どすこいラブリーちゃん

観光協会の事務所に通される。

「××大学の河田美和です。証拠の動画を拝見させていただくために、こちらへ伺わせていただきました。」

そこには、商店街のおばあさん、それから児童館の司書だという男性も同席していた。

全員が、私を見た瞬間、同じ反応をした。
沈黙。そして、困惑。

「……ん?」

司書の男性が口を開く。

「え?」
「いや……その……あれっ?」

二人とも半笑いになりながら、腕を組んだり、首をひねったりしている。

「確かに眼鏡だったし、同じ名前なんだけど……」

おばあさんも、口元に手を当てる。

「もっと……」

言い淀む。そして、少し意地悪な感じで、こう続けた。

「もっと、ふとっちょだったような……ねえ?」

空気が変わる。

「そんなこと言っちゃいけないよ!まがりなりにも、女の子にさ……」

司書の男性がおばあさんを窘める。
私は静かに言った。

「その、ふとっちょの女性とやらは、私ではありません。私に成りすました別人です。」

部屋中の全員が、互いの顔を見合わせる。
観光協会の女性が、慎重に言う。

「防犯カメラの映像、確認しますか」

私はうなずいた。

モニターが点灯する。
薄暗い商店街の映像。時間表示。

そこに映る、眼鏡の女。歩く。立ち止まる。
そして、胸ポケットから学生証を取り出す仕草。
画質は粗い。顔ははっきりしない。

だが、体格は明らかに違う。
私より、何倍も横に広い。肩のラインも、腕の太さも。

三者三様に、私の姿と、モニターの中の女を見比べる。

沈黙。

「……別人だな」

司書の男性がぽつりと呟いた。おばあさんも、小さくうなずく。
観光協会の女性は、青ざめている。

「でも、学生証を……確かに拝見して……」

私はモニターに映る女を見つめた。
彼女は、カメラに気づいていない。

けれど、映像の最後。ほんの一瞬。

画面の端で、こちらを向いた。
口元が、わずかに上がる。

ぞっとする。
私にはそれが、嘲笑しているように見えた。

部屋の空気は沈んでいく。
ようやく犯人を呼び出せたと思いきや、振り出しに戻された絶望感を、村の全員が感じていたのだろう。

「……これは、どういうことなんでしょうか」

観光協会の女性が呟く。
私は答えられない。

だが、確信した。
これは無差別な嫌がらせではない。これは、私個人に向けられたものだ。

私は、防犯カメラの中に映る女を、知っていた。