【二〇××/〇四/〇×】
四月某日、某県某市、先週までの花散らしの雨によって、桜は全て散り切りムードもへったくれもない中、俺、月見里ヒロは家族に見守られながら、市立麗名高校へ入学した。
ここ、麗名高校は市の伝統文化を重んじる校風が有名で、特にこれといった実績は残しているわけではないけど市のボランティアをする部活動があったり、現市長が麗名高校の卒業生だったり、卒業生が地元で起業して地元のニュース番組で特集が組まれてたり…。まあ、いわば完全に地元特化型の高校である。在校生の九割が地元の人間で市外から来ていると物珍しい目で見られる…らしい。生まれも育ちもこの市の俺にはあまり関係のないことではあるんだけど。
「それでは、続きまして新入生代表の言葉、新入生代表、月見里ヒロ。」
「…はい。」
司会進行の薄らハゲの教頭先生の言葉を合図に覚悟を決めて自席から立ち上がり壇上を目指す。異様なまでに早く脈打つ心臓を落ち着かせながら壇上へ辿り着いて周りを見渡すと、神妙な面持ちでこちらを見ているこれから同級生になる奴ら、その後ろに早々に飽きた顔で欠伸を隠しきれていない在校生……くそ…特別人前に立つことに慣れていないから、向けられる視線が痛い……。
「…………あれって、月見里神社の息子さんだっけ……?」
「そうらしいぞ……あれが神社の息子……?」
そして在校生のそのさらに後ろでひそひそ話をしている保護者が目に入る……が、その保護者席の中に一際笑顔な俺の家族。笑顔の家族の姿に少し安堵したのだが、おい、一部の誰の親か分からない保護者よ、ひそひそ話って案外目立つんだぞ…少しは自重しろよ…と心の中で毒づくが、まあ、ひそひそ話をしたくなるのも分からなくはない。
高校一年生、十五歳にしてはデカい身長、幼少期から整っていると褒められていた見た目、やかましいくらいの明るい地毛の天パ。それに加え、地元で一番有名な月見里神社の一人息子であること。噂になりやすい要素が詰まりに詰まりまくっている。
俺の実家でもある月見里神社は初詣、七五三、夏祭り、各種祭礼行事やイベントごとを市の中で一手に担い行っていて、地元から愛されている古い歴史を持つ神社。俺が新入生代表の言葉を任されたのも、恐らく、入試の成績が良かったのもあるだろうけど、俺が月見里神社の一人息子だからというのも大いにあると踏んでる。
気を取り直して、成長期を見越して少し大きめに注文した制服のポケットから、新入生代表の言葉が書かれた紙を取り出し、ほんのちょっと震える手で紙を開き読み始める。
「暖かな春の日差しが降り注ぐ今日、僕たち百六十名は麗名高校へ入学します。」
新入生代表の言葉をガチガチに緊張しながら読み上げているこの時の俺は、この一年でとんでもないことに巻き込まれていくなんて、一ミリも思っていなかった。
「以上、新入生代表、月見里ヒロ。」
「……ヤマナシ ヒロねぇ……。」
もちろん、俺をいろんな意味で狙っている熱視線にも。
四月某日、某県某市、先週までの花散らしの雨によって、桜は全て散り切りムードもへったくれもない中、俺、月見里ヒロは家族に見守られながら、市立麗名高校へ入学した。
ここ、麗名高校は市の伝統文化を重んじる校風が有名で、特にこれといった実績は残しているわけではないけど市のボランティアをする部活動があったり、現市長が麗名高校の卒業生だったり、卒業生が地元で起業して地元のニュース番組で特集が組まれてたり…。まあ、いわば完全に地元特化型の高校である。在校生の九割が地元の人間で市外から来ていると物珍しい目で見られる…らしい。生まれも育ちもこの市の俺にはあまり関係のないことではあるんだけど。
「それでは、続きまして新入生代表の言葉、新入生代表、月見里ヒロ。」
「…はい。」
司会進行の薄らハゲの教頭先生の言葉を合図に覚悟を決めて自席から立ち上がり壇上を目指す。異様なまでに早く脈打つ心臓を落ち着かせながら壇上へ辿り着いて周りを見渡すと、神妙な面持ちでこちらを見ているこれから同級生になる奴ら、その後ろに早々に飽きた顔で欠伸を隠しきれていない在校生……くそ…特別人前に立つことに慣れていないから、向けられる視線が痛い……。
「…………あれって、月見里神社の息子さんだっけ……?」
「そうらしいぞ……あれが神社の息子……?」
そして在校生のそのさらに後ろでひそひそ話をしている保護者が目に入る……が、その保護者席の中に一際笑顔な俺の家族。笑顔の家族の姿に少し安堵したのだが、おい、一部の誰の親か分からない保護者よ、ひそひそ話って案外目立つんだぞ…少しは自重しろよ…と心の中で毒づくが、まあ、ひそひそ話をしたくなるのも分からなくはない。
高校一年生、十五歳にしてはデカい身長、幼少期から整っていると褒められていた見た目、やかましいくらいの明るい地毛の天パ。それに加え、地元で一番有名な月見里神社の一人息子であること。噂になりやすい要素が詰まりに詰まりまくっている。
俺の実家でもある月見里神社は初詣、七五三、夏祭り、各種祭礼行事やイベントごとを市の中で一手に担い行っていて、地元から愛されている古い歴史を持つ神社。俺が新入生代表の言葉を任されたのも、恐らく、入試の成績が良かったのもあるだろうけど、俺が月見里神社の一人息子だからというのも大いにあると踏んでる。
気を取り直して、成長期を見越して少し大きめに注文した制服のポケットから、新入生代表の言葉が書かれた紙を取り出し、ほんのちょっと震える手で紙を開き読み始める。
「暖かな春の日差しが降り注ぐ今日、僕たち百六十名は麗名高校へ入学します。」
新入生代表の言葉をガチガチに緊張しながら読み上げているこの時の俺は、この一年でとんでもないことに巻き込まれていくなんて、一ミリも思っていなかった。
「以上、新入生代表、月見里ヒロ。」
「……ヤマナシ ヒロねぇ……。」
もちろん、俺をいろんな意味で狙っている熱視線にも。
