〜遠山楓理〜
放課後の空気は、少し甘い。チャイムが鳴った瞬間、教室のざわめきがほどけて、みんな一斉にそれぞれの世界へ向かっていく。部活の人、帰る人、寄り道する人。その中で私は、わざとゆっくり立ち上がった。
今日はちゃんと意味があるから。
私は先に歩き出す。廊下の窓から入る夕日が、床に長い影を作ってる。階段を降りて、昇降口を抜けて、校舎の裏手へ。向かったのは、体育館の横。放課後は部活の声が響いてるけど、建物の影になっているこの場所は、意外と静か。人もあまり通らない。
「ここでいいや!」
私は立ち止まる。
「どうしたの?」
相変わらず落ち着いた声。私は鞄からスマホを取り出す。
「ちょっと見て!」
画面には、他校との合同イベントの案内ページ。地域交流企画で、代表生徒が数人参加できるっていうやつ。
「これ、応募しようと思ってるの!」
「...へぇ...」
反応が薄い。
「へえ、じゃなくて!」
私は一歩近づく。
「これ、ペア参加なんだよ!」
風が吹いて、髪が揺れる。
「樹くん、一緒に出ない!?」
言った。
教室じゃ言えない。あんなところで言ったら、結衣ちゃん莉央ちゃんどっちも何か察した顔するし。だから、ここまで連れてきた。樹くんはスマホを覗き込む。画面をスクロールして、内容をちゃんと読んでる。
「テーマは地域活性化か」
「そう! 絶対私たち向いてると思わない?」
「“私たち”なんだ」
「当たり前でしょ!」
私は胸を張る。
「こういうの、ちゃんと考えられる人とじゃないと意味ないもん!」
それに——
並んだときに、絵になる相手じゃないと困るし。
私には樹くんしか似合わないし、樹くんには私しか似合わない!
心の中でだけ思う。
「締め切り、来週か」
彼は静かに言う。
「うん。だから今日話したの!」
放課後にわざわざ移動したのは、ちゃんと向き合ってほしかったから。
軽いノリで決めてほしくない。
“ついで”みたいに扱われるのは嫌。
「どう?」
私はじっと見る。
少しの沈黙。
「いいよ」
その一言で、胸の奥がぱっと明るくなる。
「ほんとに!?」
「ちゃんと準備するならね」
「するに決まってるでしょ!」
私は思わず笑う。
ほら、やっぱり。
私が選べば、ちゃんといい形になる。
「テーマ、何にする?」
「まだ白紙。でもさ」
私は空を見上げる。夕焼けが濃い。
「どうせやるなら、一番目立つ案にしたいよね!」
「...堅実なほうが通りやすいけど」
「えー!」
私はわざと大げさに肩を落とす。
「夢がない!」
でも、その現実的な視点も嫌いじゃない。
派手に行くのは私の役目。
整えるのは彼の役目。
バランス、いいと思う。
「じゃあ、明日から考えよ!」
「そうだね」
あっさりしてる。でも断らなかった。それで十分。
体育館の中から、ボールの跳ねる音が聞こえる。吹奏楽の音も混ざって、放課後の学校はまだ生きてる。
「ありがと!」
私は笑う。
「絶対、私たちが一番目立つから!」
私はくるっと背を向ける。
「帰ろ!」
並んで歩き出す。少し距離はあるけど、同じ方向。
教室じゃだめだった。あの場所は、日常すぎる。でもここは、ちょっとだけ特別。
だから意味がある。
告白は、まだしない。
まずは一緒に何かをやること。
ちゃんと並んで、同じ場所を目指すこと。
...そうドラマで言ってた!
その先にあるものは——
きっと、私が一番似合う結末なんだから!
放課後の空気は、少し甘い。チャイムが鳴った瞬間、教室のざわめきがほどけて、みんな一斉にそれぞれの世界へ向かっていく。部活の人、帰る人、寄り道する人。その中で私は、わざとゆっくり立ち上がった。
今日はちゃんと意味があるから。
私は先に歩き出す。廊下の窓から入る夕日が、床に長い影を作ってる。階段を降りて、昇降口を抜けて、校舎の裏手へ。向かったのは、体育館の横。放課後は部活の声が響いてるけど、建物の影になっているこの場所は、意外と静か。人もあまり通らない。
「ここでいいや!」
私は立ち止まる。
「どうしたの?」
相変わらず落ち着いた声。私は鞄からスマホを取り出す。
「ちょっと見て!」
画面には、他校との合同イベントの案内ページ。地域交流企画で、代表生徒が数人参加できるっていうやつ。
「これ、応募しようと思ってるの!」
「...へぇ...」
反応が薄い。
「へえ、じゃなくて!」
私は一歩近づく。
「これ、ペア参加なんだよ!」
風が吹いて、髪が揺れる。
「樹くん、一緒に出ない!?」
言った。
教室じゃ言えない。あんなところで言ったら、結衣ちゃん莉央ちゃんどっちも何か察した顔するし。だから、ここまで連れてきた。樹くんはスマホを覗き込む。画面をスクロールして、内容をちゃんと読んでる。
「テーマは地域活性化か」
「そう! 絶対私たち向いてると思わない?」
「“私たち”なんだ」
「当たり前でしょ!」
私は胸を張る。
「こういうの、ちゃんと考えられる人とじゃないと意味ないもん!」
それに——
並んだときに、絵になる相手じゃないと困るし。
私には樹くんしか似合わないし、樹くんには私しか似合わない!
心の中でだけ思う。
「締め切り、来週か」
彼は静かに言う。
「うん。だから今日話したの!」
放課後にわざわざ移動したのは、ちゃんと向き合ってほしかったから。
軽いノリで決めてほしくない。
“ついで”みたいに扱われるのは嫌。
「どう?」
私はじっと見る。
少しの沈黙。
「いいよ」
その一言で、胸の奥がぱっと明るくなる。
「ほんとに!?」
「ちゃんと準備するならね」
「するに決まってるでしょ!」
私は思わず笑う。
ほら、やっぱり。
私が選べば、ちゃんといい形になる。
「テーマ、何にする?」
「まだ白紙。でもさ」
私は空を見上げる。夕焼けが濃い。
「どうせやるなら、一番目立つ案にしたいよね!」
「...堅実なほうが通りやすいけど」
「えー!」
私はわざと大げさに肩を落とす。
「夢がない!」
でも、その現実的な視点も嫌いじゃない。
派手に行くのは私の役目。
整えるのは彼の役目。
バランス、いいと思う。
「じゃあ、明日から考えよ!」
「そうだね」
あっさりしてる。でも断らなかった。それで十分。
体育館の中から、ボールの跳ねる音が聞こえる。吹奏楽の音も混ざって、放課後の学校はまだ生きてる。
「ありがと!」
私は笑う。
「絶対、私たちが一番目立つから!」
私はくるっと背を向ける。
「帰ろ!」
並んで歩き出す。少し距離はあるけど、同じ方向。
教室じゃだめだった。あの場所は、日常すぎる。でもここは、ちょっとだけ特別。
だから意味がある。
告白は、まだしない。
まずは一緒に何かをやること。
ちゃんと並んで、同じ場所を目指すこと。
...そうドラマで言ってた!
その先にあるものは——
きっと、私が一番似合う結末なんだから!
