言の葉の翠

2026-03-29
『好きなはず』

出会いはマッチングアプリだった。

やはり25歳、結婚を考えなければ
将来が少しだけ不安で始めたアプリ。

学生時代、恋人がいたことはあった。
けれど、長く続く恋愛は1つもなく。

久しぶりに恋をする余裕が出てきて
マッチングアプリで知り合った人と
ご飯に行ったり映画を観たりする中。

告白をされた。

断ってしまっても可能性を無くすわけで
まずは了承をして先のことを考えようと
深くは思わずに、すぐに、恋人となった。

彼は、転職をすると言い出していて
私は、応援したい気持ちもあるけど。

それが県外だと教えられたときに少しだけ
嫌だな、と思ってしまったのが本音だった。

1人で考える時間が欲しかった。

けれど、彼は私のことを好きすぎるのか
私から時間を奪ってまでも、会いに来る。

会いに来るって言わば、愛だとは思うけど
相手のことを考えていないな、と少し思う。

嬉しくないと言えば嘘になってしまうけど
いずれ飽きも訪れるだろうと思ったりして。

今の、この幸せを放り出してまで
彼と県外へ行くのは如何なものか。

「県外には行きたくないな」と言えれば
きっと彼も考え直してはくれないか、と
どこか他人事で、淡い期待だけが浮かぶ。

もう付き合って半年が経った。

未だ、彼が私に向ける愛に変わりはなく
友達からも「愛されてるね」と言われる。

が、重い。

「重い」と表現をして相手を振ることは
きっと恋愛の中で禁忌だとは思うけれど。

仕事で疲れ切った夜中にかかってくる電話
休みたいのに「会いたい」と言われる夜中。

そこまで人のことを好きになれて凄い。
私がただ、幼稚なだけかもしれないが。

疲れてしまう。

一緒にいるときは確かに楽しくて幸せで
笑顔になっているのだと自覚はしていて
けれど、いずれ県外へ行くのだとすれば。

早く、別れを切り出さなければならない。

私がこうして悩んで、でも楽しんでいる時間に
彼の貴重な時間をも奪っているとは知っていて。

どの言葉を選んで、別れに至るべきなのか
もしくは、別れに至らないようにするには
どの選択が私たちにとって正しいのだろう。

彼と話し合う時間が必要だった。
1人で考える時間も必要だった。

仕事終わり、家に着いて車から降りる。
スマホがブーと着信音を鳴らしている。

彼から。

気付いていないフリをしてスマホを鞄にしまい
家の扉を開けて「ただいま~」と言って入った。

洗面所で手を洗っている間にも
自分の部屋へと行く間にさえも
鞄からは着信音が聞こえてくる。

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