僕のたった1人のフォロワー

 翌朝、僕はアラームより前に目が覚めてしまった。そして今日から部活動に参加することになった。
 (ねむ………もっかい寝ようかな)
 学校もあるけど流石に眠すぎる。あと五分ならいいよね………
 そう考えてた時計ったかのようにDMが来た。
 「おはよう」
 太陽くんからだ。
 「おはよう」
 「早起きなんだね、まだ六時だよ」
 確かにスマホの時刻は六時よりちょっと前を指してる。僕の場合はなんか眠れなくて起きてしまったが六時なら二度寝してもよさそうだ。
 「なんか寝れなくって…」
 「二度寝する?」
 「うん」
 「じゃあまた後で」
 そう送られてきたのを見てOKと送り眠りについた。

 そして数十分後、アラームが鳴り目を覚ます。
 太陽くんにも「おはよう」とメッセージを送ると一瞬で既読がついて「おはよ」と返ってきた。
 「ちょうどお弁当作り終わったんだ」
 「お弁当自分で作ってるんですか?」
 最近の高校生は西宮くんといい自分でお弁当作る人が多いのだろうか。料理男子はモテると聞いたし太陽くんもモテるんだろうか。
 「そうだよ、二人分」
 「二人?弟さんいるとか?」
 僕がそう言うと太陽くんからはちょっと時間が経ってからメッセージが返ってきた。
 「お弁当と言ってもお昼一緒に食べる子と分ける用のデザート的な?」
 僕はそれにどこか覚えがあるような気がしたがなんだか思い出せなかった。
 「デザートも作れるのすごい」
 「ありがと、俺そろそろ学校行くけどアオくんは?」
 「じゃあ、僕もそろそろ出ようかな」
 僕は太陽くんにそう返して身支度をして玄関へと向かう。
 「碧ー、ご飯はー?」
 「今日もいい」
 「ちゃんと食べなさいよ」
 「大丈夫だから」
 僕は扉を少し乱暴に閉めて駅へと走った。

 ガタンガタンと音を立てながら走る電車の中で僕はスマホを覗く。
 太陽くんの投稿で美味しそうなお弁当の写真があったのでいいねを送っておいた。
 「碧くんじゃん、おはよ」
 咄嗟にスマホを閉じて顔を上げると西宮くんが立っていた。
 「いやーうちの制服じゃんって思って見たらまさか碧くんとは」
 「お、同じ電車だったんだ」
 「そだねー、俺いつもこの時間のこの電車なんだけど碧くんは?」
 「僕も同じ………」
 「マジ?お互い気づかなかったんだね」
 「そうだね………」
 まさか西宮くんが同じ電車だったなんて、西宮くんなんだからオーラとかそういうので気づくと思ったんだけど。
 「あ、そうだ。お昼の時言おうとしたんだけどここでもいいか」
 「何?」
 「弁当さ、俺作っていい?」
 「………え?」
 「碧くんの分の弁当、フルーツサンドじゃなくて普通に弁当」
 「えっ!?」
 思わず声が出た。周りに小さくペコリと頭を下げ西宮くんを見る。
 西宮くんはなんというかのほほんとしてるというかそんな感じの表情をしている。
 「でも………大変じゃない?」
 「いやー全然、大して変わらんよ。容器も予備のあったし、碧くんがいいなら明日からでも作ってくる」
 「………じゃあお言葉に甘えて」
 「明日から持ってくるね、楽しみにしてて」
 僕はコクリと頷き学校に着くまで西宮くんと少し雑談をした。

