毎年恒例の球技大会。ここのところ天候が不安でだったが、今日の予報は曇り時々晴れ。
種目は、ドッチボール、バスケットボール、バレーボール。俺は、元バスケ部だから、それ以外の種目に参加出来る。悩んだ挙句、ドッチボールに参加することにした。本当は、バレーボールが良かったんたが、河東が参加していて、気まずいのでやめたのだ。
そう、やってしまったのだ。河東の怖さより、イライラが頂点に達してしまい『大っ嫌いだ』宣言をしてしまった。そして、さわやかイケメンの河東が『泣く』という想定外な事件勃発。事の経緯より『川崎が河東を泣かせた』という噂が広がった。
しかも、泣いた河東は、何事もなかったかのように、俺に話し掛けてくる。俺は、腹立たしいやら、気まずいやらで、そっけなくすると河東がめそめそ泣く始末。
俺が悪いのか? 被害者は俺なんだけど?
「ねぇ、河東くんに冷たくない?」クラスの女子に詰め寄られる俺。
冷たくないとは?
「いやいや、違う違うって……」笹野は、事の経緯を説明しているようだった。
「うちらが河東くんの代わりに謝るから許してあげなよ」めそめそ泣く河東を宥めながら別の取り巻き女子が言った。
「は? 自分で謝れなのかよ……」
「だから謝ってんじゃん!」
俺ってば! なんて事を! 河東ファンに敵を作ってどうする! いやいや! 俺は被害者なんだよ!
河東とは、そんな感じで今も気まずいまま、球技大会まできてしまった。
「川崎! おりゃ!」
「この野郎! 新田!やりやがったな!」俺は、新田にボールを当てられ外野へ。白熱したドッチボールを繰り広げていた。
ふぅ〜〜ちょい休憩!
俺は、日陰に行くと、そこに笹野と石黒がいた。
「お疲れ〜〜」笹野は、人懐っこい笑顔をした。隣の石黒は、コクっと頷く。
「お、お疲れ……」俺は、気まずいなっと思いながら日陰に座った。
「……ふはは! 川崎てば!思っきりぶちまけたな!」笹野は、声を出して笑う。
「はあ!? 笑い事じゃないし!」俺は、ムッとして顔を逸らした。
「ごめんごめん、あれは、完全に玲陽が悪い。見ろよあいつ……魂が抜けた埴輪みたいになってる」笹野は、ククっと笑った。
河東は、バレーボールコートに、いつもの覇気がなくぼけっと立っていた。こちらに気付いたのか、こっちに来ようとしてやめてを繰り返していた。
「川崎がいるから行きたいけど、嫌われてるから行けない……変な動きしてるし…玲陽……あいつは、他人に好かれてるって思ってるから、よっぽどショックだったんだろ。特に、川崎には好かれてると思ってたっぽいから」
え!? 何処にそんな要素が!?
