2 過ぎ行く先の行方
<ep-5>
師走という異称に相応しく、学生も社会人もどことなくバタバタし始めた頃。
例に洩れず……何なら、医学部三年である俺は下手な社会人よりも過密なスケジュールの中に身を投じていた。
秋のレポート地獄を乗り越えてホッとしたのも束の間。今は年明けの本試験の勉強は勿論、年内の分野別科目試験の勉強。そして一年後に控えている所謂『医師の仮免試験』のことも考えて動きはじめなければならない時期。
時は金なり――まさにこれ。
とはいえ、程々に休息を挟むのも効率上昇の秘訣。
その日の夜、俺は父さんから頼まれていた小用を息抜きとしてこなすことにした。
夜勤に出る前父さんが作っておいてくれたミートソースのスパゲッティを燈と二人で食べる。
粉チーズを味調整の塩コショウか、くらい控えめにしか振らない燈。いくらなんでも控えめ、の度を越している。
「もう少しかけた方が美味いぞ」
とうっかりを装い、燈のミートソースの上に粉チーズをドバッとぶちまけた俺を見る燈の目は驚きでか、目ん玉がこぼれ落ちるんじゃないかと思うくらいまん丸になって少し面白かった。
燈が皿洗いをしている間に俺は廊下の納戸の中を漁り、奥から三十センチ四方、高さ一メートルくらいの箱と、その横にあった年季の入った大きい紙袋を引っ張り出してリビングに戻った。
そうしてそれを窓際のチェストの横へと運び、箱の蓋を早速開ける。
中には台座付きの木の幹。そして、その幹の表面に点在している節に差し込む葉の繁った枝が大量に。
箱から取り出したそれを黙々組み立てていたら、皿を洗い終えたらしい燈が俺の斜め後ろからおずおずと声を掛けてきた。
「零司、さん……それ、なんです、か……?」
「は? 見りゃ分かんだろ」
「……木?」
「……まぁ、木だけど……ツリー。クリスマスツリーな?」
そう。俺が父さんから頼まれていたのは、このクリスマスツリーを出して飾っておくことだった。
佐伯家では毎年クリスマスツリーを飾る習慣がある。
元々はクリスチャンだった母さんが始めたことらしいが、母さんが居なくなった後もこの習慣は変わらずに続けてている。
「クリスマス、ツリー……」
あぁ、と手をポンと叩いた燈だったが、でもと軽く首を傾げる。
「クリスマスツリーって……家の中でも飾るんですね……」
「何、お前の家は飾ってなかったのか?」
つい燈が記憶喪失だということを失念して問うてしまったけれど、燈は短く唸ってから頷いた。
「家、の中でクリスマスツリーを見たことは、多分ない、です……」
「……ふぅん」
まぁ、一メートル程のクリスマスツリーを飾る家は確かにそう多くないかも知れない。
俺は物心ついた時からもう見慣れた風物詩だったから逆に違和感を覚えないだけで。
燈の記憶はまだハッキリしていない……となると、小さなオブジェみたいなクリスマスツリーくらいはあった可能性もなくはない。
ただ、もしあったとしても、燈の記憶に残る程印象的なものではなかったのだろう。
ツリーの基礎だけをさっさと組み立てた俺は、紙袋の中を覗いてから燈に視線を遣る。
「お前、これ手伝え」
「……手伝い、ですか?」
「そ。ツリーの飾り付け。二人でやった方が早いだろ」
そこには、さっさとツリーの飾り付けを終えて自分の勉強の時間を少しでも増やしたいという打算が七割。そして二割は燈に役割を与えることで彼の居心地の悪さが薄まれば良いと思った結果。
もう一割は、イベント事に触れることで何か思い出すことがあるかも知れないという淡い期待だった。
