片平結子を巡る責任の所在について

 皆さん、ありがとうございます。
 阻觀獵留土を実行してくださったのですね。
 きっとこれを読んだ全員ではないのでしょうが、確かに感じます。
 大変助かりました。
 いくら感謝しても足りないほどです

 おかげで片平結子の希釈に成功しました。
 僕を蝕む忌々しい呪いも、今は随分と大人しくなりました。
 痣のように残って鈍痛を訴えますが、死に至るほどではありません。
 あの想像を絶する苦痛……不快感や痒みに比べれば、まるで天国にいるような気分です。

 本当にありがとうございます。
 何度でも感謝を伝えさせてください。
 そして今さらですが、嘘をついたことを謝ります。

 阻觀獵留土は呪殺を予防する術ではありません。
 本当は死者のもたらす呪いを薄めて弱体化させる呪術です。
 より正確に言うなら他人を巻き込み、自分に届く被害を削ぐのです。
 皆さんにお伝えした阻觀獵留土はニセモノで、何の効果もありません。
 騙してしまい申し訳ありません。

 真の阻觀獵留土は、呪いをかけてきた死者の遺書を分解します。
 その文章を余さず使って新たな文章に潜り込ませて、他人に読ませることで完了します。
 成功すると、文章を読んだ人間に呪いの被害を肩代わりさせて、術者に降りかかる呪いを軽減できます。
 肩代わりする人間が増えるほど呪いの殺傷力は分散され、一人あたりの負担も軽くなるわけですね。

 さて。
 もうお気づきでしょう。
 ここまでの一連の文章こそ、私が施した阻觀獵留土です。
 インターネットを彷徨う幽霊なんていません。
 片平結子はただの悪霊です。
 彼女の遺書を僕が分解し、適当な文章を書き上げて間に挟み込んだのです。

 頻繁に紛れ込む不穏な言葉について考察しましたか?
 隠れた意味があるのではないかと思いましたか
 半分は正解ですが、こちらの意図までは察せなかったでしょう。
 すべて僕が保身のために行ったことなのです

 阻觀獵留土を使った甲斐もあり、片平結子の呪いは希釈されました。
 前述の通り、最悪な状態を知る僕からすれば、劇的に改善されたと言えるでしょう。
 爛れて膿だらけだった肌にも艶が戻ってきました。
 これで今夜はよく眠れそうです。

 皆さんはそろそろ体調不良を感じるでしょうか。
 文章を読み込むほど呪いの浸透が深まったはずです。





 頭痛はありますか。

 痒みはどうでしょう。

 右側から視線を感じませんか?

 四肢の小指の感覚はまだ残っていますか

 顎の痺れを忘れてはなりません

 腹痛は喉まで上がってきます

 鼓動が二つ聞こえたら深刻ですね

 老婆の幻聴を無視しないでください

 空が緑色なのは、あなたの認知能力に問題があるためです

 皮膚を炙ると腐乱したブドウの香りがしますよ

 中指の爪は速やかに剥がすことを推奨します

 夜中三時の耳鳴りには手拍子で対処してください

 片平結子の顔を忘れてください

 彼女の名を口にしてはいけませんすぐに来ます





 他にも何らかの異常を感じたら気を付けてください。
 片平結子は既にあなたを狙っているでしょう。

 もし表現しがたい壮絶な死を迎えたくなければ、一連の文章の拡散にご協力ください。
 阻觀獵留土は現在も発動中です。
 関わった人間が増えるほど、片平結子の呪いは薄まります。
 どうか自分のためにも広めてください。
 それが唯一の対処法です。

 ご迷惑をかけて申し訳ありません。
 よろしくお願いします。