幼稚園で描いた絵が、児童絵画コンクールで賞を取った。最初、親に言われるがままに絵を描いていたが、作品を褒めてくれる事が嬉しくて、もっと褒めてもらえるよう上手くなろうと頑張った。
最初は、絵を凄く褒めてくれたのに、何故か、途中から『かわいいから』『かっこいいから』が付け加わるようになって。
それは、中学で更に酷くなり、美術部で出した絵がコンクールで賞を取った時、顧問に『河東くんは、顔がいいから推しといた』と言われた。
絵に容姿が関係あるのか?
『河東くんは、理想の彼氏なんです。付き合って下さい!』
理想の彼氏って何?
そうやって何人に、言わてきただろう。流れで、何人かと付き合ってみたものの長続きせず、興味が1ミリも湧かない相手と付き合うのは止めた。ただ俺は、見た目がいいのが分かっただけ。
そうして、外見だけで寄ってくる奴らの顔が、どれも同じに見え始めた。メイクで作られた顔なんて、俺からしたら(作品として捉えてしまう故)貫通してしまうのだ。
「河東、また告られたらしいぜ。いいよな顔のいい奴は」
「ああゆーやつが、人生勝ち組ってやつだろ」
確かにそうだが、嬉しいと思わなかった。未久里に『あれは、褒めてるんじゃない。嫌味だ』って言われて、そうなんだと気付いた。
高校生になっても、俺の容姿について噂され続けた。時には、外見に寄ってくる奴らと、俺の態度(相手の顔に対して、正直に言ってしまう)が原因でトラブルになりかけたり、自分が笑ってれば事が済むならいいやと、今の外見キャラが出来上がっていた。
特に惹かれない選択科目、部活も、今まで通り美術を選んだ。何を描きてもつまらない。もう、あの頃みたいに絵で褒められたいなんて、思わなくなっていた。
そんなある日、俺は、忘れ物を取りに違うクラスを通りかかった。
「なぁ、この絵凄ない? こんな星空描けるとかマジずけぇ!」
「ああ、美術部の河東だろ」
「え? 誰それ?」
「さわやかイケメンって噂のやつだよ。つーか、知らないとかそっちの方がすけぇわ……俺もあんな顔に生まれたかったなぁ」
「そっか? イケメンとかしんどそう。俺はいいわ」
「本当、そうゆーとこ疎いというか、苦手だよな」
星空の絵ってクラブ紹介で描いたやつか……
「やばっ! 体育館に行かねぇと! 先輩にドヤされる!」
「ああ、じゃ、代わりに俺が日誌届けとくから。お疲れ!」
イケメンってしんどそうとか始めて言われた……
その後、俺は、部活そっちのけで、他クラスの名前も知らないそいつを着けた。
プラネタリウム? 星空の絵を描いたあれ以来見てないな……
俺は、受付でチケットを購入して座席に座り、当たりを見回した。同列の少し離れた席にそいつがいた。
何が気になるのか分からない。分からないから着いてきた。
同じ学年のどう見ても男だし……ん?
上映中、気になる音がして上体を起こした。俺は、微かにする音の方へ目をやった。そいつが、声を出さないように泣いていて____上映されてる星よりも、そいつから目が離せなかった。それが、高一の終わり頃の出来事。
*
あれ以来、色々調査(尾行)して、名前とバスケ部なのは分かった。こうやって『川崎』調査してるうち、俺の推しになっていた。
月日が経ち、高二になって新しいクラス。嬉しいことに推しと同じクラスになった。そして、なんと隣の席!
授業中、推しを見みて絵を描いたりと(無意識)、こんな最&高なことあるかい!と小躍りする程浮かれてた。見てるだけ(川崎ウォッチング)で、良かったのに欲が出た。
推しと話したい……(エコー)
俺は、意を決して隣の席から、なんとなくを装って声を掛けてみた。
「川崎、おはよう」
「……あ、お…おはよう」
……ん? 俺が挨拶したら、みんな喜んでくれるのに? あっ照れてるのかな……
隣で推しが見れて、挨拶も出来るようになんて夢のような俺の推し活ライフに、事件が起きた。
選択科目の授業が終わり、教室に入る時、誰かとぶつかって画材や教科書を落としてしまった。
「すみません! よそ見してて」そう言ったのは、推しの川崎だった。
嗚呼! 推しと面と向かって顔を見るのは初めてだ!(河東バイアス)
「こっちこそ、ごめん……荷物多くて見えてなかったから」俺は、推しとこんなに近くで、話せたことに舞い上がっていて気付けなかった。
「いや! 俺が悪いし……ごめんなさい!」川崎は、手際よく拾い俺に教科書を差し出す。
ごめんなさい!(河東ビジョン)もうなんでいい!(大歓喜)
なんて、なんでもよくない。選択科目の教科書が一冊ない。授業中、推しを描くのに夢中なっていて、何描いたか覚えないが、間違いなく川崎とぶつかった時に取り違えた。そして、ここに川崎の物であろう地学の教科書。
そっか、R.K……俺とイニシャル同じなんだ(尊い)
川崎も気付いてるかもしれない。教科書ないと困るだろうけど。推しの持ち物が、手元にあるだけでも有難いのに、この教科書を見ることで、推しが見てる世界を味わえるとか、手放したくない!(強火)

