後宮のガリレオ2

 ──先日の深夜。香炉を探すのを最優先にしたため、かなり派手な音を立てていた麗麗と冥焔である。当然、音に敏感な女官も、宮を警護していた宦官たちも何事かと集まってきてしまったのだ。その中にはもちろん、香鈴もいた。

 見られてしまったからには仕方がない。冥焔は厳重な箝口令(かんこうれい)を敷いたうえで、香炉に難ありと説明をした。今後も同じことがあるかもしれない、警戒心を持て、という意味も込め、毒の件も含めて包み隠さず話したのだ。

 そのときの香鈴の表情は、見ているだけで心が痛くなるくらいだった。真っ白な顔色で震え始め、今にも倒れそうな彼女を支えたのは花里と雪梅だ。

 花里は香鈴の肩に手を添え、震える声で冥焔に懇願した。

 「冥焔様。なにとぞご容赦くださいませ。香鈴は決してわざとそのような危険なものを仕入れたわけではございません。もちろん、なにかしらの懲罰が必要だとおっしゃるのであれば遠慮なく。しかし、どうか命だけは……! 今後しっかり監督いたしますゆえ、今回だけは、どうか、お許しいただけませんか……!」

 「わかっている」

 冥焔は女官たちを安心させるかのように、しっかりとうなずいた。

 「この香は外から見ただけでは危険だという事実がわからない造りである。尚方の者にも見分けがつかなかった物を、いち女官が判断できるとは思えない。ゆえに、その女官に落ち度はない」

 花里と雪梅の緊張した顔がほんの少しだけゆるんだ。

 「だがしかし、報告はさせていただく。その女官の処罰については瑛琳妃が下すであろう」

 否は出なかった。女官の犯した罪に対しての処罰は仕えている妃が下すものだ。

 夜が明けて、冥焔からも報告を受けたのだろう。瑛琳妃は香鈴と女官頭の花里を呼び出し、正式に不問に処すと告げたのだそうだ──。