ルックアットミー

グルルルと低くうなる野生の声が聞こえてきて私は息を飲み、足を止めた。
草木に覆われた庭の奥から声が聞こえてくる。
草木が左右に別れたかと思うと、そこから真っ黒な動物が姿を見せた。
体も耳も目も真っ黒なそれは私の膝くらいの大きさがある。
唯一白く見えているのはとがった牙だけだった。
私は犬から目をそらさずに後ずさりをする。
持っていた食パンはいつの間にか落としてしまってどこに行ったのかわからなくなっていた。
私は視線を犬へ向けたまま、手探りで手近な木を握りしめた。
枝はパキッと渇いた音を立てて、簡単に折れた。
折れた枝先をジリジリとにじりよってくる犬の鼻先へと突きつける。