【二〇××/〇四/二十×】
「月見里ヒロ君!【オカルト研究同好会】に入らないかい?!」
「だ!か!ら!入らないって言ってるじゃないっすか!!!しつけぇなぁ!!!」
ここに戻ってくる…………。というわけだ。この数日の間で、ミナトくんは自分の部活動である軽音楽部が本格化するということで離脱、ハルは有言実行、サッカー部への入部を確定させ離脱。
俺はこんな状況だから、部活動体験にはまともに行けていない。ハルの付き添いでサッカー部へ行ったのと、ミナトくんがいるから軽音楽部に行っただけである。そう、まだ俺はフリーな状況、アンドウ先輩にとっては好条件になってしまったのだ。
そして放課後、俺のいる教室まで凸られてしまい、今に至るのである。ただ、俺はこの数日間で決めたことがある。そう一度、アンドウ先輩と腹を割って話してみようと思った。
というのも、ミナトくんから話を聞く限り、アンドウ先輩は二年生の中でも変わり者と言われているというより、もはや孤立、限りなくいじめに近い状況だそうで、なんだか可哀そうになってきたのと、ここまで俺に執着するということは、霊感があると勘違いしたこと以外に何かのっぴきならない事情があるのかも。と、思ったのである。
「あ…………。さーせん…いつものノリと勢いで拒否っちゃいました。」
「ほう、今日はなんだか素直だね?」
「いや、一回はちゃんと話聞いてやってもいいのかな。と」
「随分上からだね?まぁ、ちゃんと話す機会を作ってくれたことに感謝するよ。」
改めて対面してみて、最初の説明会の時に“ビジュがいい”と思ったくらいだから、顔の良さに今までの悪行のすべてを許しそうになった。己があまりにもチョロすぎて怖い。とはいえ、ちゃんと話をしてみないことには分からない。
「まぁ、先日伝えた通り、だよ。」
「俺に霊感があると思ったから…………。ですよね?」
「そうさ、だからこそ、この学校に言い伝えられている怪談を一緒に調査できるかと思ったんだ。」
「言い伝えられてる怪談?そんなのあるんすか?」
「ああ……この学校独自の七不思議みたいなもので…」
そう言ってアンドウ先輩はしれっと教室へ入ってきて適当な席に座り、ポツポツとこの学校に伝わる怪談を語り始めた。
【××××/××/××】
これは、いつごろから伝わっているか分からない話である。俗にいう『七不思議』それは各所によって伝わるものが変わっている。
麗名高校に伝わるものはこうだ。
一つ『三階の階段を数えると段数が変わる。そしてその先には存在しないはずの四階があり、進むと帰って来れない。』
二つ『屋上から校庭を見下ろすと、校庭に墓石の影が見える。見てしまったら最後、墓へ引きずり込まれる。』
三つ『空き教室に体の一部が無い生徒たちが先生を待つように座っていて、間違えて入ると先生として死ぬまで授業をやらされる。』
四つ『二階、理科室の隣のトイレ、一番奥、和式トイレの個室を使うとトイレの中から手が伸びてきてそのまま下水に引きずり込まれる。』
五つ『体育館棟の奥、教師や用務員ですら近づくのを憚る開かずの間がある。そこからうめき声が聞こえてくる。』
六つ『校舎裏には、花壇があり、そこには死体が埋められており、花壇の花がぐちゃぐちゃになっていると、死体が校舎を徘徊している。』
七つ『××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××』
これら全ては、生徒、教職員全員がいなくなった夕暮れ時、夜にかけて起こると言われている。
【二〇××/〇四/二十×】
アンドウ先輩はさすがの語りでこの学校へ伝わる怪談を話しきった。淡々と話しているはずなのに、話に引きずり込まれるような、不思議な感覚に襲われた。
話し終わったアンドウ先輩の横顔は、青と橙が混ざった、夕暮れ時の幻想的な光に照らされて、とても、こう、見惚れしまうというか、目が離せなかった。
「ヤマナシ君、大丈夫かい?ホラー駄目なのに、すまないね。」
「い…いえ」
「少しだけ話を続けるよ。ここまで六つ話したけれど、七つ目は未だ謎とされている。」
「…………あくまで、七不思議なんだよな?六不思議ではなく。」
「そうだよ。そしてこの話は今僕たちがいる“新校舎”ではなく…………」
「あっちの“旧校舎”の話ってことか?」
「ご名答。」
そう、この麗名高校には新校舎と旧校舎、そして体育館棟、部室棟の四つの建物があって、かなり広大な敷地面積を誇る高校だ。アンドウ先輩が話してくれた怪談は今は使われていない、立ち入り禁止の旧校舎で言い伝えられているもの。
「…………え、行くんすか?!旧校舎」
「いや、余程の事がない限りは立ち入らないよ?そんな、馬鹿な動画投稿者のような真似はしたくないからね。」
「え、じゃあ、どうやって調べるんすか。」
「図書館で資料探したりかな。一先ずは。ただ、一つ懸念点があってね。」