別に燈が記憶を取り戻そうが取り戻さなかろうが、俺には何の影響も及ばないだろうが、自分の過去をよく覚えていないというのは不安なんじゃないかというお節介みたいなものだ。
「……でも僕、ツリーの飾り付けとかしたこと……」
「ないなら、やってみりゃ良いだけだろ。ほら、俺が電飾のコード巻くから、お前は紐の輪っかが付いてる飾りを枝に適当に引っ掛けてってくれ」
飾る場所に決まりはない。好きな所に好きな飾りを引っ掛けるだけだ。
そう続け、俺は電飾のコードを引っ張り出した紙袋を燈の足元に置いてやった。
青と白、赤と緑の小さな電飾コードを交差するようツリーに巻き付けていく俺と、覚束無い手付きでオーナメントを枝に引っ掛けていく燈。
細々したオーナメントを引っ掛ける役目を燈に任せたのは正解だった。
俺が一人で飾り付けを完成させるよりも幾分か早くツリーは彩に溢れてくれた。
「……零司さん、この……星は? 紐がついていないんですが……」
「あぁ、それはツリーを完成させる大事な飾りだ。ほら、底に穴が空いてるだろ? ツリーのてっぺんに差し込むヤツだ」
飾り付けの仕上げは任せた、と燈に云えば、彼はおずおずとツリーのてっぺんへまるで王冠でも被せるかのよう手の平大の星飾りを恭しい手付きで被せた。
「よし。そーいや電飾ちゃんと光るか試してなかったからちょっと確認するぞ」
そう宣言し、一旦リビングの照明を落としてから床に寝そべらせたスイッチを、『切』から『入』へカチリと動かす。
パッ、パッ、と。青と白、赤と緑の光が交互に点灯する。
良かった、電飾は今年もまだちゃんと生きていた。
規則正しく点滅を繰り返す光を、燈はまるで魔法でも目の当たりにしたかのよう、目を大きくしながらジッと見詰めている。
そんな燈を横目に、俺はツリーの横のチェストに立て掛けてある写真立ての向きを僅かにだけツリーの方へと角度を調整した。
それから一瞬だけ手を合わせて軽く目を閉じる。
その仕草に気付いた燈がちょこんと首を傾げる。
「零司さん……その写真、は……?」
「ん? あぁこれな。母さんだよ。五年くらい前に亡くなっててな。ツリー飾るのは、母さんの為みたいなもんだからちゃんと見せてやらないと」
無自覚に小さく笑ったら、燈は刹那キョトンとしてから慌てたようについさっきの俺と同じように数秒、手を合わせて目を閉じた。
数秒だけだけれども何かを祈るような仕草。咄嗟に俺を真似ての反射的なものだったのだろうけれど、俺はこの時燈の心根の優しさを知った気がして、思わず口角がほんのりと上を向いた。
「よし、確認終わり」
電飾のスイッチを切って、リビングの照明を元の明るさに戻す。
チェストの上に戻した俺の手は写真立ての向きを変えはせずに普段そこにはない薄型の箱を手に取った。
厚さは三センチ程。A4用紙くらいの大きさをした紙箱は、父さんが買ってきた物だ。
俺はそいつを何の躊躇いもなく燈の目の前に差し出す。
「これは、アドベントカレンダー。一から二十四まで数字が振ってあるだろ? 日付に該当する数字のところをクリスマスまで毎日ひとつずつ開けてくってヤツ」
「アドベント、カレンダー……」
知らない単語だったのか、燈は慎重にその言葉を繰り返す。
「そ。中には、小さいお菓子とかオーナメントが入ってんだ。今年これを毎日開けるのはお前の役目な」
「え……? でも……」
何で? という困惑の眼差しは敢えて気付かない振り。
「もし中味がチョコとかクッキーだったらそいつはお前が食って良い。んで、オーナメントが入ってたら、それはツリーの好きなとこに追加で飾れ」
