転生した特典が鼻かんだティッシュよりしょぼすぎる!〜ゴミ武器はゴミとしてぶん投げる〜

「あの、そんなに気持ちいいですか?」

「そりゃーもう…え?!」

 俺はとっさに振り返ると、そこにはさっきの娘が立っていた。
 え!ここって、混浴なのか?
 更衣室は別々だったのに。
 そうか。入り口は別々でも、風呂自体は同じなのか。
 しかもこの娘、デ…デカい!
 デカすぎる。
 さっき食堂で見た時は服を着ていたから分からなかったが、今見ると逆によくこの大きさで、あのサイズに収まっていたな。
 服が悲鳴を上げてるぞ。

「いや、この湯があまりにも気持ちよくて…」

「お隣いいかな?」

 俺は驚いて唾を飲み、それから声を出すことも、これ以上彼女の方を見ることもできなかった。

「じゃあ、入るね」

 おいおい。何もいっていないのになんか勝手に承諾して入ってきたぞ。
 そうして彼女はとても丁寧に湯船に入って、俺の方に近づいてきた。

「さっき食堂にいた人ですよね?
 噂は聞いていますよ。
 あなた、この町を救う勇者なんて言われているんですよね?
 なんかすごいものを持っているなんて話も聞いて、ずっと気になっていたんですよ。
 さっきは村長さんがいて話しかけることができなかったけど、今ならたくさんお話しできますね」

「それとさっきあそこで、私のことめっちゃ見てましたよね?」

「それは、少し気になって……」

 俺は震えたような声で、

「君、大丈夫なのか?こんな夜遅い時間に。
 しかも、もしこんなところここの人に見られたら…」

「大丈夫ですよ。あの人、私の母なので」

 は、母親?!てことは、この娘はここの温泉の娘だったのか。
 村長、もしかしてそれを知っててわざわざあんなことを…

「母は英雄が現れたと大騒ぎしていたけど、こんなに早く会えるなんて。
 名前はなんというんですか?」

「えっと…なまえ?」

「そう。名前です。是非是非教えてください」

 彼女はそういって俺にどんどん近づいてきた。
 いや、当たってる当たってる。
 背中にめっちゃ当たってるのに、こいつ、気づいていないのか?
 でも声を聞いている限り、そんな変な気はなく、純粋に名前を知りたがっているみたいだ。
 当たっているのもたまたまらしいが..

「えっと、俺の名前は…」

 やばい。今は名前どころじゃなくて、背中に当たっていることで頭がいっぱいだ。

「へー名前、そうやって言うんだ
 私の名前は…」

「あ、それは村長から聞いたよ。
 キーヌって言うんだってね」

「なんだもう知っていたんだ。
 そっか村長がね…
 これからよろしくね」

「こちらこそよろしく」

「そうだ!あっちの方がもっと眺めがいいんだ。
 ついてきて!」

あっちって、ただの家じゃないのか?

「ほら。ここ、めっちゃいい景色でしょ?」

 そこには、すぐ下に崖があり、前を見ると野原が広がっていた。

「ひゆーーーーー」

 急な崖になっているせいか、風が強く吹いていて少し寒いな。

「あそこのお城見える?
 あれがこの国の王都なんだよ」

 あれがあの王都か。
 国の中心だけあって、流石に立派だな。

「この景色はね。こっちの方角からしか眺めることができないの。
 しかも、こっちにあるのは民家だけだから、この眺めを見えるのはこの温泉からだけなの」

「確かにいい景色だ。
 転生前はあまり周りの景色などは見ず、スマホばっかりいじっていたが、外の景色を眺めるのも意外に悪くないな。
 写真を見ればいいと思っていたが、見るだけでは感じることのできないものもいっぱいあるな
 転生した後も、ずっとダンジョンの中にいて、それから村を歩いてただけだから、なんかすごく新鮮で、気持ちがいいな。

「どう?気に入ってくれた?」

「ああ、こんな気持ちよくなったのは初めてだよ」
 
 もしかしたら前の世界でも、たくさんこんな景色を見えたのかもしれない。
 なのに俺、そんな大切なものをたくさん見逃していたなんてな。
 これからはもっと周りを見てみるか。
 異世界でもたくさんいい景色が見れそうだな。
 食べ物といい、景色といい、初めての体験をするとそのものの良さが再発見できるな。
 そう考えていると突然彼女が耳元でこう囁き出した。

「一つ聞いて欲しいことがあるの
 聞いてくれる?」

 近い近い近い!
 だから背中に当たってるんだって!
 その上、耳元で話されると息が耳の中にふきかかって、温かくねっとりした温もりを感じると共に、耳の中から脳まで直接刺激が入っているように感じてる。
 

「聞いて欲しいって何を?」

「あのね。実は私も…」