一、ニ時限の記憶が曖昧だ。朝の出来事が、フラッシュバックして隣に座って居られる『デンジャラスイケメン』が直視出来ない。そういえば、なんか聞きそびれたような____
「あっ! 教科書!」
「わ……!? なんだよ!急に!」木村は、大きな声を出した俺に驚いていた。
「朝からおかしいけど……マジで大丈夫なん?」新田は、朝と違い、本気で心配してくれてるようだった。
「いや……ごめん」俺は、笑って誤魔化した。
「次の体育、体育館になったって」木村は、窓の外に指差した。いつから降っていたのか、かなりの土砂降りだった。
体育の授業は、ニクラス合同男女別で、体育館で何をするかを話し合い、男女共にバスケットボールに決まった。
試合時間は、十五分、五人ずつに別れ、何処からシュートしても一点、どちらかが五点入れたら終了。トーナメント方式だ。
俺と木村は、バスケ部だから人数の少ないチームへ強制的に入れられた。
女男別で試合が試合が始まった。一回戦、木村チームと一軍男子石黒チームだ。
石黒藍衣は、可愛い顔なのに対応が塩だとか、そのギャップがいいと女子ウケしてるらしい(木村情報)。試合してない女子達が騒ぎ始めた。両チーム譲らず同点が続くが、試合時間ギリギリで木村のシュートが入り試合終了。
「やったじゃん!」俺は、戻ってきた木村とハイタッチした。
二回戦、新田チームと俺のチームだ。新田チームのメンバーに河東がいる。俺の方は、笹野がいた。
「よろしくな」笹野は、早々に人懐っこさを出してきた。
試合開始のホイッスルが鳴る。メンバーのパスが俺に回り、笹野へパスを出す。笹野は、相手チームをうまく躱しシュート____ゴールに入った。
「うしゃ!」笹野は、近くにいた俺にハイタッチを求めてくる。俺は、その懐っこさに負け応えたけれども、心の中で『俺なんかが触れてすみませんね』とヤケクソで謝罪した。
イケメンのコミュ力強すぎ(動揺)……
再び試合開始。相手チームの河東が、パスカットし、一人、二人ディフェンスを抜け、そこに笹野が河東を止めに入った。河東は、ゴールを目がけシュート。ボールは、見事に入り外野の歓声が大きくなった。
きゃーきゃー言われてますけれども、そいつ変態ですから! 満員電車ですすすす……いや! ダメ! ダメ! 試合に集中!集中!
俺は、パスを受け取り、相手チームのディフェンスを避けきれず、バランスを崩した。
「……川崎!」
俺は、意識が朦朧とする中、電車での出来事が再びフラッシュバックしその顔が、俺の目の前に迫ってくる。
「ああああ! 吸引妖怪! いやああああ!」
鈍い音と共に、目の前がブラックアウトした。
*
誰かに、頭を撫でられたような気がしてゆっくり目を開けた。俺は、リアルな感覚が残る額に触れた。何やら大きめの絆創膏が貼ってある。
確か、体育の授業で……えっと……
「あ、気が付いた? 気分はどうかな?」白衣姿の高見先生がカーテンを開けた。
「大丈夫…です」
「頭ぶつけて倒れたって…大丈夫そうなら授業戻るかい?」
「……はい」
「そういや、ここまで君を運んでくれた…河東くん、さっきまでいたんだけど…あ、着替え済んだら声かけてね」高見先生は、再び、カーテンを閉めた。
河東が? なんで?
「ありがとうございました」俺は、保健室のドアを閉めた。体育の授業で、何があったのか記憶を辿ってみた。が、誰かとぶつかったまでは思い出せなかった。
「あっやばっ!」
予冷のチャイムが鳴る。俺は、急いで教室へ向かった。
「川崎!」
ぴきゃーーーー!(時空が歪む)
教室を入る前に呼び止められた。誰かと思いきや新田と木村だった。
「びっくりした……なんだよ……」俺は、びっくりして半分飛び出した魂を口に直した。
「おまえ、覚えてないのか?」新田は、小声で聞いてくる。
「え? 何が?」
「あれ、見ろよ」
俺は、新田が指差す方向に目をやった。
さわやかに微笑んでらっしゃる変……イケメン?
「河東……?」
「よく見てみろって!」今度は、木村が言った。
その完璧な顔面の顎辺りに、痛々しい絆創膏が貼ってあった。
「あれ、おまえがやったんだからな!」新田は、事の経緯を話してくれた。それを聞いた俺は、喉から変な音が出た。
「ま、河東にちゃんと謝るんだな。ファンに、コロされねぇこと祈る!」木村は、俺の肩をポンと叩いた。
「コロ……(絶望) おまえら! 友達だろ?」
そんな俺を、新田と木村が、憐れむような目で見て去っていった。
この! 薄情者!!
俺は、顔面国宝と呼ばれている河東の顔を傷物にした挙げ句、妖怪と言ったらしい。
おわた……つい心の声が出てしまった……
俺は、河東の方を見ないように席に座った。チャイムが鳴り授業が始まる。なんだか、隣からの刺さるような視線が気になり、生きた心地がしない。この状況に耐えられず、現実逃避をしていたら、いつの間にか授業が終わっていた。
「あの…えっと、ごめんな……大丈夫?」河東は、ぎごちなく俺に話し掛けてきた。
「河東くんは、悪くないじゃん!」女子の一言で、クラスの温度が氷点下まで急降下した。
おっしゃる通りですぅぅぅぅ!(吹雪)
「いや、あれは俺がよそ見してたから」河東は、宥めようとしたが収まらない。
誰か包丁を……切腹して償いますぅぅぅぅ!(豪雪)
「……吸引妖怪…ぶっはははは!ウケるぅぅ!」急に笹野が笑い出した。
「……うるせぇな」河東がムスッとした顔をする。
「え!? 河東くんが…拗ねてる……マジで……」河東の顔に女子達が破裂……いや、歓喜の声を上げた。
「おまえの顔が妖怪…… ぷっ! あはははっマジ! 腹痛てぇ!」笹野は、河東を更に煽った。
「未久里! やめろって!」
『吸引妖怪』言ったのは俺だけに、生きた心地がしない(氷点下40°C)……
笹野と河東のやり取りで、推しの女子達が(破裂で血塗れ)和んだのか、チラッと笹野を見ると、ニッと俺にまで笹野スマイルをしてきた。
え!? 俺にファンサーしてどーする? やっぱイケメン怖い……(情緒不安定)
「おい、藍衣? どこ行く? 昼飯は?」笹野が教室を出て行く石黒に声掛けた。
「なんだあいつ?」
「……さぁ」河東と笹野は、顔を見合わせ首を横に傾けた。
突然、トイレ側の廊下が騒がしくなった。怪異が起きたらしいと、近くにいた他クラスの奴らが話していた。なにやら、使用禁止の個室トイレから、不気味な笑い声がしたと、一部で噂になっていたらしい(木村情報)。

