2026-04-01
『あなたと出会えて良かった』
「あなたと出会えて良かった」と
久しぶりに言われる機会があった。
近くのスーパーで買い物をしていたとき
「すみません」と後ろから話しかけられ。
「ん?」と言ってから振り返ると
年配の女性が困った表情をしつつ
「あれが欲しくて」と指をさした。
腰が曲がっていて、高いところにある
商品を取ることが困難なのだと察して
「これかな」と言いながら取って渡す。
「お兄ちゃん、若いのに優しいのね」
『ハウルと動く城』のソフィのような声で
そんなことを言ってくるもんだから照れる。
「他に欲しいものはないですか?」
嬉しくて助けたくて、話しかける。
「これだけ欲しかったの、ありがとうね」
商品を指さして、伏し目がちに微笑んだ。
それから「あなたと出会えて良かった」と
恥ずかしげもなく告げてくる女性は礼をし
僕から視線を外して他のところへと向かう。
僕も買おうと思っていたものをカゴに入れて
そそくさとレジで会計をしようと思ったとき
先に会計を終えた女性は、僕に気付いたのか。
手を振って、スーパーから出て行った。
たまたまスーパーで出会った元カノと
別れに至ってしまった感覚に似ている。
可笑しくて、1人でクスっと笑いながら
会計を済ませて、僕もスーパーから出た。
家へ歩いて帰る間にどうしても
あの言葉だけが頭に残っていて。
「あなたと出会えて良かった、か」と
呟きながら、信号が変わるのを待った。
「あなたと出会えて良かった」と
久しぶりに言われたからだろうか。
3年前の春のことを思い出した。
信号が赤から青へと変わり
横断歩道を人が行き交う中。
見覚えのある人と目が合った気がした。
立ち止まって振り返るが、誰もいない。
信号がチカチカとしていて
走って横断歩道を渡り切る。
3年前の春を思い出した場所に
彼女が佇んでこちらを見ていた。
僕と彼女の視線の間には
幾つもの桜が舞っていて。
ついさっき、手を振ってくれた女性と同じように
彼女も手を振りながら嬉しそうな表情をしている。
出会いたくなかった。
僕は振り返って家のほうへ向かうが
信号が変わって、彼女は走ってくる。
後ろから、走る音が聞こえてくる。
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『あなたと出会えて良かった』
「あなたと出会えて良かった」と
久しぶりに言われる機会があった。
近くのスーパーで買い物をしていたとき
「すみません」と後ろから話しかけられ。
「ん?」と言ってから振り返ると
年配の女性が困った表情をしつつ
「あれが欲しくて」と指をさした。
腰が曲がっていて、高いところにある
商品を取ることが困難なのだと察して
「これかな」と言いながら取って渡す。
「お兄ちゃん、若いのに優しいのね」
『ハウルと動く城』のソフィのような声で
そんなことを言ってくるもんだから照れる。
「他に欲しいものはないですか?」
嬉しくて助けたくて、話しかける。
「これだけ欲しかったの、ありがとうね」
商品を指さして、伏し目がちに微笑んだ。
それから「あなたと出会えて良かった」と
恥ずかしげもなく告げてくる女性は礼をし
僕から視線を外して他のところへと向かう。
僕も買おうと思っていたものをカゴに入れて
そそくさとレジで会計をしようと思ったとき
先に会計を終えた女性は、僕に気付いたのか。
手を振って、スーパーから出て行った。
たまたまスーパーで出会った元カノと
別れに至ってしまった感覚に似ている。
可笑しくて、1人でクスっと笑いながら
会計を済ませて、僕もスーパーから出た。
家へ歩いて帰る間にどうしても
あの言葉だけが頭に残っていて。
「あなたと出会えて良かった、か」と
呟きながら、信号が変わるのを待った。
「あなたと出会えて良かった」と
久しぶりに言われたからだろうか。
3年前の春のことを思い出した。
信号が赤から青へと変わり
横断歩道を人が行き交う中。
見覚えのある人と目が合った気がした。
立ち止まって振り返るが、誰もいない。
信号がチカチカとしていて
走って横断歩道を渡り切る。
3年前の春を思い出した場所に
彼女が佇んでこちらを見ていた。
僕と彼女の視線の間には
幾つもの桜が舞っていて。
ついさっき、手を振ってくれた女性と同じように
彼女も手を振りながら嬉しそうな表情をしている。
出会いたくなかった。
僕は振り返って家のほうへ向かうが
信号が変わって、彼女は走ってくる。
後ろから、走る音が聞こえてくる。
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