さわやかイケメンが破廉恥なことを考えています。



 
 盛り上がった球技大会が終わり、テストだ! と教室の雰囲気がピリピリし始めた。
 俺は、というと得意、不得意に偏りがあり、特に数字と英語が全くダメだ。
 
 嗚呼、呪いの呪文に見えてくる!
 
 赤点回避の為、教室で自習をしようと数学と英語の教科書を開いてみたが、頭に入ってこない。
 ズッ友の新田は、数学が得意で、木村は、英語が得意なんだか、二人共、国語が苦手で教え方が致命的に下手なのだ。

「ここ間違ってるよ」

 細くて長い指が、俺のノートに指差し出した。

「え……?」

 顔を上げたら、河東が俺のノートを覗き込んでいた。

 びっくりした! おまえは、指までイケメンか!

「えっと、本当だ……」
「ああ、ごめん! 余計なことしちゃったね……」
 河東は、慌てて俺の席を離れた。駅で待ち伏せすることも、後ろから付いて来ることもなくなり『さわやかイケメン』に戻っていた。俺にもそのキャラで、挨拶する程度になっていた。時々、さっきみたいに話しかけてくるが、俺が何か話そうとすると離れていく。不意に、話しかけて来るから逃げるに逃げられないし。それに、この前の情けない姿を見られてしまって、恥ずかしいのと気まずさで、河東にどう接していいか余計、分からなくなってしまった。

 そういえば、河東とまともに話なことない……な……(今更)

「川崎! 次、移動教室」木村が教室の出入り口で俺を呼んだ。
「あ! 待って! 俺も行く!」地学の教科書と筆記用具を持って新田、木村と教室を出た。

 *

 今日の授業は『太陽系とは?』。担任の天野先生の趣味なんじゃないか天球儀が、教壇で各惑星の軌道を周り、エンドレスで動いていた。

「なぁ、今回はテストのみだけど期末は、課題あるだろ……テーマなんにしよが悩むんだけど」新田は、頭を抱えた。
「テーマが、地球地学科で学んだことならなんでも可だもんな……壮大過ぎるだろ」木村も、ため息を吐いた。
「地球とは? 火星とは?とかでもいいってことだろ?」俺は、太陽系の資料集をワクワクしながら眺めた。
「そっか、なるほどな……」真剣な顔で新田がいった。
「そういやさ、噂で聞いたんだけど、うちの高校の天文部にイケメンがいるって」木村は、木星の模型を手に取った。

 どこでからの情報なんだよ……

「宮下先輩と渡辺先輩なら知ってるけど……」
「えっ? なんで知ってんの!?」木村は、身を乗り出して聞いてきた。
「ああ、部活見学しに行った時、部室入れてもらったけど……そんなやついなかったけど?」
「そっか……単なる噂話しだったのか…じゃ、代々引き継いでるある『もの』も噂かな……」と木村が言った。
「ある『もの』って何?」今度は、俺が身を乗り出して木村に聞いた。
「……そこまでは知らないけど」木村は、苦笑した。
 
 ある『もの』ってなんだろ……

 *

 授業が終わり、教室の出入り口で河東が立っていた。

「川崎!」こちらに駆け寄って来る河東。
「えっ!?」

 なになになに!!

 俺は、後退り廊下を走って逃げた。

「なんで逃げるの?」
「おまえが追いかけて来るからだろ!」
「待ってって!」

 俺は、後ろを見ながら階段を降りた。登りの生徒とぶつかり足を踏み外した____
 
 あ……落ちる!!

 間一髪のところ、河東に腕を掴まれて助かった。

「ああ……」俺は、そのまま階段に座り込んだ。
「よかった……」河東は、安堵のため息を吐いた。
「川崎に絵のモデル頼みたいと思ったんだけど……」
「は? やだよ…モデルなんて」
「だよな……分かった。これ教科書返すよ」河東は、俺の地学の教科書を差し出した。

 やっぱり河東が持ってたんだ……

「地学のこと…川崎のこと知れて嬉しかった……」さわやかイケメン河東が微笑んだ。