その日は、家族全員でキャンプに出かけるはずでした。当時から両親がkukkaはやっていましたから、店の入り口には一週間前から二日ほど私用によりお休みをさせて頂きますと張り紙をして。
父の提案でしたが正直私は当時高校一年でしたし、家族でキャンプとか……ってあまり乗り気ではありませんでした。ですが、悠斗があまりにもはしゃぐものでしたから渋々納得しました。悠斗と私は年が七つも離れているので悠斗は私からしても子供みたいな感じで、まあ仕方ないなって思わずにはいられませんでした。
でも、キャンプの前日に私は熱を出してしまい、当日になってもそれが良くなりませんでした。父は「仕方ないさ、中止にしよう」と言ってくれましたが、私はそれまでの日々でどれだけ悠斗がキャンプを楽しみにしていたかを知っていたのでただの風邪だし私は一人で大丈夫だからと三人を送り出しました。止めるべきでした。今思い返せば、どうしてあの時、父の提案に乗らなかったのかと悔しさと後悔で壊れてしまいそうになりました。
母と父、それから悠斗は車で隣県にある山奥のキャンプ場へと向かいました。日程は一泊二日。翌日の昼過ぎには帰るからなと父は言い、母は「こっちからも電話はするけどなにかあったらすぐ電話するのよ」と私を心配してくれました。ですが、母から電話がかかってくる事はありませんでした。それどころか翌日の昼にも帰ってこず、なんだか途端に胸騒ぎがして私は何度も電話を掛けました。母に、父に、それから悠斗に。順番に一人ずつ。何度も何度も。
当時の私は高校一年になったばかりで正直知識も教養もなく、もしかしたら三人が事故とか事件に巻き込まれたのかもと思いながらもどうしたらいいのか分からなくてずっと店先で待っていました。涙は自然に溢れました。心配で、怖くて、仕方なかったんです。もしあれが最後だったらどうしよう。私の、私のせいだ。行かないでって言えば良かった。父が言ってくれたたように、また別の日にしようと言えば良かった。考えたくもないのにそんなことが頭で溢れ、おかしくなりそうでした。近隣の方が何度も声をかけてくれましたが、私はただ泣き続けるばかりでした。
結局、三人が戻ってきたのは帰宅予定日から二日後のことでした。通りの向こうから三人が歩いてくる姿がみえた時、私は泣きながら駆け出しました。お父さん、お母さん、悠斗。どうしたの、なにがあったの? 連絡くらい返してよ! 何を言ったかは覚えてはいませんが、たぶん私はそんなことを言ったと思います。唯一覚えているのは、泥、と言ったこと。ええ、泥です。三人の服は一目でなにかがあったと分かる程に泥まみれで、至るところに水を吸い込み渇いた跡がありました。
はい、私は聞きましたよ。なにこれって。でも、母がこう言ったんです。なにも覚えてないって。目が覚めた時にはこうなってたって。おかしかったんです。最初から。話すのは母ばかりで、父と悠斗はまるで薬を飲んで朦朧としているみたいに虚ろな目をして一切口を開くことはありませんでした。対して母は、私が怖くて動けなくなっていたところに「ああ、お腹空いたわね。なにか食べようか」って笑いました。瞳孔は完全に開いて、まるで何事もなかったみたいにあっけらかんとして。店の中に母が入っていくと、磁力かなにかで引き寄せられたみたいに父と悠斗が歩き出しました。私は、その背中をただみつめることしか出来ませんでした。たぶん怖かったんだと思います。もうその時から既に三人が戻ってきてくれた嬉しさみたいなものは私のなかにありませんでした。家族ですから、すぐに分かったんです。あれは、違うって。母じゃない。父も、悠斗も、別のなにかだって。
父の提案でしたが正直私は当時高校一年でしたし、家族でキャンプとか……ってあまり乗り気ではありませんでした。ですが、悠斗があまりにもはしゃぐものでしたから渋々納得しました。悠斗と私は年が七つも離れているので悠斗は私からしても子供みたいな感じで、まあ仕方ないなって思わずにはいられませんでした。
でも、キャンプの前日に私は熱を出してしまい、当日になってもそれが良くなりませんでした。父は「仕方ないさ、中止にしよう」と言ってくれましたが、私はそれまでの日々でどれだけ悠斗がキャンプを楽しみにしていたかを知っていたのでただの風邪だし私は一人で大丈夫だからと三人を送り出しました。止めるべきでした。今思い返せば、どうしてあの時、父の提案に乗らなかったのかと悔しさと後悔で壊れてしまいそうになりました。
母と父、それから悠斗は車で隣県にある山奥のキャンプ場へと向かいました。日程は一泊二日。翌日の昼過ぎには帰るからなと父は言い、母は「こっちからも電話はするけどなにかあったらすぐ電話するのよ」と私を心配してくれました。ですが、母から電話がかかってくる事はありませんでした。それどころか翌日の昼にも帰ってこず、なんだか途端に胸騒ぎがして私は何度も電話を掛けました。母に、父に、それから悠斗に。順番に一人ずつ。何度も何度も。
当時の私は高校一年になったばかりで正直知識も教養もなく、もしかしたら三人が事故とか事件に巻き込まれたのかもと思いながらもどうしたらいいのか分からなくてずっと店先で待っていました。涙は自然に溢れました。心配で、怖くて、仕方なかったんです。もしあれが最後だったらどうしよう。私の、私のせいだ。行かないでって言えば良かった。父が言ってくれたたように、また別の日にしようと言えば良かった。考えたくもないのにそんなことが頭で溢れ、おかしくなりそうでした。近隣の方が何度も声をかけてくれましたが、私はただ泣き続けるばかりでした。
結局、三人が戻ってきたのは帰宅予定日から二日後のことでした。通りの向こうから三人が歩いてくる姿がみえた時、私は泣きながら駆け出しました。お父さん、お母さん、悠斗。どうしたの、なにがあったの? 連絡くらい返してよ! 何を言ったかは覚えてはいませんが、たぶん私はそんなことを言ったと思います。唯一覚えているのは、泥、と言ったこと。ええ、泥です。三人の服は一目でなにかがあったと分かる程に泥まみれで、至るところに水を吸い込み渇いた跡がありました。
はい、私は聞きましたよ。なにこれって。でも、母がこう言ったんです。なにも覚えてないって。目が覚めた時にはこうなってたって。おかしかったんです。最初から。話すのは母ばかりで、父と悠斗はまるで薬を飲んで朦朧としているみたいに虚ろな目をして一切口を開くことはありませんでした。対して母は、私が怖くて動けなくなっていたところに「ああ、お腹空いたわね。なにか食べようか」って笑いました。瞳孔は完全に開いて、まるで何事もなかったみたいにあっけらかんとして。店の中に母が入っていくと、磁力かなにかで引き寄せられたみたいに父と悠斗が歩き出しました。私は、その背中をただみつめることしか出来ませんでした。たぶん怖かったんだと思います。もうその時から既に三人が戻ってきてくれた嬉しさみたいなものは私のなかにありませんでした。家族ですから、すぐに分かったんです。あれは、違うって。母じゃない。父も、悠斗も、別のなにかだって。
