◯時◯◯分発◯◯◯行きの電車が参ります……アナウンスがホームに流れる。
余裕持って出た筈なのに、忘れ物に気付き一旦、自宅に戻ったせいで、いつもの電車に乗り遅れてしまった。
「川崎!…あ…おはよう」
「お…おっおはよう……」
びっくりした……今日も、顔面がキラキラですね! ってなんで俺に声掛けた?
「……河東もこの線なんだ」ぎこちない俺。
「うん……」
ほら! 言わんこっちゃない……気まずっ! いや、待てよ……例の破廉恥教科書について聞くチャンスなのでは?
「なぁ、川崎って選択科目、地学だよな?」
「そ……そうだけど?」俺は、選択科目の言葉にドキっとした。
「なんで、地学にしたの?」
「えっと、最近は……名前で決めたかな。地球科学って壮大って感じしない……?」
「……なんだよそれ」河東は、声を出して笑った。
へぇ……こんな風に笑うんだって何!? そうじゃなくて!
河東にどう聞くか考えていたら、ホームに電車が入ってきた。そのせいで、河東が言ったこと聞き取れなくて、もう一度、河東を見てみたけれど、イケ散らかした笑顔が返ってきただけだった。
なんか言ったような気がしたけど……俺の聞き違いだったか……あっ! 肝心なこと聞けてない!
目の前のドアが開いて、大量の人が降りていく。それでも車内は、混んでいて乗るのに躊躇していたら、背後から押され揉みくちゃになった。
この時間帯、通学・通勤の人でごった返していて、生きた心地がしないのだ。なので、いつも早めの電車に乗ってるのに……
なんで忘れ物したんだ!まぢで! 最&悪!
「……大丈夫?」
上から聞こえて顔を上げた。俺がドア側で、河東が混み合う人を背にして、こちら向きに立っていた。
「……うん、大丈夫」
混んでるから仕方ないが、それにしても近くないか?
突然、電車が揺れて更に河東との距離が近くなった。俺の片耳に、河東の前髪が当たってる____!?
ぎゃああああ!近いって! ……え!?
俺の勘違いだろうか。長く吸われている気がする。
静かに吐いて……吸って…スーーーーー……。勘違いじゃない! 猫吸いならぬ、人吸い? え? は?
マンマ・ミーヤァァァァ!!(大混乱)
「……ごめん…もう少しだから我慢して」河東は、掠れた声で言った。
え?! 何? 変態発言にしか聞こえない!
たった二駅なのに長く感じる。その間も河東に吸われてる俺の何か。脳内処理が、追いつかず(ワニワニ)パニック状態だ。
電車が、速度を緩め車内のアナウンスが流れる。完全に電車が止まり、反対側のドア開いて乗客が降りていく____
「川崎、降りないの?」
「……ふぇ?」
河東は、放心状態の俺の腕を引っ張った。なんだか、河東に護ってもらったみたいだけど、代わりに俺の何が失った気がする(HP残量ゼロ)……
取り敢えず、駅で降りて河東に礼を言った。
「おお! 玲陽じゃん! 今の電車だった?」
「あ……うん、そう」
一軍男子、 笹野未久里だ。人懐っこい大型犬みたいだと、女子達が騒いでたのを思い出した。
「え? 川崎と一緒?」
「……未久里、ウザい」
「そうゆーなって!」
俺は、河東と笹野が先を歩いていくのをボーっと眺めながら、先程の電車での事柄について考えていた。もしかして、匂うのかと自分で嗅いでみたが分からなかった。
「おーーい! 川崎?」新田は、俺の目の前で手をひらひらさせた。
新田は、中学の時から同じ部活で、高校も同じで驚いたけど。
「ああ、ちょっとイケメン吸引妖怪に遭って……」
「は? イケメン? 吸引妖怪? ゲームの話かなんかか?」
「……HPゼロ…ううっ」
「は? おまえ、ゲームやり過ぎなんじゃねーの?」
「……満員電車嫌い」
「ああ、満員電車にやられたか」
「……やっぱ…イケメン嫌いだ……」
ゾンビみたいに歩き出した俺を、そうかそうかと、新田に宥められ学校に向かった。

