消失者たち

【緊急会議 - 仮説の共有】
三島は松岡課長に報告し、緊急会議を招集する。

三島警部の報告:
「失踪者全員が持つHGM-7q31変異体は、1975~1985年の『国民健康増進特別事業』で人為的に組み込まれた可能性があります。当時の責任者、山口二郎は1985年に突然姿を消し、現在も行方不明。そして、メディテック社の代表『山口次郎』は、山口二郎と関連がある可能性が高い」

松岡課長:
「つまり、40年前に『種を蒔き』、今『収穫』している……?」
三島警部:
「はい。しかし、問題は『なぜ』です。
40年もかけて、100万人に遺伝子を組み込み、今になって回収する。
その目的は何なのか?」

渡辺警部補:
「人体実験……?」
三島警部:
「可能性はあります。しかし、それにしては規模が大きすぎる。100万人を対象にした人体実験など、誰が、何のために……」

山本警部補:
「三島さん、もう一つの可能性は考えませんか?」
「何ですか?」
「犯人が……人間ではない、という可能性」

会議室が静まり返る。
三島警部:
「……山本さん、それは……」
山本警部補:
「聞いてください。我々は、既知の技術では説明できない現象を目の当たりにしています。
密室からの消失。未知の同位体。未知の電磁波。そして、40年越しの計画。これらを全て実行できる『人間』が、果たして存在するでしょうか?」

岩崎警部補:
「では、山本さんは何だと?」
山本警部補:
「わかりません。しかし、我々が『人間』だと思い込んでいる前提を、一度外すべきかもしれません」

三島警部:
「……山本さんの言うことも一理あります。しかし、それを仮説として採用するには、まだ証拠が不足しています。現時点では、『高度な技術を持つ組織』として捜査を続けます」

【三島隆の自宅 - 深夜の訪問者】
日時: 2023年11月30日 午前2時

三島は自宅で資料を読んでいた。
山口二郎の経歴、失踪者のリスト、科捜研の報告……
全てを繋げようとするが、まだ足りない。
何かが足りない。

突然、インターホンが鳴る。
午前2時。誰だ?
三島はモニターを確認する。
画面には、スーツを着た男が映っている。
40代くらい。無表情。
「はい、どなたですか?」三島がインターホンに応答する。
「三島隆警部ですね。お話があります」男の声は機械的。
「今は深夜です。明日、警視庁に来てください」
「それはできません。今、お話しする必要があります」

三島は警戒する。
この男……
「あなたは誰ですか?名前を言ってください」
「私の名前は重要ではありません。重要なのは、あなたが知るべき情報です」
「どういう情報ですか?」
「失踪事件について」

三島は息を呑む。
犯人か?
いや、もしそうなら、なぜわざわざ訪ねてくる?
「……少し待ってください」
三島は携帯電話を手に取り、警察に通報しようとする。
しかし、携帯電話の画面が突然ブラックアウトする。
電源が切れた?
いや、バッテリーは十分あったはずだ。

インターホンから再び男の声。
「通報は無駄です。この周辺の通信は、一時的に遮断されています」
三島は背筋が凍る。
通信遮断?
「あなたは……何者ですか?」
「繰り返しますが、私の名前は重要ではありません。ドアを開けてください。危害は加えません」

三島は拳銃を腰に装備し、ドアに向かう。
ドアチェーンをかけたまま、わずかに開ける。
男が立っている。
無表情。
目が……何か、おかしい。
人間の目ではないような……

「何の用ですか?」三島が低い声で尋ねる。
「あなたは、真実に近づきすぎています」男が言う。



「真実……?」
「HGM-7q31変異体について。山口二郎について。あなたは正しい推測をしています」
「あなたは、犯人側の人間ですか?」
「『犯人』という言葉は適切ではありません。我々は、犯罪を犯しているわけではない」
「100人以上を誘拐しておいて、犯罪ではない?」
「『誘拐』でもありません。我々は、『回収』しているだけです」

三島は怒りを抑える。
「回収……人間を物のように」
「そうです。HGM-7q31変異体を持つ個体は、我々の『所有物』です」
「所有物だと!?」
「正確には、『プロジェクトの成果物』です。40年前、我々は日本人の一部にHGM-7q31変異体を組み込みました。それは、将来の『収穫』のためです」

三島は拳銃に手をかける。
「あなたを逮捕します」
「それは無駄です」男は動じない。
男はゆっくりと手を上げる。
その瞬間、男の姿が「揺らぐ」。
まるで、熱で歪む空気のように。
次の瞬間、男の姿が消える。
三島は目を疑う。
ドアの前には、誰もいない。

三島は慌ててドアを全開にし、廊下を見る。
誰もいない。
エレベーターも動いていない。
男は、文字通り「消えた」。

三島は部屋に戻り、震える手でメモを取る。
訪問者の証言:
* 「我々は回収している」
* 「HGM-7q31保有者は我々の所有物」
* 「40年前にプロジェクトを開始」
* 通信遮断能力
* 瞬間移動能力

三島は頭を抱える。
あの男は何者だ?
人間ではない……
いや、そんなことは……
しかし、目の前で消えた。
これは現実だ。

三島は窓の外を見る。
夜の東京。
静かな街。
しかし、その裏で、何かが起きている。
我々の知らない何かが。