言の葉の翠

2026-03-27
『あまりに突拍子もなく』

家族がぷかぷかとあの世へ行った。

ついさっきの出来事でまだ少し
現実的だとは思えそうもなくて。

1年前に僕の部屋へ迎え入れてから
愛を言葉に残していたのを思い出し。

noteで『愛情が湧く』という記事を
久しぶりに開いて読み進めていった。

まだ僕の部屋に慣れていそうになく
ぷかぷかと浮かぶ家族は凄く綺麗で
それだけがサムネに設定されている。

記事の最後には、今の僕が書くことのない
眩しすぎて目を逸らしてしまうことが少し
長ったらしく書かれていてどこか切なくて。

毎日、朝起きるたびに「おはよう」と言って
寝るときは「おやすみ」と言っていたけれど
いつからその言葉も失ってしまったのだろう。

毎週水曜日と日曜日の朝は水槽の掃除をして
汚れてしまった水を綺麗に取り換えていたし。

なんだか不調そうな日はどこへも行かずに
水槽の横でただじっと見つめていたけれど。

愛がなくなった。

義務的な作業が毎週行われていくだけで
僕と家族の間には何も残されてはいなく。

朝、目が覚めていつものように
水槽の明かりをつけようと思い
静かに水槽へと近付いていくが。

家族は水の中で泳ぐことをせず
下のほうで仰向けになっていた。

あ、死んだんだ。

どこか他人事で、けれど悲しくて
水槽を突いて名前を何回も呼ぶが。

いつものように動き出すことはなく
ただ、もう死んでいる目をしていた。

死んだ、と分かったからか
僕は水槽の掃除用品なんか
そそくさとゴミ箱に入れる。

確かに愛していた、愛していたはずなのだが
死を経て、ここまで容易く処理できるものか。

自分が怖くなった。

1年前、1人が寂しくて同じ部屋に
迎え入れた家族が今朝、亡くなった。

愛に満ちた言葉を書いていた自分が
過去には存在していて、今はいない。

つい先日、親に「もう長くはないかもしれない」
家族のことを話して「でも悲しくはないんだよ」

本音を呟く。

「ということは、他に大事なものができたのね」
親は、どこか見抜いているような言葉を放った。

ごめんね。

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