後宮のガリレオ2

 夜が明け始めた頃。麗麗は自分の房の寝台からむくりと起き上がった。

 抜き足、差し足、忍び足で房の入り口へと近づくと、()寝番(しんばん)をしていた雪梅がこっくりこっくり船をこいでいる。

 (やーっと寝た!)

 快哉をあげたくなるが、ぐっと我慢して、麗麗はその横をぬるっとすり抜けた。

 (申し訳ないと思ってんだよ)

 雪梅含む、深藍宮の面子が麗麗を心配していることはわかっている。だからこそ、皇帝が呼んだ宦官に無理やり院子から連れ出されたときも、強制的に宮に連行されたときも、麗麗のそばにはお目付け役の雪梅がついていたし、交代制で麗麗の房の前には女官たちが詰めていたのである。

 どうやら、あの皇帝が瑛琳妃になにか言ったらしい。麗麗の単独行動を懸念しているのだとわかり、麗麗は穏やかではなかった。

 当たり前のように、単独行動(それ)をするつもりだったからである。

 (こっちの行動パターンがばれてんだよねえ……なんでかね)

 表情に出ていたからだということまではわからないのが麗麗だ。そのせいで厳重な監視下に置かれていたが、残念ながらこちらは夜更かしに慣れている。前世では散々やってきたので、一徹くらいはお茶の子さいさいというものだ。

 房の入り口で壁にもたれかかり、すうすうと寝息を立てる雪梅の横をそうっと通り過ぎ、足音を立てないようにして回廊へと躍り出る。

 日の出直前の、青紫色をした空を見上げて、麗麗は深呼吸をした。