 そしてお昼、いつものように屋上へ来た…………いつものように???
 なんだか、この前一緒に食べてから毎回屋上で二人で食べてる気がする。他の子からもお弁当誘われてるのに。
 「今日の弁当はね、いつもより気合い入れたんだ」
 そう言って西宮くんが開けたお弁当の中身はとても美味しそうでどこか見覚えのある中身だった。
 「美味しそう!」
 「食べたいのあったら取ってもいいよ、卵焼きとか食べてみて」
 僕は西宮くんにあーんされながら卵焼きを頬張る。
 「ん、美味しい」
 「よかった、碧くんって卵焼きは甘いほうがいい?今日のは甘い味付けにしたんだけど」
 「うん、甘いほうが好き」
 「そっか、じゃあ甘いのにするね」
 西宮くんは僕の頭をポンポンと撫で自分のお弁当を食べる。
 (………あれ?)
 なんだかさっきからあーんとか頭ポンポンとか友達とは思えない距離のことばかりしてるような気がする。
 西宮くんは平然とした顔でしてくるしこれが西宮くんがいつも友達にしてる事なのだろうか、勝手に友達だと思ってるけど流石にそうでもないやつにこんなことはしないだろうし………これが西宮くんの普通なら合わせるか。
 「他にこれダメとかあったら教えてね、弁当。今日色々買って帰る」
 「特に好き嫌いないよ、あーでもブロッコリー苦手かも」
 「わかるー、上のブツブツと茎のフニフニ?みたいなの俺も嫌かも」
 「ほんとにねー」
 僕らがブロッコリーの話をしていると突然何か思いついたのか西宮くんが話題を変える。
 「てかさ、今日部活終わったら一緒に買いに行こーよ。俺の分でもあるから全部俺出すよ」
 「え、でも申し訳ない」
 「大丈夫だよ、弁当美味しそうに食べてくれれば作ってよかったーってなるしそれで十分」
 やっぱりモテ男と僕は住んでる世界が違うのだろうか、僕だったらそんなこと言えるわけが無い。
 「決まりね、もう昼休み終わるから戻ろっか」
 「うん」
 僕がお弁当を片付けて立ち上がろうとすると西宮くんに引き止められる。
 「どうしたの?」
 僕が問いかけると西宮くんは僕の口元を指でなぞってその指をペロリと舐める
 「クリームついてたよ」
 「っ!?!?」
 あまりの衝撃に思わずフリーズする。それと同時にチャイムが鳴り僕らは急いで教室へと戻った。

 そして放課後。
 「今日からマネージャーになった二年の常磐碧です。よろしくお願いします………」
 「じゃあ磯山、色々教えてやってくれよー。お前らは一旦ウォームアップで校庭一周な!」
 そうしてサッカー部の人達は次々と走りに向かった。西宮くんも僕に手を振りながら後をつけるように走り出した。
 「よろしくお願いします………」
 「よろしく、じゃあ倉庫にビブスあるから取ってきて」
 「どの辺に………」
 「言ったらわかるから、鍵開いてると思うから」
 「はい………」
 なんか怖いな………けどマネージャーなんだし文句は言えない。僕は倉庫のほうへ急ぎ足で向かった。
 「……………」

 倉庫の扉を開けてビブスが入ってるカゴを見つけ持ち出そうとすると後ろから声をかけられる。
 「ねぇ、あんた西宮くんの何?」
 「え?」
 そう聞いてきたのはさっきのマネージャーの女子だった確か名前は磯山さんだっけ。
 「何って………友達だけど」
 「友達ねぇ………」
 なんだか不穏な空気が流れてるような気がする。磯山さんが何か言おうとしたところで向こうから声をかけられる。
 「磯山ー、常磐ー!そろそろ戻ってこーい」
 「……ほんとに友達なの?自分でそう思ってるだけでしょ」
 うっ、それは確かにそうだ。けれど西宮くんだって誰にでもあんなことはしないだろうから西宮くんからもそう思われてると思うんだけどな。
 「なんかあったの?磯山、碧くん」
 「いや、なんでもないの」
 「えっと…………」
 磯山さんは何事も無かったかのように部活に戻るが僕はビブスの入ったカバンを手にただボーッとしていた。
 「俺が運ぼうか?重い?」
 「え?あいやなんでもない」
 磯山さんが何をしようとしたのかは分からない。僕はただ初めてだからと一旦簡単な仕事以外は前のように見学をすることにした。

 部活動も終わりみんなそれぞれで家へと帰っていく。
 「じゃあ俺らも行こっか」
 「うん」
 僕らはいつもと違う道で帰ってスーパーへと立ち寄った。
 「このハンバーグ美味そう」
 「ほんとだ、最近の冷食ってすごいね」
 イメージ画像とはいえこんなに食欲がそそられるのは初めてだ。しかもお弁当にちょうどいいサイズだし大容量、この時代に珍しい。
 「じゃあこれにしよっか、他食べたいのある?ないなら俺の好きなもん入れるけど」
 「んー、じゃあきんぴらとか食べたい」
 「きんぴらねー、おっけ」
 そう言って西宮くんはゴボウと人参(にんじん)をカートに入れる。
 「え、そここら作るの?」
 「うんそーだよ?全部作られてたら手抜き感あって嫌なんよね」
 「別に気にしないのに」
 「俺が気にするの、碧くんのために作る弁当だから腕によりかけたい」
 「僕なんかにそこまでしなくていいのに」
 僕がそうつぶやくと西宮くんはキウイをカートに入れ僕の目を見る。
 「碧くんはさ、俺と弁当食うの嫌?」
 「そんなことないよ全然」
 「ほんと?じゃあさ俺と家帰るのは?」
 「いつも一人だったし買い出し誘ってくれて嬉しかった」
 「ならよかった、明日からも一緒に帰ろうね」
 西宮くんは嬉しそうに次々と鶏肉や片栗粉なんかをカートに詰める。
 これで友達らしくいられてるだろうか。西宮くんが嬉しそうならそれでいいのかな。

