いや、失敗だっただろうか。だって、友達ってきっとそういうものじゃないか。
うまく言葉にはできないけど、異変の原因に踏み入るというよりかは何も言わずに寄り添うというか。いやそれも違うか。というか、俺と彼は友達と言っていいのだろうか。難しい。
そんなことを考えながら体育館の片隅で膝を抱えていると、ふいに八杉が話しかけてきた。絹本の代役は他に見つかったらしい。
「絹本と話してるときのお前、なんかいつもと違くない?」
「そりゃ、気心知れたお前とは違うだろ」
「そうなんだけど、こう……あんま話したことない相手ともまた違うっていうか」
曖昧な言い方だった。だが、俺がさっきまで考えていたことと関連しているような気がしたから、掘り下げたくなった。
「もっと端的な言い方ない?」
「俺お前みたいに頭良くないから無理だよ」
「別に頭良くないけど」
「うっっわ腹立つ」
八杉は本気で嫌そうに顔を顰めた。それでも俺の要求に答えようとしているのか、唸りながら何度か首を傾げている。いい友を持ったと思う。
「……まあ、強いて言うなら、キャピってる……? みたいな」
「キャピ?」
「少女漫画みたいな? ああ、あれだ。恋する乙女いったァッ!?」
頭で考えるよりも先に足が出た。脛を押さえて悶絶している八杉に「ごめん」と謝っておくと、彼は涙目で睨んできた。
「何すんだよもう……」
「いや、やっぱ乙女にされてたのかって絶望して……」
イケメンは男を乙女にできる。以前脳をよぎったものが確信へと変わりつつあった。
「は? お前絹本に掘られでもした?」
「あ?」
今度は手が出そうになったのをすんでのところで抑えた。
同じ過ちは犯さない。抑え切れなければ八杉の首と胴体は泣き別れになっていたことだろう。
「冗談だって。お前やっぱ絹本のことになるとおかしいよ」
「俺がどうかした?」
都合の良すぎるタイミングで投げかけられた声。その方向を向けば、案の定、件の絹本がいた。嘘だろ。どこから聞かれてた?
「絹本〜! 上崎がお前のこと好きすぎて怖いんだよー」
八杉は絹本に駆け寄ると、彼を盾にするようなポーズをとった。卑怯だ。
というか、まずい。ここで俺が変に反応すると拗れる。悩みの種が増える。本格的に日常に支障が出る。
でも、なんて言えばいい?
絹本が気にするようなことじゃない、と言ったときのことが走馬灯のように思い返される。
彼は「そっか」と、言ったばかりの相槌を繰り返した。だが、その声に「納得した」ような雰囲気はなかったように思えた。それはただの主観でしかなかったが、俺は失敗したと思い込んだ。その整理がついていない状態では、彼とまともに話せる気がしなかった。
「そんなわけないだろ」
そう宥めるように言ったのは、俺ではなく絹本だった。彼は八杉の手をやんわりと解くと、俺に同意を求めるように目線を送った。
それに気圧されるように頷いたが、その動作が自分でもぎこちなく思えて仕方がなかった。
うまく言葉にはできないけど、異変の原因に踏み入るというよりかは何も言わずに寄り添うというか。いやそれも違うか。というか、俺と彼は友達と言っていいのだろうか。難しい。
そんなことを考えながら体育館の片隅で膝を抱えていると、ふいに八杉が話しかけてきた。絹本の代役は他に見つかったらしい。
「絹本と話してるときのお前、なんかいつもと違くない?」
「そりゃ、気心知れたお前とは違うだろ」
「そうなんだけど、こう……あんま話したことない相手ともまた違うっていうか」
曖昧な言い方だった。だが、俺がさっきまで考えていたことと関連しているような気がしたから、掘り下げたくなった。
「もっと端的な言い方ない?」
「俺お前みたいに頭良くないから無理だよ」
「別に頭良くないけど」
「うっっわ腹立つ」
八杉は本気で嫌そうに顔を顰めた。それでも俺の要求に答えようとしているのか、唸りながら何度か首を傾げている。いい友を持ったと思う。
「……まあ、強いて言うなら、キャピってる……? みたいな」
「キャピ?」
「少女漫画みたいな? ああ、あれだ。恋する乙女いったァッ!?」
頭で考えるよりも先に足が出た。脛を押さえて悶絶している八杉に「ごめん」と謝っておくと、彼は涙目で睨んできた。
「何すんだよもう……」
「いや、やっぱ乙女にされてたのかって絶望して……」
イケメンは男を乙女にできる。以前脳をよぎったものが確信へと変わりつつあった。
「は? お前絹本に掘られでもした?」
「あ?」
今度は手が出そうになったのをすんでのところで抑えた。
同じ過ちは犯さない。抑え切れなければ八杉の首と胴体は泣き別れになっていたことだろう。
「冗談だって。お前やっぱ絹本のことになるとおかしいよ」
「俺がどうかした?」
都合の良すぎるタイミングで投げかけられた声。その方向を向けば、案の定、件の絹本がいた。嘘だろ。どこから聞かれてた?
「絹本〜! 上崎がお前のこと好きすぎて怖いんだよー」
八杉は絹本に駆け寄ると、彼を盾にするようなポーズをとった。卑怯だ。
というか、まずい。ここで俺が変に反応すると拗れる。悩みの種が増える。本格的に日常に支障が出る。
でも、なんて言えばいい?
絹本が気にするようなことじゃない、と言ったときのことが走馬灯のように思い返される。
彼は「そっか」と、言ったばかりの相槌を繰り返した。だが、その声に「納得した」ような雰囲気はなかったように思えた。それはただの主観でしかなかったが、俺は失敗したと思い込んだ。その整理がついていない状態では、彼とまともに話せる気がしなかった。
「そんなわけないだろ」
そう宥めるように言ったのは、俺ではなく絹本だった。彼は八杉の手をやんわりと解くと、俺に同意を求めるように目線を送った。
それに気圧されるように頷いたが、その動作が自分でもぎこちなく思えて仕方がなかった。
