ルックアットミー

「保健所……可哀そう」
うつむいていた千鶴がそう呟くのを聞いて私はつい「人間を襲った犬だよ?」と、言い返してしまった。
千鶴が驚いた表情で顔を上げる。
「そうやで。下手したら失明するところだったんよね? それなら仕方ないやん」
「そ、そうだね」
真弓が私の肩を持ち、千鶴が慌てて自分の意見を変更する。
それよりさぁ、ふたりのこと下の名前で読んでもいい?
もちろんいいよ。
そんな他愛のない会話に変わっていったとき、開け放たれた教室のドアからひとりの女子生徒が入ってきた。
みんなの視線がその人に注がれる。
入学式で答辞を読んでいた根本明美だ。