 そして買い物も終わり家へと着いた。
 外は暗かったが途中まで西宮くんが途中まで送ってくれて心強かった。
 家に着いてスマホを見ると太陽くんからDMが来ていた。
 「今家着いた」
 「僕もついさっき」
 「どこか行ってたの?」
 「友達?とお買い物を」
 「俺もそんな感じ」
 (こんな偶然あるんだ)
 まさか太陽くんも同じだったなんて、太陽くんもお弁当自分で作ってるみたいだしもしかしたら明日のお弁当用の買い出しだったりして。
 「ていうか太陽くんもお弁当自分で作ってるんだ」
 「うん、てかもってことはアオくんも?」
 「いや、今日一緒に買い物に行った友達も自分で作ってるらしくて」
 「そーなんだ、なんか奇跡」
 確かに奇跡という二文字がちょうどいいのかもしれない。お弁当作ってるだけならまだしも同じタイミングで家に着いて同じ理由で外にいたんだもの。
 「碧ー!ご飯できたよー!」
 僕らがDMで話している間にご飯もできたみたいでお母さんに呼ばれる。
 「じゃあ僕ご飯食べに行ってくるね」
 「いってらっしゃい」
 そう返ってきたのを確認して僕はリビングへと向かった。

 そして翌日
 いつものようにまた屋上で二人きりのお昼。
 「じゃーん、碧くんの弁当」
 「いただきます」
 僕がワクワクしながらお弁当の蓋を開けると中身はほとんどが茶色だった。
 申し訳程度の卵焼きとミニトマトがちょこんとあるくらい。
 「なんか色々詰めてたら茶色になっちゃった、ごめんね」
 「全然大丈夫、僕お肉とかも好き」
 「そう?ならよかった」
 そして僕は西宮くんがくれたお弁当から真っ先に卵焼きを食べた。
 口の中にほんのり広がる甘さと卵のトロトロさが絶妙で今まで食べてきた中でダントツの美味しさだった。
 「この卵焼きめっちゃ美味しい」
 「ほんと?なら俺のもあげる」
 そう言って西宮くんは僕のお弁当に自分の卵焼きを入れる。
 「西宮くんの分なくなっちゃうからいいよ」
 「遠慮すんなって、俺はいつでも作って食えるし」
 「……ありがとう」
 「どういたしまして」
 西宮くんはフッと得意げに笑う。
 僕は次に唐揚げを口に入れる。その唐揚げも噛んだ瞬間肉汁が出てきてお弁当のおかずかと疑うほどだった。お店を出していいレベルの料理スキルですごく羨ましい。
 「美味しい?」
 「うん、すごい」
 「作った甲斐があったな」
 僕は西宮くんも気にせずその美味しいお弁当をペロリと平らげる。
 こんなに食べたのは久しぶりだ。
 「ごちそうさまでした」
 「いつものやつもどうぞ」
 僕は待ってましたと言わんばかりにフルーツサンドに食いつく。
 「ねーねー碧くん」
 「ん?何?」
 「誕生日っていつ?」
 「九月の二十日(はつか)かな」
 「修学旅行の日じゃん」
 そう、今年の修学旅行と僕の誕生日は被ってしまっているのだ。
 しかも二日目というなんとも言えないタイミング。
 「一緒の班なろうね」
 「え、僕でいいの?」
 「碧くんがいいの、碧くんと一緒の班じゃないならサボる」
 西宮くんは僕をキラキラした目で見つめる。
 その圧に押され僕はOKをすると西宮くんは冷静でいながらも尻尾をブンブン振り回してるくらい嬉しそうということは伝わった。
 修学旅行、一体どうなるんだろうか。