今日はもう五日。クリスマスツリーを飾るのもアドベントカレンダーを開けるのも恒例行事とはいえ、ついつい毎年十二月に入る前に用意し損ねてしまうのは多分俺にも父さんにも几帳面を象徴するA型の血が入っていないから……だと思う。
「ほら、五までは今開けて良いぞ」
トントン、と一のマスを指先で叩くけれど、燈の手はまだ躊躇うように空中を彷徨っている。
ふむ、とひと唸り。それならこうしよう、と俺は一のマスの扉を開ける。
「今日は、五のマスまで俺とお前交互で開ける。で、明日からはお前が毎日開ける係にしよう……お、ひとつめは早速プレゼントのオーナメントか。ほら、次はお前の番」
手本を見せることで、燈に真似をさせる。
未だ躊躇いがちに、それでも二のマスの扉に指を引っ掛けた燈。その中にはホイル紙に包まれたチョコレートが入っていた。
そうやって五のマスまで順番に開けて、結果的に出てきたのはふたつのオーナメントとみっつの小さなお菓子。
オーナメントはツリーの高い位置の枝に吊るし、お菓子はみっつ中ひとつを俺がもらっておく。
「よし、じゃあ明日から頼んだぞ」
「ぁ……はぃ……」
「んじゃ、俺部屋で勉強してっから。何かあったら遠慮なく呼べ」
ホイル紙に包まれたチョコを指先で遊びながらリビングを出ようとしたら、燈があの、と小さな声を投げてきた。
「ん?」
「これ……部屋の電気消して……ツリーの明かり、見てちゃ……だめ、ですか……?」
珍しい燈からのお願いに、思わず肩が揺れる。
「だめじゃねーよ。部屋暗くして、好きなだけ光るツリー眺めてていーぞ」
電飾のスイッチをまた入れてやって、リビングの照明を落とせば、燈はソファの上から毛布を引っ張ってきてツリーの横に座って毛布を被った。
座敷童子かよ……というツッコミは口の中で溶かし、風邪引くなよとだけ残して今度こそ俺が背中を向けると、燈のありがとうございます、が穏やかに背筋を撫でた。
<ep-5>
師走という異称に相応しく、学生も社会人もどことなくバタバタし始めた頃。
例に洩れず……何なら、医学部三年である俺は下手な社会人よりも過密なスケジュールの中に身を投じていた。
秋のレポート地獄を乗り越えてホッとしたのも束の間。今は年明けの本試験の勉強は勿論、年内の分野別科目試験の勉強。そして一年後に控えている所謂『医師の仮免試験』のことも考えて動きはじめなければならない時期。
時は金なり――まさにこれ。
とはいえ、程々に休息を挟むのも効率上昇の秘訣。
その日の夜、俺は父さんから頼まれていた小用を息抜きとしてこなすことにした。
夜勤に出る前父さんが作っておいてくれたミートソースのスパゲッティを燈と二人で食べる。
粉チーズを味調整の塩コショウか、くらい控えめにしか振らない燈。いくらなんでも控えめ、の度を越している。
「もう少しかけた方が美味いぞ」
とうっかりを装い、燈のミートソースの上に粉チーズをドバッとぶちまけた俺を見る燈の目は驚きでか、目ん玉がこぼれ落ちるんじゃないかと思うくらいまん丸になって少し面白かった。
燈が皿洗いをしている間に俺は廊下の納戸の中を漁り、奥から三十センチ四方、高さ一メートルくらいの箱と、その横にあった年季の入った大きい紙袋を引っ張り出してリビングに戻った。
そうしてそれを窓際のチェストの横へと運び、箱の蓋を早速開ける。
中には台座付きの木の幹。そして、その幹の表面に点在している節に差し込む葉の繁った枝が大量に。
箱から取り出したそれを黙々組み立てていたら、皿を洗い終えたらしい燈が俺の斜め後ろからおずおずと声を掛けてきた。
「零司、さん……それ、なんです、か……?」
「は? 見りゃ分かんだろ」
「……木?」
「……まぁ、木だけど……ツリー。クリスマスツリーな?」
