2026-03-08
『匿名への思い』
あなたのことを誰よりも
私は心底愛しているので
どうか、私ではない人と
お幸せになってください。
そんなことを言われた。
見ず知らずの匿名アカウントから
送られてきた文字の羅列を読んで
深夜2時、はい、とだけ返信した。
様々な人がこの世には存在していて
会ったことがない人に恋をする人も
確かに存在する、とは思っていても。
実際、その対象に私が選ばれると
どうしようもない、と実感をする。
入力中...という文字が表示されていて
何かこの人は私に伝えたいことがあり
同じ時間に文字を打っていると思うと
どこか儚くて、愛おしくてね、悲しい。
会えないと分かり切っていて
ネットで繋がり合うこと自体
愛を育めないことだと気付く。
本当にあなたを愛しています
だから、幸せでいてください
送られてきた文字の羅列から
温度を感じることはできない。
けれど、無数にある言葉の中から
これらを選んだこの人からは少し
温度を感じることができて嬉しい。
返信をすることはなく
既読つけることもなく
私は、そのまま眠った。
久しぶりによく眠ることができた。
誰かから愛されていることを
知って眠る夜はいつもよりも
深く気持ちのいい眠りになる。
私ね、君のこと愛してるよ
君とお話しできて幸せだよ
そんな他愛もない言葉を選んで
匿名垢に投げつけるように送る。
返信は深夜2時に来た。
そう言ってもらえて凄く嬉しいです
でも、愛しちゃいけない人もいます
疑問に思う言葉が書かれていて
どうして、とだけ返信をするが。
その日はもう、返信が来なかった。
次の日も、またその次の日も
愛しちゃいけない人、という
疑問は果たされない日が過ぎ。
つい先日のこと。
お久しぶりです、覚えてますか
愛しちゃいけない人の話ですが
深夜2時、送られてきて
覚えてるよ、と返信する。
あなたが覚えていてくれて凄く嬉しいです
あの、知らなくてもいいこともありますよ
答えは何も分からないまま。
拗ねた私はその返信に何も応えずに
スマホを枕元に置いて眠りについた。
浅い眠りから覚めるとまだ5時
ふわふわと夢みたいな視界の中
スマホを手に取り返信しようと
匿名垢を探しているのだけれど。
どこにもいない。
ん、と哀れな声が寝室に響くが
その人はもう、存在していなく。
なんだよ、愛しちゃいけない人ってさ
私はボソボソと愚痴って眠りについた。
カーテンの隙間から射し込む陽で目覚め
スマホで時間を確認すると10時だった。
匿名垢の人がいないという夢をみた。
ベッドから落ちていたスマホを拾い
匿名垢の人を探してみるとまだいて
会えないから愛さないでね、とだけ
温度を感じない文字が残されていた。
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『匿名への思い』
あなたのことを誰よりも
私は心底愛しているので
どうか、私ではない人と
お幸せになってください。
そんなことを言われた。
見ず知らずの匿名アカウントから
送られてきた文字の羅列を読んで
深夜2時、はい、とだけ返信した。
様々な人がこの世には存在していて
会ったことがない人に恋をする人も
確かに存在する、とは思っていても。
実際、その対象に私が選ばれると
どうしようもない、と実感をする。
入力中...という文字が表示されていて
何かこの人は私に伝えたいことがあり
同じ時間に文字を打っていると思うと
どこか儚くて、愛おしくてね、悲しい。
会えないと分かり切っていて
ネットで繋がり合うこと自体
愛を育めないことだと気付く。
本当にあなたを愛しています
だから、幸せでいてください
送られてきた文字の羅列から
温度を感じることはできない。
けれど、無数にある言葉の中から
これらを選んだこの人からは少し
温度を感じることができて嬉しい。
返信をすることはなく
既読つけることもなく
私は、そのまま眠った。
久しぶりによく眠ることができた。
誰かから愛されていることを
知って眠る夜はいつもよりも
深く気持ちのいい眠りになる。
私ね、君のこと愛してるよ
君とお話しできて幸せだよ
そんな他愛もない言葉を選んで
匿名垢に投げつけるように送る。
返信は深夜2時に来た。
そう言ってもらえて凄く嬉しいです
でも、愛しちゃいけない人もいます
疑問に思う言葉が書かれていて
どうして、とだけ返信をするが。
その日はもう、返信が来なかった。
次の日も、またその次の日も
愛しちゃいけない人、という
疑問は果たされない日が過ぎ。
つい先日のこと。
お久しぶりです、覚えてますか
愛しちゃいけない人の話ですが
深夜2時、送られてきて
覚えてるよ、と返信する。
あなたが覚えていてくれて凄く嬉しいです
あの、知らなくてもいいこともありますよ
答えは何も分からないまま。
拗ねた私はその返信に何も応えずに
スマホを枕元に置いて眠りについた。
浅い眠りから覚めるとまだ5時
ふわふわと夢みたいな視界の中
スマホを手に取り返信しようと
匿名垢を探しているのだけれど。
どこにもいない。
ん、と哀れな声が寝室に響くが
その人はもう、存在していなく。
なんだよ、愛しちゃいけない人ってさ
私はボソボソと愚痴って眠りについた。
カーテンの隙間から射し込む陽で目覚め
スマホで時間を確認すると10時だった。
匿名垢の人がいないという夢をみた。
ベッドから落ちていたスマホを拾い
匿名垢の人を探してみるとまだいて
会えないから愛さないでね、とだけ
温度を感じない文字が残されていた。
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