消失者たち

【失踪者の行き先 - 新たな仮説】
三島は執務室に戻り、一人で考える。
失踪者は「どこに」消えたのか?
もし、宇宙に送られているとしたら……
いや、待て。
「転送」技術があるなら、宇宙である必要はない。
地球上のどこか、人目につかない場所かもしれない。

三島は日本地図を広げる。
失踪事件が発生した場所をマッピングする。
関東、関西、中部……全国に散らばっている。
特定の地域に集中しているわけではない。

では、失踪者が「集められている」場所は?
三島は考える。
もし、失踪者が転送されているなら、転送先には「受け入れ施設」が必要だろう。
大規模な施設。
100人以上を収容できる施設。
しかし、そんな施設が日本国内にあるなら、誰かが気づくはず。

三島は別の可能性を考える。
もし、転送先が「地下」だったら?
地下深くに作られた秘密施設。
または、海底。
あるいは……本当に宇宙。

三島は頭を振る。
推測ばかりで、証拠がない。
今、必要なのは具体的な手がかりだ。

【木下研究官の失踪】
日時: 2023年12月4日 午後3時

三島の携帯電話が鳴る。
「三島です」
「三島警部!木下研究官が消えました!」渡辺警部補の声。
三島は立ち上がる。
「何ですって?」
「午後2時頃、国立医療科学研究所の実験室で作業中、突然消えたと……」
「警護は?」
「警護官が2名、実験室の外に待機していました。しかし、木下研究官は実験室から出てきませんでした。
不審に思って中に入ったら、誰もいなかったと……」

三島は研究所に急行する。

実験室は完全な密室。
窓はなく、出入口は一つだけ。
その出入口には、警護官が2名待機していた。
しかし、木下研究官は消えた。

三島は実験室を調べる。
机の上には、木下研究官が書いていたノートが開いたまま。
最後のページには、こう書かれていた:

「HGM-7q31変異体の真の目的が判明した。これは『適合性試験』だ。何への適合性かは不明だが、おそらく……」

文章はそこで途切れている。
ペンが床に落ちている。
まるで、書いている最中に何かが起きたかのように。

三島は周囲を見回す。
部屋の隅に、科学機器が並んでいる。
その中の一つ、「質量分析装置」の表面に、微細な傷がある。
まるで、何かが「出現」した時の衝撃で傷ついたかのような。

三島は科捜研に連絡し、現場の詳細な分析を依頼する。

【実験室の分析結果】
報告日: 2023年12月5日
報告者: 科捜研 田村洋介

分析内容
国立医療科学研究所の実験室を詳細に調査。
発見事項
1. 電磁波の痕跡
実験室の電子機器の記録を解析したところ、午後2時17分33秒に、強力な電磁パルスが発生していた。
周波数は3.7Hzと27kHz。これまでの失踪事件と完全に一致。
2. 同位体の検出
実験室の床(木下研究官が立っていたと思われる位置)から、微量の未知同位体を検出。
これまでの失踪現場と同じ物質。
3. 空間の歪み?
質量分析装置の表面の傷を詳細に調査。
傷は「内側から外側へ」向かってついている。
まるで、空間が内側から「押し出された」かのような。
物理的には説明不可能な傷のパターン。

結論
木下研究官は、他の失踪者と同じ方法で「転送」された。
転送の瞬間、強力な電磁パルスが発生し、空間に何らかの「歪み」が生じた可能性。

報告者: 田村洋介(印)