「なんすか?」
「今年度が始まってから、正確にはその少し前から、あの旧校舎からかなり強めの悪霊の気配がするんだよね。」
万が一、立ち入り禁止を無視して立ち入る命知らずの馬鹿がいた場合の事を考えたら、早めに六不思議【仮称】を解明するべきだと思ったのだと、アンドウ先輩は言う。
「【オカ研】を立ち上げたのもその為だよ。悪霊沙汰は最悪の場合人命に関わるからね。」
「じゃあ、俺を誘ったのは霊感プラスお祓いとか…………ってことっすか?」
「そういうこと。仮に君が出来なくても、お爺様である神主様への伝手はできるだろう?」
「なるほど…………」
人命に関わると言われるとなんだか断りずらいような気もしてくる。
実際、心霊スポット巡りが増えだす夏場は、神社へお祓い依頼や飛び込みでのお払いがよく来るもので、お祓いの儀式をするときは、ばっちゃんと一緒に儀式会場から一番遠い部屋に避難してたっけ。
じっちゃんからも、不用意に心霊スポットへ近づかないこと・降霊の儀、こっくりさんとかをやらないように、小さいころから釘を刺されていたな。
「あー…………そういわれると断りにくいんすけど、仮の部員ってことじゃダメっすか?」
「というと?」
「俺、軽音部入りたいんすよ、だから、何かあったら手伝うくらいの。」
「…………えーーーーー入部してくれる流れじゃないのかい?」
「入部届、二枚書くの怠いんすよ。」
「正直すぎるね?まぁ、何かあったら手伝ってくれるというなら、それだけで百人力だよ。」
「あ、でも、説明会の日の事は許しませんからね?」
「…その節は申し訳なかったね…………」
「ま、一旦は謝罪してもらったし。じゃ、そゆことで。俺軽音部に入部届出してきますわ。」
さすがに人命には代えられず、万が一の際の協力をする約束と、連絡先の交換だけして、今日の所は解散となった。その日のうちに、俺は無事に軽音部への入部を果たし、部活騒動は一先ず幕を閉じた。
ヨシノ兄弟には、ことの顛末をあらかた説明しておいた。協力体制を結んだことにかなり驚いてはいたけれど、人命には代えられなかったって言ったら、なんか納得してもらえた。
ちなみに、俺は軽音部ではベースを始めた。そして、成り行きではあるが、ミナトくんともバンドを組むことが出来て何とか楽しい部活動ライフを送ることが出来ている。その後、アンドウ先輩から連絡が来ることはなく、日々を過ごしていた。
「月見里ヒロ君!【オカルト研究同好会】に入らないかい?!」
「だ!か!ら!入らないって言ってるじゃないっすか!!!しつけぇなぁ!!!」
ここに戻ってくる…………。というわけだ。この数日の間で、ミナトくんは自分の部活動である軽音楽部が本格化するということで離脱、ハルは有言実行、サッカー部への入部を確定させ離脱。
俺はこんな状況だから、部活動体験にはまともに行けていない。ハルの付き添いでサッカー部へ行ったのと、ミナトくんがいるから軽音楽部に行っただけである。そう、まだ俺はフリーな状況、アンドウ先輩にとっては好条件になってしまったのだ。
そして放課後、俺のいる教室まで凸られてしまい、今に至るのである。ただ、俺はこの数日間で決めたことがある。そう一度、アンドウ先輩と腹を割って話してみようと思った。
というのも、ミナトくんから話を聞く限り、アンドウ先輩は二年生の中でも変わり者と言われているというより、もはや孤立、限りなくいじめに近い状況だそうで、なんだか可哀そうになってきたのと、ここまで俺に執着するということは、霊感があると勘違いしたこと以外に何かのっぴきならない事情があるのかも。と、思ったのである。
「あ…………。さーせん…いつものノリと勢いで拒否っちゃいました。」
「ほう、今日はなんだか素直だね?」
「いや、一回はちゃんと話聞いてやってもいいのかな。と」
「随分上からだね?まぁ、ちゃんと話す機会を作ってくれたことに感謝するよ。」
改めて対面してみて、最初の説明会の時に“ビジュがいい”と思ったくらいだから、顔の良さに今までの悪行のすべてを許しそうになった。己があまりにもチョロすぎて怖い。とはいえ、ちゃんと話をしてみないことには分からない。
「まぁ、先日伝えた通り、だよ。」
「俺に霊感があると思ったから…………。ですよね?」
「そうさ、だからこそ、この学校に言い伝えられている怪談を一緒に調査できるかと思ったんだ。」
「言い伝えられてる怪談?そんなのあるんすか?」
「ああ……この学校独自の七不思議みたいなもので…」
そう言ってアンドウ先輩はしれっと教室へ入ってきて適当な席に座り、ポツポツとこの学校に伝わる怪談を語り始めた。
【××××/××/××】
これは、いつごろから伝わっているか分からない話である。俗にいう『七不思議』それは各所によって伝わるものが変わっている。
麗名高校に伝わるものはこうだ。
