2026-02-27
『あなたの知らない曲』
一度愛したものを失ってしまえば
一生悲しむ性格だと思っていたが。
悲しみも、次第に薄れていき
何が悲しいか忘れてしまった。
本を読んで泣いてしまう人が、羨ましい。
現実があまりにも皮肉で本では泣けない。
映画を観て泣いてしまう人が、妬ましい。
映画よりも醜い現実を生きて、泣けない。
純粋だった頃に戻りたい、とは
歳を重ねるごとに濃くなる願い。
ふと、SNSで流れてきた動画に映る
無垢な子供が何処か阿呆らしく見え。
動画を閉じた。
元カノから「元気?」とだけ連絡がきた。
だから「そっちこそ元気かな?」と返す。
「うん、凄く元気だよ」と連絡が返ってきて
それからダラダラと今彼の愚痴ばかり言われ。
「そうなんだね、大変だね」
「でも、幸せそうでいいね」
思ってもない言葉を選んで送る行為は
相手に愛がないからできるわけであり
僕は未練の無さに勝手に気付かされた。
過去、この人と別れたら嫌だ、と思っていたのに
その人から恋愛の話が送られてきても何も思わず
淡々と連絡ができてしまう無神経さがどこか怖い。
「久しぶりにさ、電話でもしない?」
時刻は深夜3時を回り、眠かった僕は
「ごめん、できない」と断りを入れて
スマホを枕元に置いて目を瞑って眠る。
ブーと通知音が何か送られてきたことを
僕に知らせるように音を鳴らしているが。
これ以上、話していても愚痴しかないと思い
その通知には反応をしないで目を瞑ったまま。
それから何時間経った頃だろうか。
着信音で目を覚ました僕は
誰からというのを確認せず
「はーい」と出てしまった。
「あ、出てくれた」
「久しぶりだね~」
声から元カノだとすぐに分かったけれど
一方的に切るのは失礼だと思ってしまい
「久しぶりだね」と寝ぼけた声で言った。
「出てくれないと思ったからさ」
「出てくれただけでも嬉しいな」
深夜とは思えない声をしていて
眠気なんて吹っ飛んでしまった。
「元気でいいね、そういうの懐かしいな」
僕は過去のことを少し思い出したけれど。
「もう忘れちゃったな、過去のこと全て」
そんなことを言われ、悲しくはなかった。
「で、彼氏のことなんだけど」
始まった、今彼の愚痴がまた。
僕は電話を切って、スマホの電源も切った。
アレクサに「音楽をかけて」と喋りかける。
「あなたが好きだったの」という歌詞が
サビ前に流れてしまう曲が部屋を満たす。
元カノとドライブ中に聴いていた曲だった。
僕のほうを見つめてその歌詞を歌ってくる。
思い出しそうになった僕は
アレクサに「次」と言って
曲をスキップして飛ばした。
元カノの知らないイントロが流れ出す。
--
『あなたの知らない曲』
一度愛したものを失ってしまえば
一生悲しむ性格だと思っていたが。
悲しみも、次第に薄れていき
何が悲しいか忘れてしまった。
本を読んで泣いてしまう人が、羨ましい。
現実があまりにも皮肉で本では泣けない。
映画を観て泣いてしまう人が、妬ましい。
映画よりも醜い現実を生きて、泣けない。
純粋だった頃に戻りたい、とは
歳を重ねるごとに濃くなる願い。
ふと、SNSで流れてきた動画に映る
無垢な子供が何処か阿呆らしく見え。
動画を閉じた。
元カノから「元気?」とだけ連絡がきた。
だから「そっちこそ元気かな?」と返す。
「うん、凄く元気だよ」と連絡が返ってきて
それからダラダラと今彼の愚痴ばかり言われ。
「そうなんだね、大変だね」
「でも、幸せそうでいいね」
思ってもない言葉を選んで送る行為は
相手に愛がないからできるわけであり
僕は未練の無さに勝手に気付かされた。
過去、この人と別れたら嫌だ、と思っていたのに
その人から恋愛の話が送られてきても何も思わず
淡々と連絡ができてしまう無神経さがどこか怖い。
「久しぶりにさ、電話でもしない?」
時刻は深夜3時を回り、眠かった僕は
「ごめん、できない」と断りを入れて
スマホを枕元に置いて目を瞑って眠る。
ブーと通知音が何か送られてきたことを
僕に知らせるように音を鳴らしているが。
これ以上、話していても愚痴しかないと思い
その通知には反応をしないで目を瞑ったまま。
それから何時間経った頃だろうか。
着信音で目を覚ました僕は
誰からというのを確認せず
「はーい」と出てしまった。
「あ、出てくれた」
「久しぶりだね~」
声から元カノだとすぐに分かったけれど
一方的に切るのは失礼だと思ってしまい
「久しぶりだね」と寝ぼけた声で言った。
「出てくれないと思ったからさ」
「出てくれただけでも嬉しいな」
深夜とは思えない声をしていて
眠気なんて吹っ飛んでしまった。
「元気でいいね、そういうの懐かしいな」
僕は過去のことを少し思い出したけれど。
「もう忘れちゃったな、過去のこと全て」
そんなことを言われ、悲しくはなかった。
「で、彼氏のことなんだけど」
始まった、今彼の愚痴がまた。
僕は電話を切って、スマホの電源も切った。
アレクサに「音楽をかけて」と喋りかける。
「あなたが好きだったの」という歌詞が
サビ前に流れてしまう曲が部屋を満たす。
元カノとドライブ中に聴いていた曲だった。
僕のほうを見つめてその歌詞を歌ってくる。
思い出しそうになった僕は
アレクサに「次」と言って
曲をスキップして飛ばした。
元カノの知らないイントロが流れ出す。
--



