【流出映像】図書館の防犯カメラに、様子のおかしい学生が映っていた―市ヶ谷・外堀沿いの大学で起きていること―

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 私は、動画サイトを閉じた。
 暗くなったディスプレイに、自分の顔がぼんやりと映り込む。
 
 右目の奥の重みが、以前よりも確かな質量を持って居座っている。
 眼精疲労。そう、誰もがそう言うだろう。ブルーライトの浴びすぎ。寝不足。
 だが、コトリバコが語った「境界の向こう側を覗き見ている」という言葉が、呪いのように脳裏から離れない。
 
 私は、自分の調査ノートを見返した。
 市ヶ谷I中の校門ループ。X大学図書館の地下4階。
 そして、『図書館の“あれ”』でKさんが見せた、物理法則を無視した瞬間移動。
 
 それらは全て、境界の地で起きているということなのだろうか。
 確かに、外堀沿いは民俗学的には境界の地だ。
 天海僧正が作った結界の継ぎ目が綻び、内側と外側、過去と現在が、泥濁した外堀の水のように混じり合っているということなのか。
 
 世界線の混乱。
 ファンタ・ゴールデンアップルを飲んだ記憶があるのに、この世界には存在しない。
 かつて確かにあったはずの正しい現実が、少しずつ違う世界の現実と置き換わっている。
 気づかないうちに、世界線が変わっているということか。

 しかし、なぜ図書館なのだろう。
 図書館とは知が蓄積され、記録が保存される場所でもある。
 そこが、このバグだらけの現実のデータを保管しているクラウドのような役割を果たしているとしたら。

 自分の考えが飛躍しすぎていることに気付いて、思わず頭を振った。
 考えることが好きだ。私の脳内ではいろいろな考えが、駆け巡っている。
 ただ、いろいろと妄想するあまり、いつもこうやって思考が飛躍してしまう。
 
 私は、次の検索ワードを入力しようとして、キーボードに手を置いた。
 指先が微かに震える。
 
 もし、検索結果が、全てあの幾何学模様のような、文字化けしたような文字に変わっていたら……。
 
 ズキリ。
 
 まただ。また、右目の奥で、何かが脈打つような気がした。