2026-03-26
『バイオレンス』
嫌なことをされたからとしても
好きが変わることはないのだと。
ある女性の話を訊いていて思った。
その女性は元カレから散々なほどに
暴力や暴言を受けていた過去があり
第三者から見れば、別れて正解だが。
未だに元カレのことを思い出しては
好きだな、と幾度となく思うらしく。
「どうしてだと思いますか」と私は
その女性に、気安く訊ねてしまった。
「あはは、どうしてなんでしょう」と
空気を濁らせないための笑いを挟んで
「嫌なことされていたはずなのに」と
少し俯き気味になりながらそう話した。
目の前には、ホットコーヒーの缶が2つ
私と女性に挟まれるように置かれている。
周囲からは子供の楽しそうな声が聞こえ
公園のベンチを選んだ私は少し後悔した。
「嫌なことをされていたとしても」
「その人を好きに変わりなければ」
「求めてしまうのは性なのかもね」
女性の俯いた表情を眺めながら
淡々と思ったことを言葉にする。
「勿論、客観的に見れば別れて正解だと思う」
「けれど、あなたがそれを求めている以上は」
「無理にその人のことを忘れる必要はないね」
初めて会った人のお話だとしても
傷付けられる未来があるのならば
守るべきだと思ったりするけれど。
それは私が変えるべき未来ではなくて
この女性本人が変えなければならない。
「缶コーヒー、ありがとうございます」
そう言って、女性は開けようとするが。
無理に開けようとしていて
折角の可愛らしいネイルが
剥げてしまいそうで思わず。
もう1つあった缶コーヒーを開けてから
「はい、無理はしないでよね」と渡した。
「あはは、ありがとうございます」
「優しいですよね、誰に対しても」
私の行為は、優しさではなかった。
少し、見下す部分も含まれていて。
「そんなのも開けられないくせに」
どんなに人のことを思っていたとしても
心の奥底には、皮肉が生まれ続けていく。
「優しくない、私はあなたに対して」
強がった言葉を女性に投げかけたが。
「ううん、私にとって優しいです」
「あなたを好きになればよかった」
思ってもなかった言葉を言われた私
どの言葉も口から出すことができず。
ただ、女性の目を見つめた。
その目には女性を傷付ける男性が映っていて
私がその視界に入る隙間なんて残されてなく。
遠くで、乳児が泣いた。
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『バイオレンス』
嫌なことをされたからとしても
好きが変わることはないのだと。
ある女性の話を訊いていて思った。
その女性は元カレから散々なほどに
暴力や暴言を受けていた過去があり
第三者から見れば、別れて正解だが。
未だに元カレのことを思い出しては
好きだな、と幾度となく思うらしく。
「どうしてだと思いますか」と私は
その女性に、気安く訊ねてしまった。
「あはは、どうしてなんでしょう」と
空気を濁らせないための笑いを挟んで
「嫌なことされていたはずなのに」と
少し俯き気味になりながらそう話した。
目の前には、ホットコーヒーの缶が2つ
私と女性に挟まれるように置かれている。
周囲からは子供の楽しそうな声が聞こえ
公園のベンチを選んだ私は少し後悔した。
「嫌なことをされていたとしても」
「その人を好きに変わりなければ」
「求めてしまうのは性なのかもね」
女性の俯いた表情を眺めながら
淡々と思ったことを言葉にする。
「勿論、客観的に見れば別れて正解だと思う」
「けれど、あなたがそれを求めている以上は」
「無理にその人のことを忘れる必要はないね」
初めて会った人のお話だとしても
傷付けられる未来があるのならば
守るべきだと思ったりするけれど。
それは私が変えるべき未来ではなくて
この女性本人が変えなければならない。
「缶コーヒー、ありがとうございます」
そう言って、女性は開けようとするが。
無理に開けようとしていて
折角の可愛らしいネイルが
剥げてしまいそうで思わず。
もう1つあった缶コーヒーを開けてから
「はい、無理はしないでよね」と渡した。
「あはは、ありがとうございます」
「優しいですよね、誰に対しても」
私の行為は、優しさではなかった。
少し、見下す部分も含まれていて。
「そんなのも開けられないくせに」
どんなに人のことを思っていたとしても
心の奥底には、皮肉が生まれ続けていく。
「優しくない、私はあなたに対して」
強がった言葉を女性に投げかけたが。
「ううん、私にとって優しいです」
「あなたを好きになればよかった」
思ってもなかった言葉を言われた私
どの言葉も口から出すことができず。
ただ、女性の目を見つめた。
その目には女性を傷付ける男性が映っていて
私がその視界に入る隙間なんて残されてなく。
遠くで、乳児が泣いた。
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