刑人の道具を持って国境を越えることに、意味はなかった。道具を詰め所の机の上に置いた。命令書の束も机の上にあった。最後に届いた澪への命令書が、一番上にあった。刃はそれを見て、扉に向かった。
 詰め所の扉を閉めるとき、刃は一度だけ部屋の中を見た。机があった。椅子があった。行燈が消えていた。十六年間、ここで命令書を読んできた。翌朝の執行を待ちながら、夜を過ごしてきた。今夜、最後にここを出る。振り返った時間は短かった。刃は扉を閉めて、歩き始めた。
 後宮の外壁には、処刑人だけが知っている搬入口がある。刃が十六年間使ってきた道だった。処刑の前日に後宮に入るとき、この道を歩いた。澪に会いに行った夜も、この道だった。今夜は逆の方向に歩いていた。後宮から出るために、同じ道を逆に歩いていた。
 夜明け前の暗い中、三人は音を立てずに移動した。石畳の上を歩く三人分の足音が、暗い中に小さく響いた。澪の足音が刃の隣にあった。昨夜と同じ、刃より少し軽い足音だった。収監室の夜から数えると、この足音を何度聞いてきたか。詰め所の廊下で、東門前からの帰り道で、今夜の外壁沿いで。刃はその音を聞きながら歩いた。
 搬入口の前に衛士が二人いた。刃の顔を見て、片方が「処刑人か、こんな時間に何を」と言いかけた。その声が終わる前に、刃は動いていた。二人を素早く無力化した。殺さなかった。意識を失わせただけだった。石畳の上に、静かに二人が横たわった。
「殺さないんですか」と銀河が小声で聞いた。
「必要ない」と刃は言った。
 搬入口を抜けて、後宮の外壁に沿って東に向かった。壁の外に、銀河が手配した馬が三頭繋いであった。夜明け前の暗がりの中で、馬が静かに立っていた。
 澪が馬に近づいた。刃は澪の腕を掴もうとして、手を止めた。触れることへの抑制が、いつもあった。今も手が止まった。
「乗れるか」と刃は聞いた。
「乗れます」と澪は言って、自分で馬に乗った。
 三人は夜明け前の道を走り始めた。後宮の外壁が後ろに遠ざかった。澪が振り返らなかったことを、刃は走りながら見た。後宮を、澪は振り返らなかった。三ヶ月間、澪が下女四番として生きた場所だった。本当の名前を奪われた場所だった。それを澪は一度も振り返らなかった。刃はその後ろ姿を見た。見ながら、走り続けた。

 空が少しずつ白んでいった。夜が終わろうとしていた。道の両側に木が続いていた。葉の間から、白み始めた空が見えた。三人の馬の蹄の音が、朝の空気の中に響いた。刃は前を見て走った。後ろを確認した。追手はまだ来ていなかった。銀河が隣を走っていた。澪が刃の少し後ろを走っていた。三人の息が、冷たい空気の中に白く出た。
 夜明けが来た。光が道を照らし始めた。詰め所を出てから初めての朝だった。この朝から先、刃は処刑人ではない。十六年間、命令書と処刑台と行燈の光だけがあった。今朝は違った。馬の上に三人がいて、朝の光の中を走っていた。後悔はなかった。後悔という感触がどこにもなかった。ただ、新しい朝だという感触が、手綱を握る手のひらに確かにあった。
 三人はただひたすら走り続けた。
  
 国境まで半日の場所で、追手が来た。
 後方の道に土煙が上がっていた。騎馬の音が近づいてきた。十人ほどの騎馬隊だった。皇帝が刃の逃走を知り、後宮の衛士を追わせたのだった。
「行け」と刃は銀河に言った。
「澪を連れて国境を越えろ」
「刃さんは」と銀河が言った。
「追手を止める」
「一人で十人は無理です」
「できる」と刃は言った。根拠のある言葉ではなかった。でも止まるつもりはなかった。追手が来ることは、詰め所を出るときから考えていた。
 澪が馬から降りようとした。
「一緒に残ります」と言った。
「来るな」と刃は言った。
「嫌です」と澪は言った。静かだったが、はっきりしていた。
「私のために戦うなら、私もそこにいます」
「足手まといになる」
「なります」と澪は言った。
