さわやかイケメンが破廉恥なことを考えています。




 数日の雨が嘘みたいな晴天の朝。初夏を思わせるくらい、いい天気なのに俺の心は、曇天で鬱々としていた。いつもの時間の電車に乗り、長い溜め息を吐いて、最寄りの駅で降りた。きょろきょろと辺りを見回し、駆け足で改札を出た。

「おはよう、川崎」ぬるっと現れた河東は、顔面、百億満点の笑顔を俺如きに、イケメンを撒き散らした。

 出たな!吸引妖怪!

「っ! おっおはよ……」
「じゃ、行こっか」
 
 俺は、こくこく頷き、河東と学校へ向かった。何故、こうなったのかというと、河東ファンの見えない圧を感じ、スライディング土下座する勢いで河東に謝罪をした。

「河東! 保健室まで荷物持って来てくれてありがとうございました! 妖怪などと言ってしまい、国宝の顔を傷付けてごめんなさい!」俺は、早口で畳み掛け、深々と頭を下げた。
「ん? 国宝? ああ、怪我のことならいいよ。……じゃぁさ、俺と友達にならない?」
「……え?」
「これって運命だよね?」河東は、なんだか嬉しそうに、絆創膏が貼ってある顎に触れた。

 運命とは? どっからそんな発想が?

「誰が、変態絵を描くわ、満員電車で人吸いという奇行をするやっと友達なんかなるか!」と言いたいところだか、怪我させたのは俺なわけで断われなかった。

「ぷっははは、友達なろうとか小学生かよ! おまえ、運命とか信じるタイプか? 」
 河東は、爆笑している笹野を『うるさい』と無言の圧をかけた。が、笹野は、気にすることなくまだ笑っている。
「川崎よろしくな! 玲陽(こいつ)になんかされたらいえよ」笹野は、腹を摩りながら言った。
「なんでおまえまで関係ないだろ!」
「いーじゃんか! こんな面白れぇーことねーもん」

 はぁ! 全然面白くないですけど!!

 *

 その日の部活終わり、俺は、駅へ向かう途中でコンビニから出てきた河東と笹野と会い、流れで駅まで一緒なった。

「川崎は、部活だった?」河東は、持っていた袋の中を探った。
「……まぁ、うん」
「俺も部活だったんだ。なんかいる?」河東は、俺に袋の中を見せてくる。どれも甘い物だったので丁重にお断りをした。
「そっか、川崎は、甘いやつ苦手か……」河東は、独りごちて、奇妙な味の炭酸飲料をぐびぐび飲んだ。
「つーか、部活ゆーても、俺が見に行ったときなんもやってなかっだろ」笹野は、唐揚げをもぐもぐやりながらいう。
「未久里が来る前に終わったの!つーか、委員会よかったのかよ」
「ああ、斉藤さんが後やってくれるって」
「あっそ。俺、ちょっとゴミ捨ててくる」河東は、駅に設置してあるゴミ箱へ向かった。
「あのさ、川崎って河東のこときら……苦手だろ?」

 今、嫌いっていいかけましたよね? お気遣いありがとうございます! そもそも、イケメンが苦手ですけれども!

「いや、そんなことは……あははは」俺は、笑って誤魔化した。
「ま、いいけど……あいつの恋愛観、斜めに折れ曲がってっから、嫌ならはっきりいってやれよ…ほら、口開けて」
  
 恋愛観……??

 俺は、言われたことに気を取られ、思わず口を開けてしまった。

「新発売のマヨから味!」笹野は、俺の口に唐揚げを放り込んでニッと笑った。

「…うっ…辛っ!」
「ちょ! 未久里! 何食わせたんだよ!」
「ええ……辛いのも苦手か……」

 友達になるのに関係あるのか?

____ (回想終了)ってことがあって、今に至る。

 友達宣言後の河東は、こうやって駅で待っていて、駅から学校までの距離を一緒にいくのがここ数日続いている。何とか回避したいのだが、今日も失敗に終わった。特に、待ち合わせをしてるわけでもないのに、いつもの電車より後の電車に乗っても、その後の電車に乗っても、河東が先に待っていた。なので、今日は、いつもの電車に乗ったら避けられるんじゃないかと思ったのに。

 この変態イケメンには、避けられてるという概念がないんですかね?

「川崎、どうした?」
「え? いや、なんでもない……」

 俺は、真横で国宝級の顔面を目の当たりにし目が潰れそうになった。

 無駄にイケメンを晒すな! 怖いから!

「ん?……あのさ、地学って面白い?」
「地学?……ああ、面白いよ。最近は、名前で決めたけど天体とか興味深いかな」
「あれだろ、星の光って過去の姿なんだってな……なんかロマン感じるよね」河東は、春日和の暖かい空を見上げた。

 ロマン?イケメンって生き物は詩人なのか?

「そうそう、 月は、約一.三秒、太陽は、約八分前……河東、もしかして天体詳しい?」
「そこまで詳しくないよ。プラネタリウム行ったことあるから」
「え!? マジで? めちゃくちゃいいよな! あの満天の星がドーム型のスクリーンに映し出される瞬間とか……あっごめん…なんか俺、一人喋って」

 危ない危ない! コミュ力強めに絆されるところだった……

「いいな楽しそう……俺も地学にすればよかった」河東は、ちょっと伏せ目がちに微笑んだ。

 なんでだろう、内容は兎も角、絵上手いのに……(破廉恥教科書参照) あっ!それ聞かないと!

「おはようーー玲陽! 川崎!」そこに、女子連れで笹野とが現れた。
「あっ邪魔したか?」笹野は、河東と俺の顔を交互に見た。
「……そう思うなら声かけてくるな」
「ええーー俺だって川崎と友達だもーーん」笹野は、俺の肩を組んだ。

 ……!? イケメンの距離感ってバグってんの!?(ド緊張)

「河東くん、笹野くんって川崎くんと仲良かったんですか?」クラスの風紀委員、斉藤が首を傾げた。
 
 あれ? デジャヴュ?
  
「まぁね、この前お友達になったの」笹野は、放心状態の俺をぎゅっと抱きしめた。
「え!? 尊いんですけど!!」斉藤は、かけていたメガネをぐいっと上げた。

 尊いとは!?

「斉藤さん、本当好きだよねーー俺のこと」
「違います!! ちゃんと委員会のことして下さいって言ってるんです!」
「は〜〜い」河東は、やる気のない返事をし俺の頭を撫で始めた。

 あ〜あ〜あ〜あ〜〜!! イケメン怖い…助けてぇぇぇぇ!!(硬直)

「未久里!いい加減離れろ!」河東は、笹野に撫で回される俺を引き離した。
「ああ、俺の癒やし」
「おまえのじゃない!」河東は、笹野の手をぺしっと払った。
 隣で悶絶する斉藤は、はっと我に返えり「誤魔化したって無駄です!」斉藤は、「ええ〜〜斉藤さん優秀だしぃ〜〜」と言ってる笹野を引き摺っていった。
「なんか、ごめんな……」河東は、短いとため息を吐き、乱れた俺の髪を直した。
「いいいいや、平気だから」俺は、慌てて河東から離れた。

 もう、なんなんだよ……朝から生きた心地がしない……(蘇る悪夢)