一つ『三階の階段を数えると段数が変わる。そしてその先には存在しないはずの四階があり、進むと帰って来れない。』
二つ『屋上から校庭を見下ろすと、校庭に墓石の影が見える。見てしまったら最後、墓へ引きずり込まれる。』
三つ『空き教室に体の一部が無い生徒たちが先生を待つように座っていて、間違えて入ると先生として死ぬまで授業をやらされる。』
四つ『二階、理科室の隣のトイレ、一番奥、和式トイレの個室を使うとトイレの中から手が伸びてきてそのまま下水に引きずり込まれる。』
五つ『体育館棟の奥、教師や用務員ですら近づくのを憚る開かずの間がある。そこからうめき声が聞こえてくる。』
六つ『校舎裏には、花壇があり、そこには死体が埋められており、花壇の花がぐちゃぐちゃになっていると、死体が校舎を徘徊している。』
七つ『××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××』
これら全ては、生徒、教職員全員がいなくなった夕暮れ時、夜にかけて起こると言われている。
【二〇××/〇四/二十×】
アンドウ先輩はさすがの語りでこの学校へ伝わる怪談を話しきった。淡々と話しているはずなのに、話に引きずり込まれるような、不思議な感覚に襲われた。
話し終わったアンドウ先輩の横顔は、青と橙が混ざった、夕暮れ時の幻想的な光に照らされて、とても、こう、見惚れしまうというか、目が離せなかった。
「ヤマナシ君、大丈夫かい?ホラー駄目なのに、すまないね。」
「い…いえ」
「少しだけ話を続けるよ。ここまで六つ話したけれど、七つ目は未だ謎とされている。」
「…………あくまで、七不思議なんだよな?六不思議ではなく。」
「そうだよ。そしてこの話は今僕たちがいる“新校舎”ではなく…………」
「あっちの“旧校舎”の話ってことか?」
「ご名答。」
そう、この麗名高校には新校舎と旧校舎、そして体育館棟、部室棟の四つの建物があって、かなり広大な敷地面積を誇る高校だ。アンドウ先輩が話してくれた怪談は今は使われていない、立ち入り禁止の旧校舎で言い伝えられているもの。
「…………え、行くんすか?!旧校舎」
「いや、余程の事がない限りは立ち入らないよ?そんな、馬鹿な動画投稿者のような真似はしたくないからね。」
「え、じゃあ、どうやって調べるんすか。」
「図書館で資料探したりかな。一先ずは。ただ、一つ懸念点があってね。」
「なんすか?」
「今年度が始まってから、正確にはその少し前から、あの旧校舎からかなり強めの悪霊の気配がするんだよね。」
万が一、立ち入り禁止を無視して立ち入る命知らずの馬鹿がいた場合の事を考えたら、早めに六不思議【仮称】を解明するべきだと思ったのだと、アンドウ先輩は言う。
「【オカ研】を立ち上げたのもその為だよ。悪霊沙汰は最悪の場合人命に関わるからね。」
「じゃあ、俺を誘ったのは霊感プラスお祓いとか…………ってことっすか?」
「そういうこと。仮に君が出来なくても、お爺様である神主様への伝手はできるだろう?」
「なるほど…………」
人命に関わると言われるとなんだか断りずらいような気もしてくる。
実際、心霊スポット巡りが増えだす夏場は、神社へお祓い依頼や飛び込みでのお払いがよく来るもので、お祓いの儀式をするときは、ばっちゃんと一緒に儀式会場から一番遠い部屋に避難してたっけ。
じっちゃんからも、不用意に心霊スポットへ近づかないこと・降霊の儀、こっくりさんとかをやらないように、小さいころから釘を刺されていたな。
「あー…………そういわれると断りにくいんすけど、仮の部員ってことじゃダメっすか?」
「というと?」
「俺、軽音部入りたいんすよ、だから、何かあったら手伝うくらいの。」
「…………えーーーーー入部してくれる流れじゃないのかい?」
「入部届、二枚書くの怠いんすよ。」
「正直すぎるね?まぁ、何かあったら手伝ってくれるというなら、それだけで百人力だよ。」
「あ、でも、説明会の日の事は許しませんからね?」
「…その節は申し訳なかったね…………」
「ま、一旦は謝罪してもらったし。じゃ、そゆことで。俺軽音部に入部届出してきますわ。」
さすがに人命には代えられず、万が一の際の協力をする約束と、連絡先の交換だけして、今日の所は解散となった。その日のうちに、俺は無事に軽音部への入部を果たし、部活騒動は一先ず幕を閉じた。
ヨシノ兄弟には、ことの顛末をあらかた説明しておいた。協力体制を結んだことにかなり驚いてはいたけれど、人命には代えられなかったって言ったら、なんか納得してもらえた。
ちなみに、俺は軽音部ではベースを始めた。そして、成り行きではあるが、ミナトくんともバンドを組むことが出来て何とか楽しい部活動ライフを送ることが出来ている。その後、アンドウ先輩から連絡が来ることはなく、日々を過ごしていた。
