チョークが黒板を叩く音が好きだ。最近はホワイトボードに取り替えられる教室も増えてきたが、この心地良さは何にも代えがたいものだと思う。
しかし、先生が鳴らすような軽やかな音を真似することは、今の俺には叶わない。
テスト範囲の演習問題で当てられてしまった俺は、必死に黒板の前で極大値と極小値を求めている。難しくはないが、楽しくもない。本来ならノートに解いたものを写すだけの作業だったが、今回はそうはいかなかった。
背後から暇を持て余したクラスメイトの雑談が聞こえてくる中、なんとかすべてを書き終えた。いくばくかの達成感とともに席に戻ろうとすると、先生の声に阻まれた。
「上崎、xのプラマイ逆」
家に帰りたくなった。
「もっと早く言ってくれたっていいじゃないですか……」
「すごい真剣な顔してたから」
理由になっていない。尚更タチ悪いわ、と心の中で悪態をつきながら黒板の前に戻り、式と増減表、グラフを修正した。
ようやく席に戻って正誤の確認が始まれば、周囲の席から一斉に丸をつける音が聞こえた。げんなりした。
窓越しに雲ひとつない空を睨んだ。
昨日雨が降ったせいだ。雨が降って、絹本と相合傘なんかして、折りたたみ傘を貸して。
本来問題を解いていたはずの時間には、休み時間に傘返しに来るかな、なんて想像をしていた。
それだけじゃない。明日明後日くらいにならないと傘乾かないか、とか、机の上に置いといてって言えばよかったかな、とか。そんなことを考え始めれば、注意散漫まっしぐら。結果一問も解けなかった。折りたたみ傘一つに、俺はどうしてこうも煩わされているのだろう。
この状態で集中できるはずもなく、残りの演習問題にも手をつけられなかった。再び当てられることがなくて本当によかった。
しかし、先生が鳴らすような軽やかな音を真似することは、今の俺には叶わない。
テスト範囲の演習問題で当てられてしまった俺は、必死に黒板の前で極大値と極小値を求めている。難しくはないが、楽しくもない。本来ならノートに解いたものを写すだけの作業だったが、今回はそうはいかなかった。
背後から暇を持て余したクラスメイトの雑談が聞こえてくる中、なんとかすべてを書き終えた。いくばくかの達成感とともに席に戻ろうとすると、先生の声に阻まれた。
「上崎、xのプラマイ逆」
家に帰りたくなった。
「もっと早く言ってくれたっていいじゃないですか……」
「すごい真剣な顔してたから」
理由になっていない。尚更タチ悪いわ、と心の中で悪態をつきながら黒板の前に戻り、式と増減表、グラフを修正した。
ようやく席に戻って正誤の確認が始まれば、周囲の席から一斉に丸をつける音が聞こえた。げんなりした。
窓越しに雲ひとつない空を睨んだ。
昨日雨が降ったせいだ。雨が降って、絹本と相合傘なんかして、折りたたみ傘を貸して。
本来問題を解いていたはずの時間には、休み時間に傘返しに来るかな、なんて想像をしていた。
それだけじゃない。明日明後日くらいにならないと傘乾かないか、とか、机の上に置いといてって言えばよかったかな、とか。そんなことを考え始めれば、注意散漫まっしぐら。結果一問も解けなかった。折りたたみ傘一つに、俺はどうしてこうも煩わされているのだろう。
この状態で集中できるはずもなく、残りの演習問題にも手をつけられなかった。再び当てられることがなくて本当によかった。