「でも、あなたが一人で死ぬところを見て国境を越える気にはなれません」
 刃は澪を見た。そういう返し方をする人間に、刃は会ったことがなかった。足手まといになると認めた上で、それでも残ると言う。感情で言っているのではなかった。この女はいつも事実を言う。足手まといになる、という事実を認めた上で、それでも残る、という事実を言っていた。
「わかった」と刃は言った。
「ただし、俺の後ろから動くな」
 追手との戦いは短くはなかった。だが終わった。刃は傷を負った。左腕と右の脇腹に、それぞれ浅くない傷があったが、動けないほどではなかった。地面に倒れた十人の衛士を確認して、刃は立ち上がった。
 澪が刃の後ろから走ってきた。刃の傷を見て顔色を変えなかったが、目の動きが変わった。傷の位置と深さと状態を、澪が一度見て記憶していた。
「動けますか」と澪は聞いた。
「動ける」と刃は言った。
「わかりました」と澪は言った。それだけだった。
 三人は馬に乗って、国境に向かった。
  
 国境を越えたのは、夕暮れ時だった。
 瑞華国の国境石を越えた瞬間、刃は立ち止まって振り返った。夕暮れの光の中に、瑞華国の山が見えた。十六年間生きてきた国が、橙色の空の下に沈んでいた。
「後悔してますか」と澪が聞いた。
「していない」と刃は迷わず言った。
 三人は国境の先にある小さな小屋で一夜を過ごした。銀河が火を起こした。食料は銀河が手配していたものがあった。銀河が先に眠った。疲労が出たのか、火が安定してすぐに眠った。刃と澪が火の前に残った。
 火の音だけが聞こえた。澪が火を見ていた。刃も火を見ていた。詰め所の行燈の光とは違う、揺れ方の大きい光だった。夜の空気が冷たかった。火の熱が、座っている二人の前に届いていた。
「名前を教えてください」と澪は言った。
「本当の名前を」
 刃は少し考えた。十二歳のときに捨てた名前だった。十六年間、使っていなかった。処刑人に選ばれた日に、名前を置いてきた。置いた場所は下層街の、誰もいない路地だった。名前を置いて、処刑人として歩き始めた。その名前が、今も路地にあるかどうかは、わからなかった。
「隼」と刃は言った。
「捨てる前の名前だ」
「隼」と澪は繰り返した。火の光の中で、澪が刃の名前を言った。
「良い名前ですね」
 刃は澪が自分の名前を呼んだ瞬間に、何かが動いたことを感じた。長い間、自分には名前がなかった。処刑人という役割だけがあった。役割に名前はいらなかった。命令書があって、処刑台があって、それだけで十六年間動いてきた。今、澪が「隼」と言った。その声が、火の音の中に残った。
 澪の声が残るのは、収監室の夜が最初だった。あの夜から、澪の声はずっと残り続けていた。今夜も残った。今夜残ったのは、自分の名前だった。
「澪」と刃は言った。呼んだのは初めてだった。詰め所にいた一週間も、命令書を見せた夜も、刃は澪の名前を口にしていなかった。
 澪が刃を見て、「はい」と言った。静かな声だった。
「名前を呼んだ」と刃は言った。説明するつもりではなかった。ただ、そうだと言いたかった。
「わかっています」と澪は言った。少し間があった。
「隼さん」
 刃は澪を見た。隼と呼ばれた。十六年間、その名前で呼ばれたことはなかった。火の光が揺れた。澪の顔が、光の中にあった。
 今夜の澪の顔を、刃は記憶した。収監室の夜から、何度もこの顔を見てきた。怯えない顔。事実を確かめる顔。感謝している顔。目が赤くなった顔。今夜の顔は、それらとどこか違った。火の光の中にあって、夜の空気の中にあって、今夜だけの顔だった。どこが違うかを、刃は言葉にできなかった。言葉にできないまま、その顔を記憶した。
 二人は火の前にしばらく座っていた。話さなかった。火の音だけがあった。銀河の寝息が遠くに聞こえていた。夜の空気が冷たかった。火の熱が続いていた。沈黙の中に、二人がいた。収監室の夜も沈黙があった。詰め所の夜も沈黙があった。今夜の沈黙は、それらとは違う種類の沈黙だった。違いの名前を、刃はまだ持っていなかった。持っていないまま、その沈黙の中にいた。それで十分だった。
  
