突き落とされるような衝撃とともに星花が感じたのは、冷たい水の感触だった。
なぜか凍てついた水中にいると理解し、激しく混乱する。
――み、水の中!? どうして!? さっきまで会社で仕事してたのに!
何が起きているかわからないが、早く水中から脱出しなければと藻掻く。
藻掻くうちにすぐ異常に気づいた。
手足が自由に動かない。
それもそのはずだ。
懸命に目を開けると、手足が短くなっていたのだから。
水面から陽光が差し込んでおり、今の自分の身体がよく見えた。
短い腕と足は肌が張り、触らずともふっくらぷにぷにした柔らかい感触だとわかる。
――え、嘘……! 私……赤ちゃんになってる!?
星花はさらなる混乱に陥る。
理由は不明だが、アラサーの身体が赤ちゃんになったことは事実だった。
――これは夢? ……いえ、この感覚は夢じゃない! 現実だ! なんで赤ちゃんに……! そ、それより……息が……。
激しい混乱の後には息苦しさが増す。
赤ちゃんの身体ではろくに浮かび上がることもできず、星花は冷たい水の底に沈みながら死を覚悟した。
――何が起きているかもわからずに死ぬなんて……。
呼吸ができず、肺の空気が泡となって全て吐き出され、視界が暗闇に呑み込まれそうになったとき……。
その暗闇をかき分けるようにして、大きな手が水中に入ってきた。
星花を強く掴み、恐ろしい空間から引き揚げる。
たちまち、星花は身体が浮き上がる感覚とともに、明るい地上に救い出された。
――げほっ、ごほっ! 誰かが助けてくれた……?
星花は失った空気を取り入れようと、生きたいと精一杯呼吸する。
強く咳き込んでいると、彼女の頭上から低く落ち着いた声が降ってきた。
「おい、大丈夫か?」
思わず見上げると、星花の虚ろな目に日本人離れした美形名男性の顔が飛び込んできた。
ポニーテールにした赤髪からは水が滴り、髪と同じ鋭い赤色の瞳は紅玉のように煌々と輝く。
藍色を基調とし、程よい金で装飾された軍服らしき服を身に着けていた。
水に濡れたことも相まってか、彼の周りだけ光芒が差しているようだ。
男の眉間には皺が寄り表情は怖いのだが、星花の心と身体は比喩じゃなく不思議と温かく感じた。
力強い腕の抱き締めを受け、ここにいれば安全だと本能的に実感する。
――この人は……誰……? まるで芸術品……いや、天使みたいね……。
疲労が重たくのしかかる星花はぼんやりと思った。
もちろん男は人間なのだが、このときの星花には本当に天使のように見えたのだ。
そんな彼女に構わず、赤髪の男は厳しい表情と声音で周囲に呼びかける。
「あいつらを追いかけろ! 川を渡られたら面倒だぞ!」
その言葉を受け、周囲から馬に乗った何人もの騎士が川を渡り始めた。
どうやら、他にも人間がいたらしい。
みな黒鉄色をした鎧を身につけ、明らかにここは日本ではないとわかった。
突然の騎士もそうだが、何より中世ヨーロッパ風のファンタジーな光景に星花は驚く。
――ここはどこ……? いったい、私は……どうなって……。
とうとう繋ぎ止めていた意識の限界が来て、星花はぱたりと気を失った。
なぜか凍てついた水中にいると理解し、激しく混乱する。
――み、水の中!? どうして!? さっきまで会社で仕事してたのに!
何が起きているかわからないが、早く水中から脱出しなければと藻掻く。
藻掻くうちにすぐ異常に気づいた。
手足が自由に動かない。
それもそのはずだ。
懸命に目を開けると、手足が短くなっていたのだから。
水面から陽光が差し込んでおり、今の自分の身体がよく見えた。
短い腕と足は肌が張り、触らずともふっくらぷにぷにした柔らかい感触だとわかる。
――え、嘘……! 私……赤ちゃんになってる!?
星花はさらなる混乱に陥る。
理由は不明だが、アラサーの身体が赤ちゃんになったことは事実だった。
――これは夢? ……いえ、この感覚は夢じゃない! 現実だ! なんで赤ちゃんに……! そ、それより……息が……。
激しい混乱の後には息苦しさが増す。
赤ちゃんの身体ではろくに浮かび上がることもできず、星花は冷たい水の底に沈みながら死を覚悟した。
――何が起きているかもわからずに死ぬなんて……。
呼吸ができず、肺の空気が泡となって全て吐き出され、視界が暗闇に呑み込まれそうになったとき……。
その暗闇をかき分けるようにして、大きな手が水中に入ってきた。
星花を強く掴み、恐ろしい空間から引き揚げる。
たちまち、星花は身体が浮き上がる感覚とともに、明るい地上に救い出された。
――げほっ、ごほっ! 誰かが助けてくれた……?
星花は失った空気を取り入れようと、生きたいと精一杯呼吸する。
強く咳き込んでいると、彼女の頭上から低く落ち着いた声が降ってきた。
「おい、大丈夫か?」
思わず見上げると、星花の虚ろな目に日本人離れした美形名男性の顔が飛び込んできた。
ポニーテールにした赤髪からは水が滴り、髪と同じ鋭い赤色の瞳は紅玉のように煌々と輝く。
藍色を基調とし、程よい金で装飾された軍服らしき服を身に着けていた。
水に濡れたことも相まってか、彼の周りだけ光芒が差しているようだ。
男の眉間には皺が寄り表情は怖いのだが、星花の心と身体は比喩じゃなく不思議と温かく感じた。
力強い腕の抱き締めを受け、ここにいれば安全だと本能的に実感する。
――この人は……誰……? まるで芸術品……いや、天使みたいね……。
疲労が重たくのしかかる星花はぼんやりと思った。
もちろん男は人間なのだが、このときの星花には本当に天使のように見えたのだ。
そんな彼女に構わず、赤髪の男は厳しい表情と声音で周囲に呼びかける。
「あいつらを追いかけろ! 川を渡られたら面倒だぞ!」
その言葉を受け、周囲から馬に乗った何人もの騎士が川を渡り始めた。
どうやら、他にも人間がいたらしい。
みな黒鉄色をした鎧を身につけ、明らかにここは日本ではないとわかった。
突然の騎士もそうだが、何より中世ヨーロッパ風のファンタジーな光景に星花は驚く。
――ここはどこ……? いったい、私は……どうなって……。
とうとう繋ぎ止めていた意識の限界が来て、星花はぱたりと気を失った。