そう。俺が父さんから頼まれていたのは、このクリスマスツリーを出して飾っておくことだった。
佐伯家では毎年クリスマスツリーを飾る習慣がある。
元々はクリスチャンだった母さんが始めたことらしいが、母さんが居なくなった後もこの習慣は変わらずに続けてている。
「クリスマス、ツリー……」
あぁ、と手をポンと叩いた燈だったが、でもと軽く首を傾げる。
「クリスマスツリーって……家の中でも飾るんですね……」
「何、お前の家は飾ってなかったのか?」
つい燈が記憶喪失だということを失念して問うてしまったけれど、燈は短く唸ってから頷いた。
「家、の中でクリスマスツリーを見たことは、多分ない、です……」
「……ふぅん」
まぁ、一メートル程のクリスマスツリーを飾る家は確かにそう多くないかも知れない。
俺は物心ついた時からもう見慣れた風物詩だったから逆に違和感を覚えないだけで。
燈の記憶はまだハッキリしていない……となると、小さなオブジェみたいなクリスマスツリーくらいはあった可能性もなくはない。
ただ、もしあったとしても、燈の記憶に残る程印象的なものではなかったのだろう。
ツリーの基礎だけをさっさと組み立てた俺は、紙袋の中を覗いてから燈に視線を遣る。
「お前、これ手伝え」
「……手伝い、ですか?」
「そ。ツリーの飾り付け。二人でやった方が早いだろ」
そこには、さっさとツリーの飾り付けを終えて自分の勉強の時間を少しでも増やしたいという打算が七割。そして二割は燈に役割を与えることで彼の居心地の悪さが薄まれば良いと思った結果。
もう一割は、イベント事に触れることで何か思い出すことがあるかも知れないという淡い期待だった。
別に燈が記憶を取り戻そうが取り戻さなかろうが、俺には何の影響も及ばないだろうが、自分の過去をよく覚えていないというのは不安なんじゃないかというお節介みたいなものだ。
「……でも僕、ツリーの飾り付けとかしたこと……」
「ないなら、やってみりゃ良いだけだろ。ほら、俺が電飾のコード巻くから、お前は紐の輪っかが付いてる飾りを枝に適当に引っ掛けてってくれ」
飾る場所に決まりはない。好きな所に好きな飾りを引っ掛けるだけだ。
そう続け、俺は電飾のコードを引っ張り出した紙袋を燈の足元に置いてやった。
青と白、赤と緑の小さな電飾コードを交差するようツリーに巻き付けていく俺と、覚束無い手付きでオーナメントを枝に引っ掛けていく燈。
細々したオーナメントを引っ掛ける役目を燈に任せたのは正解だった。
俺が一人で飾り付けを完成させるよりも幾分か早くツリーは彩に溢れてくれた。
「……零司さん、この……星は? 紐がついていないんですが……」
「あぁ、それはツリーを完成させる大事な飾りだ。ほら、底に穴が空いてるだろ? ツリーのてっぺんに差し込むヤツだ」
飾り付けの仕上げは任せた、と燈に云えば、彼はおずおずとツリーのてっぺんへまるで王冠でも被せるかのよう手の平大の星飾りを恭しい手付きで被せた。
「よし。そーいや電飾ちゃんと光るか試してなかったからちょっと確認するぞ」
そう宣言し、一旦リビングの照明を落としてから床に寝そべらせたスイッチを、『切』から『入』へカチリと動かす。
パッ、パッ、と。青と白、赤と緑の光が交互に点灯する。
良かった、電飾は今年もまだちゃんと生きていた。
規則正しく点滅を繰り返す光を、燈はまるで魔法でも目の当たりにしたかのよう、目を大きくしながらジッと見詰めている。
そんな燈を横目に、俺はツリーの横のチェストに立て掛けてある写真立ての向きを僅かにだけツリーの方へと角度を調整した。