 翌朝、三人は国境の先の町に向かって歩き始めた。
 朝の光の中を、三人が並んで歩いた。銀河が少し先を歩いていた。刃と澪が並んでいた。昨日の戦いで負った傷が、歩くたびに疼いた。左腕の傷が、動くたびに引きつったが、表には出さなかった。
 澪がそれに気づいた。刃の歩き方の変化を、澪は一度見て記憶していた。昨日の戦いの後から、左腕をわずかに庇う動きが出ていた。その動きが今朝も続いていた。
「包帯を巻き直しましょう」と澪は言って、立ち止まった。
 刃は止まった。
 澪が布を取り出した。刃の左腕の包帯を確認した。
「少し滲んでいます」と澪は言った。新しい布を当てて、巻き始めた。
 刃は動かなかった。澪の手が腕に触れていた。触れることへの抑制が、いつもあった。今も止まろうとする何かがあった。だが今回は、それより先に別の何かがあった。澪の手が腕に触れている。その感触が、止まろうとする何かより先にあった。刃は動かなかった。
「痛いですか」と澪は聞いた。包帯を巻きながら、顔を上げずに聞いた。
「大丈夫だ」と刃は言った。
 澪は包帯を巻き終えた。最後を結んで、手を離そうとした。その手が止まる前に、刃は澪の手に自分の手を重ねた。包帯を巻いてくれた手に、触れた。握ったのではなかった。重ねた。澪の手の上に、刃の手があった。
 澪は手を引かなかった。顔を上げた。近い距離だった。刃は澪を見た。澪も刃を見ていた。
 二人はしばらく動かなかった。朝の光の中で、刃の手が澪の手の上にあった。風が一度吹いた。澪の髪が少し動いて、刃はその動きを見た。
 今朝の顔を、刃は記憶した。昨夜の火の前の顔とは違った。昨夜は揺れる光の中だった。今朝は動かない朝の光の中だった。同じ顔が、光によって違って見えた。昨夜の顔も今朝の顔も、刃は記憶した。収監室の夜から今朝まで、何種類もの光の下でこの顔を見てきた。それら全部を、刃は今記憶していた。
 記憶した、という感触が自分の中にあることに、刃は気づいた。澪が記憶する人間だということを、刃はずっと知っていた。澪は一度見たものを忘れない。帳簿の数字も、後宮の廊下で会った人間の顔も、刃の顔の変化も、全て記憶していた。今朝、自分も同じことをしていた。忘れないために、見ていた。この顔を、この朝の光の中の顔を、忘れないために。それが何かを、刃はまだ言葉にできなかった。言葉にできないまま、澪の手の上に手を重ねていた。
 銀河が少し前を歩きながら、気づかないふりをしていた。
 三人は町に向かって歩き続けた。処刑人になって十六年間、手のひらに残ったものはなかった。道具の重さだけがあった。道具を握る感触は知っていた。命令書を持つ感触も知っていた。処刑台の石畳の冷たさも知っていた。だがそれらは全て、今朝の感触とは違った。
 今朝は澪の手の温かさが、刃の手のひらにあった。生きているものの温かさだった。十六年間、手のひらが知っていたのは道具の冷たさと、命が消える瞬間の感触だけだった。だが今朝の触れ方は、その十六年間のどれとも違った。道具として触れるのではなかった。命令として触れるのでもなかった。
 何のために触れているのかを、刃はまだ言葉にできなかった。言葉にできないまま、手を重ねていた。その温かさに名前をつけることも、まだできなかった。できないまま、歩いていた。名前がなくても、確かにそこにあった。あの収監室の夜から今朝まで、ずっとそこに向かっていたような気がした。
 収監室の格子の前で、なぜ来たんだろうと澪は言った。刃には答えがなかった。今もない。ただ、今朝この手のひらにある温かさが、あの夜からずっと続いていた何かの答えに、近いような気がした。
 処刑人は、その日初めて、花に触れた。