さわやかイケメンが破廉恥なことを考えています。




 再び病院へ行った。先生は、左足の状態を見て厳しい顔をした。

「これ以上続けられないことは分かってますね」
「……はい」

 俺は、先生に言われていた治療方法を受け、様子見で一日だけ学校を休むことになった。
 新田と木村から心配◯INEが届いた。『様子見で休んだだけだから。大丈夫』と返した。
『あのさ、河東が川崎なんで休んでるか聞いてきて……言っていいか?』と新田から追伸◯INE。

 文面から見て、河東にしつこく聞かれているに違いない。

『適当に誤魔化しとして』俺は、ニッコリスタンプを付けて新田に◯INEした。

 河東絡みの件で逃げた罰だな(ニッコリ)

 *

 随分過ごしやすくなったが、風が吹くとまだまだ冷たいと感じる。
 朝、いつも通り最寄り駅の改札口へ入った。

「川崎」ぬるっと現れたのは河東だった。
「え? なんでいんの?」俺は、驚きと恐怖でドン引いてしまった。
「なんでって?……学校休んでたし居ても立っても居られなくて……朝練も大事なのは分かってる……教室で会えるだけど! 川崎不足で! 川崎不足で! おかしくなりそうで!」河東は、目は虚でブツブツ言いながら頭を抱え込んだ。

 いつから待ってた?(震え)

「あはは……なんて個人的な理由だから気にしないで」河東は、いつも通りのさわやイケメンスマイルに戻った。

 個人的な理由って何?(怖い)

 俺は、恐怖心と不安感を感じながら、河東と電車に乗った。
 
「この時間だと空いてるね」河東は、空いている座席に俺を促した。それに従い座席に座った。

 今は、普段の河東だけど、さっきの様子がおかしかったのは、一体なんだったんだろう。

「あのさ……学校休んだのは部活で怪我して……」
「え!? 大丈夫?」めちゃくちゃ食い気味の河東。
「ああ……もう平気平気!」
「怪我したとこ何処?」
「いや、本当に大丈夫だから」
「……本当?」
「本当! 本当!」

 河東は、なんだか納得してない顔をしたけどそれ以上聞いてなかった。

「頼って欲しいな……」
「え……?」
「友達として頼って欲しい。新田と木村みたいに」
「ああ、部活一緒だし…新田は中学からの友達だから……」
「へぇ…そうなんだ」

 河東は、また死んだ魚のような目をした。

 やっぱり……様子がおかしい!(恐怖)
 
 *

 特にこれといって話す事がないまま、学校の最寄駅で下車して、朝練前と同様に学校まで一緒に歩いた。
 河東にニッコニコで「おんぶしようか?」と聞かれ全力で断ったら、風船が縮んだみたいにしゅんとなった。

 なんだよ……扱いづらいイケメンだな……  

「玲陽! はよう! 」
「……未久里」河東は、あからさまに嫌な顔をする。
「川崎はよう! そういえば休んでたけど大丈夫か?」
「おはよう。うん、大丈夫……」

 嗚呼、よかった笹野!救世主!

「未久里は、知らなくていい」河東は、俺と笹野の会話に割って入ってきた。
「なんでだよ。俺だって心配だったんだから聞いたっていいだろ」

 ええ!? 笹野救世主!?

「部活で怪我しただけだから、もう大丈夫だって」俺は、河東と笹野の間に入った。
「そっか…ならよかった」笹野は、俺にニッと笑った。河東は、不機嫌なまま歩き出した。 
 学校に向かっていると、河東と笹野に寄ってくるクラスメイト達。俺は、いつも通り河東から離れよとしたが、べったり付いてきて隣から離れない。
 俺は、女子達が河東に話し掛けているタイミングを見計らって、そっと離れよとした。

「何処行くの?」河東が、俺の腕を掴んだ。
「え? あ……新田と木村が待ってるし」俺は、苦し紛れの嘘を付いた。
「ごめん。俺、川崎と先行くね」河東は、さわやかに笑って俺の腕を引き、クラスメイトの群れから外れた。
「俺ら二人で行こう」河東は、俺の腕を掴みながらニッコリ笑った……が!

 目が笑ってないんですけど!(冷や汗)

 *

 河東は、気にしていないようだが、周囲の視線が気になって仕方がない。河東と特に話す事はないのに、教室まで一緒だった。
 俺が席を立つと河東が「何処いくの?」隣の席から聞いてくる。

 いやいや、君は笹野含む女子達と談笑中じゃないか!っと言いたいところだが、ぐっと我慢して「職員室に用があって」と答えた。
「……いってらっしゃい」
 俺は、慣れない見送りに、慌てて教室を出た。バスケ部顧問である柴田先生に、報告するため職員室へ向かった。

「……川崎は、それでいいのか?」
「はい」と答え答えた。
「今度の試合、精一杯応援してやってくれ」
「はい……失礼します」俺は、職員室を出て教室に戻った。

 授業が終わり、俺が席を立つと「何処行くの?」と、また隣の河東が聞いていた。

 さっきからなんなんだよ……!

「次、移動教室」
「あっそっか。また後で」

 何がまた後でだ!
 
 *

 新田と木村は、俺と同じ選択科目である地球学科。この高校には、天文部もあり人気科目の一つだ。

「なぁ……川崎よ! なんかゆー事ないのか?」新田は、鉱物のミニ標本から、水晶のクラスターを取って観察した。
「ああ、休んだとこのノートありがと」俺は、鉱物のミニ標本をじっと眺めてうっとりした。
 
 さっきまでのイライラが癒やされる……

「それはいいけど! そこじゃない! マジで一軍の仲間になってんだよ! 話しかけずれって!」
「なってない」俺は、標本の中て、一番お気に入り、モリオンクラスター(黒水晶群晶)を取ろうとして新田に遮られた。
「おまえが休んだ時……河東……めちゃくちゃ怖かったんだからな!」新田は、思い出したのかブルッと震えて顔を引き攣らせた。
「やっぱり、そっか」俺は、ぷぷっと笑ってやった。
「笑い事じゃねぇって!」
「は? 河東が絡む事件になると新田、木村……逃げたよね?」俺は、ニッコリ笑って圧をかけた。
「それは……」新田は口ごもり、隣で黙って聞いていた木村の目が泳いだ。
「俺は、その河東のよく分からない友達宣言に付き合ってるだけだけど?」俺は、イライラを抑えるため、モリオンクラスターを握りしめた。
「ごめんって……今度は、俺ら戦闘力10%でも頑張って恋斗を守るよ! 身長なら負けない!」新田と木村が頷いた。

 なんの戦闘力だよ……(苦笑)

「うん、期待してる」俺は、拳を突き出し、新田と木村が軽く拳を突き合わせた。