「俺は、忠告したんだけどね。嫌われるぞって」笹野は、あ、嫌われてるぞの間違いかと言った。
「あはは……俺、イケメンが苦手で……」
俺は、幼稚園から中学生時代に絡んできた変なやつが全員、周囲から人気のイケメンだったこと、散々な目に遭ったことを掻い摘んで話した。
「……特殊癖は分からんけど……不器用なだけ説ってこともあるな…どれだけモテても、好きな子が自分を好きとは限らんし」笹野は、晴れた青空を眩しそうに眺めた。
「イケメンがいうと説得力あるな」
「俺が? イケメン? じゃ、俺も川崎にとって怖いイケメンなんだ」そんなこと思ったこともねぇけどと笹野は、独りごちた。
そうですねと言いたいところだが、気まずくて俯いた。
「イケメンで一軍って呼ばれてるけど?」俺はあえて付け足した。
「へぇ〜〜」笹野は、興味なさそうな返事をした。
「……一軍とか勝手に言われて……迷惑なんだよ」隣で黙っていた石黒が、ため息混じりに言った。
あれ? 石黒がちゃんと喋ってる……
「俺は、極度の人見知りなんだ……河東は兎も角、笹野はいい奴だよ」石黒は、俺にはにかんだ。
「藍衣、川崎に慣れたみたいだな」笹野は、石黒の頭をポンポンと撫でた。
仲良いいなぁこの二人……
「河東! 危ない!」
俺は、バレーボールコートの方へ目線をやった。ボーっと立っている河東目がけてボールが飛んでくる。それが、見事に顔面に当たり河東が倒れた。
「あいつ! 何やってんだ!」笹野と石黒が駆け出した。俺も釣られて、笹野の後を付いて走った。
「おい! 玲陽! 大丈夫か?」笹野は、倒れている河東を抱き起こした。
「……ああ、未久里」河東は、ヨロヨロ立ち上がった。
「ほら、保健室行くぞ」笹野は、河東の腕を掴んだ。
「……いいって……あ、川崎……」河東は、あからさまに狼狽えた。
河東の整った鼻から伝う赤い水滴。河東は、それを手で拭って顔面蒼白になった。俺は、持っていたタオルを河東に渡したが受け取ろうとしない。
「いいよ……汚れるから……」
「いいから使えって」俺は、タオルの上から鼻を押さえるようにいった。
ああ! なんかイライラする! あの河東が遠慮するとか、よっぽどショックだったんだろうけど、俺は俺でショックというか、ムカついてんだからな!
「川崎! 何処行ってたんだよ! 次!始まってるぞ!」同じドッチボールチームの木村に呼ばれた。
「俺らがやるから、川崎サンキューな」俺は、笹野に頷いてドッチボールチームへ戻った。
*
『打倒二組!』と燃えている実行委員が掲げていたが、去年と同様、残りバスケットボールの試合で二組に勝てば総合優勝、三組が勝てば俺らのクラスが総合優勝だ。
「川崎! 元バスケ部だよな?」実行委員の高畑が聞いてきた。
「ん……確かにそうだけど」
「頼む! 次の試合出てくれ!」
「いいのか? 俺、あんまり役に立てないかも」
「急遽人数が足りなくなって…どうしても勝ちたいんだ!」高畑は、真剣に頼んでくる。
「分かった。その代わり勝てなくても文句言うなよ」俺は、高畑に念押しした。
「え! 川崎ってバスケ部じゃねぇの?」相手チームの二組に言われた。
「違う! 元だよ! だからルール違反ではない!」実行委員でチームの高畑は、無茶苦茶なこぎつけを言い放った。
「ずっる!」二組の取り巻きから不満の声が上がった。
「じゃ! 試合始めまーーす!」そんなのお構いなしに、高畑が試合を始める。
二組チームが、俺に対してディフェンスを強化し俺が動けないようにしてくる。
「川崎!」それに臆することなく、俺にパスを出すバスケ経験者であろう成田。
俺は、軽くジャンプしボールを受け取り、ディフェンスをドリブルで追い抜き、走った勢いでゴールにボールを投げた。
「よっしゃ!」高畑は、ガッツポーズ。
「一点入れたから、後はおまえらでなんとかしろよ!」俺は、小声で高畑に言った。
「川崎!何言ってんだよ! これからじゃねーか!」高畑は、コート端は逃げる俺の腕を掴んだ。
試合続行のホイッスルが鳴る。二組も負けじと、点を入れ接戦になった。残り時間五分弱。三組が一点差で負けている状況だ。
「走れ!!」三組の野球部、谷口が、ボールを投げた。それに追いついたのが、陸上部の朝比奈。俺は、朝比奈からパスを受け取って、相手側のディフェンスより高くジャンプし、ゴールに近い高畑にパス。そして、ゴールへシュート____ボールが、ゴールへ入り試合終了のホイッスルが鳴る。三組の高畑が歓喜の声を上げた。
今年の球技大会は、二年三組が総合優勝。高畑は、張り切って優勝旗を壇上で受け取り大いに喜んだ。
正直、楽しかった……俺、やっぱバスケが好きだ!

