2026-04-04
『桜の花びら』
4月になった。
「待ってよ」と呟いても時間は止まらず
着々と進んでいって、私を置いてけぼり。
まるで付き合っていた元カレと似ていて
4月になってもまだ、思い出してしまう。
大学生になった。
高校を卒業する日、「もう別れよう」と
彼氏はこの関係に終止符を打ってきたが。
「別れる選択をするんじゃなくて」
「一旦、付き合い続けてみない?」
別々の大学へと進むことを考えた上で
彼氏は別れを告げてきたのだろうけど
私は、離れていても続くと思っていた。
「もう気持ち冷めちゃったからさ」
「ごめんね、大学でも頑張ってね」
私の言葉に対して考える素振りもせず
彼氏は淡々とそう言って、振り返った。
もう通うことのない高校の正門を
友達と話しながら行く彼氏を見て
「待ってよ」と呟いたけど届かず。
前髪が持ち上がってしまうほどの強風が
私めがけて襲い掛かってきて、桜が舞う。
雪みたいに空から降ってくるそれが
綺麗で、口を開けて見惚れてしまう。
「桜の花びらが地面に落ちてしまう前に」
「3枚同時に掴めたら幸せになるんだよ」
半年前、亡くなった祖母の言葉が浮かんだ。
毎年、春になると教えてくれていたからか。
桜を見ただけで思い出してしまった。
其処彼処へと行き先を決めずに揺蕩うそれを
3枚同時に掴むというのはそれなりに難しい。
さっきまで襲い掛かるほどに吹いていた強風が
まだ幸せを手にしていないのに止んでしまった。
右手と左手で1枚ずつ掴めてはいたのに
最後の1枚だけを取り逃すのは私みたい。
きっと高校を卒業して、大学へ進学したとしても
彼氏と付き合っていれば幸せになれたはずなのに。
いずれ散ってしまう桜と同じように
彼氏が抱いていた好意は無くなった。
「桜、頭に乗せて主人公かお前は」
担任だった先生が後ろから話しかけてきた。
「ほれ」と桜を取って、私に渡してくれる。
「ありがとうございます」と言って受け取ったとき
両手には桜の花びらが3枚あって、嬉しくて泣いた。
「どうした、卒業は悲しいよな」
先生は何も分かっていないけど。
その鈍感さが優しさみたいなところもあって
「3年間ありがとうございました」と言った。
4月になった。
時間は待ってくれることがないから
自分の手で幸せを、幾つも掴みたい。
大学の正門を通ると桜が満開に咲いていて
風が吹いていないのに桜の花びらが舞った。
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『桜の花びら』
4月になった。
「待ってよ」と呟いても時間は止まらず
着々と進んでいって、私を置いてけぼり。
まるで付き合っていた元カレと似ていて
4月になってもまだ、思い出してしまう。
大学生になった。
高校を卒業する日、「もう別れよう」と
彼氏はこの関係に終止符を打ってきたが。
「別れる選択をするんじゃなくて」
「一旦、付き合い続けてみない?」
別々の大学へと進むことを考えた上で
彼氏は別れを告げてきたのだろうけど
私は、離れていても続くと思っていた。
「もう気持ち冷めちゃったからさ」
「ごめんね、大学でも頑張ってね」
私の言葉に対して考える素振りもせず
彼氏は淡々とそう言って、振り返った。
もう通うことのない高校の正門を
友達と話しながら行く彼氏を見て
「待ってよ」と呟いたけど届かず。
前髪が持ち上がってしまうほどの強風が
私めがけて襲い掛かってきて、桜が舞う。
雪みたいに空から降ってくるそれが
綺麗で、口を開けて見惚れてしまう。
「桜の花びらが地面に落ちてしまう前に」
「3枚同時に掴めたら幸せになるんだよ」
半年前、亡くなった祖母の言葉が浮かんだ。
毎年、春になると教えてくれていたからか。
桜を見ただけで思い出してしまった。
其処彼処へと行き先を決めずに揺蕩うそれを
3枚同時に掴むというのはそれなりに難しい。
さっきまで襲い掛かるほどに吹いていた強風が
まだ幸せを手にしていないのに止んでしまった。
右手と左手で1枚ずつ掴めてはいたのに
最後の1枚だけを取り逃すのは私みたい。
きっと高校を卒業して、大学へ進学したとしても
彼氏と付き合っていれば幸せになれたはずなのに。
いずれ散ってしまう桜と同じように
彼氏が抱いていた好意は無くなった。
「桜、頭に乗せて主人公かお前は」
担任だった先生が後ろから話しかけてきた。
「ほれ」と桜を取って、私に渡してくれる。
「ありがとうございます」と言って受け取ったとき
両手には桜の花びらが3枚あって、嬉しくて泣いた。
「どうした、卒業は悲しいよな」
先生は何も分かっていないけど。
その鈍感さが優しさみたいなところもあって
「3年間ありがとうございました」と言った。
4月になった。
時間は待ってくれることがないから
自分の手で幸せを、幾つも掴みたい。
大学の正門を通ると桜が満開に咲いていて
風が吹いていないのに桜の花びらが舞った。
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