2026-02-23
『別れ話』
「別れたとしても私たち」
「また出会うと思うから」
目の前の彼女が言う。
「そのときは1から付き合おう」
「初めて出会ったときみたいに」
続けるように彼女は
淡々と別れを告げた。
別れに至るまでの過程の中に
様々な葛藤が含まれているが
結果として別れに至った僕ら。
淹れた珈琲を啜りながら飲んだ僕は
「また出会えるかな」と悲しくなる。
同棲を始めて1年にも満たない春
今、別れについて話し合うなんて。
秒針が刻む音だけが部屋に響き
彼女は口をモゴモゴとしている。
「出会えるよね、実際付き合ったわけだし」
「運命が1回だとは限らないと思うからね」
僕は沈黙に耐えられ切れず
思ってもないことを言った。
彼女が泣いた。
音も出さずに。
拭おうともしていないそれは
彼女の頬を静かに伝っていく。
思い出す、彼女に告白した日のこと。
「嬉しい」と言ってくれたときの涙。
僕は彼女を泣かせてばかりで
きっと誰も幸せにはできない。
もう、彼女は僕と出会うべきではないと
どこか諦めみたいな思いが心に湧き出す。
「もし、出会うならどこかな」
「やっぱりあの海辺とかかな」
彼女は次、僕と出会うときのことを
クスクスと考え始めていて、可愛い。
頬を濡らすそれを親指で拭ってあげ
「この家の前とかはどう?」とだけ
彼女と目を合わせて言ってみたけど。
その機会が訪れることは、ない。
僕はもう、ここに来ないつもり。
「あ、なんか考えてるね」
彼女は僕の思いを見抜く。
「ううん、何も考えてないよ」
「早く会いたいね、家の前で」
僕は嘘を吐くことしかできず。
目の前に座っている女性には
誰よりも幸せであってほしい。
だから泣かせてしまう僕なんかより
泣かせない男性と出会ってほしくて。
「そっか、もう別れるんだしさ」
「言いたいことは言っておこう」
彼女のこういうところが好きだった。
吹っ切れればどうでも良くなるとこ。
「私ね、君と出会えて幸せだったよ」
「また出会いたいとも思っているし」
そう言い切った彼女は僕のほうを見つめ
「何か言ってよ」と目で伝えてくるから。
「僕もね、出会えて最高に幸せだった」
「また出会いたいと思ってるよ、僕も」
嘘を吐いた。
「ん?」と彼女は言ってから
「どうしたの」と続けてくる。
何のことだろうと思ったけれど
目の前に座っている女性が段々
滲んでいく気がして気が付いた。
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『別れ話』
「別れたとしても私たち」
「また出会うと思うから」
目の前の彼女が言う。
「そのときは1から付き合おう」
「初めて出会ったときみたいに」
続けるように彼女は
淡々と別れを告げた。
別れに至るまでの過程の中に
様々な葛藤が含まれているが
結果として別れに至った僕ら。
淹れた珈琲を啜りながら飲んだ僕は
「また出会えるかな」と悲しくなる。
同棲を始めて1年にも満たない春
今、別れについて話し合うなんて。
秒針が刻む音だけが部屋に響き
彼女は口をモゴモゴとしている。
「出会えるよね、実際付き合ったわけだし」
「運命が1回だとは限らないと思うからね」
僕は沈黙に耐えられ切れず
思ってもないことを言った。
彼女が泣いた。
音も出さずに。
拭おうともしていないそれは
彼女の頬を静かに伝っていく。
思い出す、彼女に告白した日のこと。
「嬉しい」と言ってくれたときの涙。
僕は彼女を泣かせてばかりで
きっと誰も幸せにはできない。
もう、彼女は僕と出会うべきではないと
どこか諦めみたいな思いが心に湧き出す。
「もし、出会うならどこかな」
「やっぱりあの海辺とかかな」
彼女は次、僕と出会うときのことを
クスクスと考え始めていて、可愛い。
頬を濡らすそれを親指で拭ってあげ
「この家の前とかはどう?」とだけ
彼女と目を合わせて言ってみたけど。
その機会が訪れることは、ない。
僕はもう、ここに来ないつもり。
「あ、なんか考えてるね」
彼女は僕の思いを見抜く。
「ううん、何も考えてないよ」
「早く会いたいね、家の前で」
僕は嘘を吐くことしかできず。
目の前に座っている女性には
誰よりも幸せであってほしい。
だから泣かせてしまう僕なんかより
泣かせない男性と出会ってほしくて。
「そっか、もう別れるんだしさ」
「言いたいことは言っておこう」
彼女のこういうところが好きだった。
吹っ切れればどうでも良くなるとこ。
「私ね、君と出会えて幸せだったよ」
「また出会いたいとも思っているし」
そう言い切った彼女は僕のほうを見つめ
「何か言ってよ」と目で伝えてくるから。
「僕もね、出会えて最高に幸せだった」
「また出会いたいと思ってるよ、僕も」
嘘を吐いた。
「ん?」と彼女は言ってから
「どうしたの」と続けてくる。
何のことだろうと思ったけれど
目の前に座っている女性が段々
滲んでいく気がして気が付いた。
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