それから一瞬だけ手を合わせて軽く目を閉じる。
その仕草に気付いた燈がちょこんと首を傾げる。
「零司さん……その写真、は……?」
「ん? あぁこれな。母さんだよ。五年くらい前に亡くなっててな。ツリー飾るのは、母さんの為みたいなもんだからちゃんと見せてやらないと」
無自覚に小さく笑ったら、燈は刹那キョトンとしてから慌てたようについさっきの俺と同じように数秒、手を合わせて目を閉じた。
数秒だけだけれども何かを祈るような仕草。咄嗟に俺を真似ての反射的なものだったのだろうけれど、俺はこの時燈の心根の優しさを知った気がして、思わず口角がほんのりと上を向いた。
「よし、確認終わり」
電飾のスイッチを切って、リビングの照明を元の明るさに戻す。
チェストの上に戻した俺の手は写真立ての向きを変えはせずに普段そこにはない薄型の箱を手に取った。
厚さは三センチ程。A4用紙くらいの大きさをした紙箱は、父さんが買ってきた物だ。
俺はそいつを何の躊躇いもなく燈の目の前に差し出す。
「これは、アドベントカレンダー。一から二十四まで数字が振ってあるだろ? 日付に該当する数字のところをクリスマスまで毎日ひとつずつ開けてくってヤツ」
「アドベント、カレンダー……」
知らない単語だったのか、燈は慎重にその言葉を繰り返す。
「そ。中には、小さいお菓子とかオーナメントが入ってんだ。今年これを毎日開けるのはお前の役目な」
「え……? でも……」
何で? という困惑の眼差しは敢えて気付かない振り。
「もし中味がチョコとかクッキーだったらそいつはお前が食って良い。んで、オーナメントが入ってたら、それはツリーの好きなとこに追加で飾れ」
今日はもう五日。クリスマスツリーを飾るのもアドベントカレンダーを開けるのも恒例行事とはいえ、ついつい毎年十二月に入る前に用意し損ねてしまうのは多分俺にも父さんにも几帳面を象徴するA型の血が入っていないから……だと思う。
「ほら、五までは今開けて良いぞ」
トントン、と一のマスを指先で叩くけれど、燈の手はまだ躊躇うように空中を彷徨っている。
ふむ、とひと唸り。それならこうしよう、と俺は一のマスの扉を開ける。
「今日は、五のマスまで俺とお前交互で開ける。で、明日からはお前が毎日開ける係にしよう……お、ひとつめは早速プレゼントのオーナメントか。ほら、次はお前の番」
手本を見せることで、燈に真似をさせる。
未だ躊躇いがちに、それでも二のマスの扉に指を引っ掛けた燈。その中にはホイル紙に包まれたチョコレートが入っていた。
そうやって五のマスまで順番に開けて、結果的に出てきたのはふたつのオーナメントとみっつの小さなお菓子。
オーナメントはツリーの高い位置の枝に吊るし、お菓子はみっつ中ひとつを俺がもらっておく。
「よし、じゃあ明日から頼んだぞ」
「ぁ……はぃ……」
「んじゃ、俺部屋で勉強してっから。何かあったら遠慮なく呼べ」
ホイル紙に包まれたチョコを指先で遊びながらリビングを出ようとしたら、燈があの、と小さな声を投げてきた。
「ん?」
「これ……部屋の電気消して……ツリーの明かり、見てちゃ……だめ、ですか……?」
珍しい燈からのお願いに、思わず肩が揺れる。
「だめじゃねーよ。部屋暗くして、好きなだけ光るツリー眺めてていーぞ」
電飾のスイッチをまた入れてやって、リビングの照明を落とせば、燈はソファの上から毛布を引っ張ってきてツリーの横に座って毛布を被った。
座敷童子かよ……というツッコミは口の中で溶かし、風邪引くなよとだけ残して今度こそ俺が背中を向けると、燈のありがとうございます、が穏やかに背筋を撫でた。



