死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

 それは優雅に。鳥の羽が優しく地面に落ちるような着地だった。

 突然目の前に。しかも上から降ってきたことに、驚きから足が止まる。見開いた目が映すその人は大きなフードを目深に被っていたので、男なのか女なのか分からない。
 やがて目の前の人がフードを取ったことで、男だと分かった。

 ――目を引くさらさらな銀髪。金色の中、猫の目のように瞳孔が細長くなっている目。
 何より印象的なのは足首近くまである長く、大きなマントを羽織り、フードを被っていた先程の姿はまるで――

「見付けた」

 私を見て男が静かに呟く。どこか冷たささえ覚える表情を向け――

「死神っ!!?」

 次の瞬間、私は大声で叫んだ。そのあまりの大きさに近くにいた通行人や、正面の男でさえ驚いた顔でこっちを見る。
 でも私は目の前にいる男しか見えなかった。
 まさに、イメージ通りの。理想的な死神像だったから。

 何だ? と奇妙な顔をしながら、周囲の人達が関わらないようにと去って行く中で、男は顔を引き攣らせながら答えた。

「そ、そう」

「やっぱり!!」

 そうだがと全て言い終わる前に。食い気味で言うと、私は死神の男の元に駆け寄る。胸ぐらを掴む勢いでマントを掴み、両手でぐいぐいと引っ張った。

「私を殺しに来たってこと!? ねぇ、そうだよね!? 死神が見えたら死ぬ間近だって言うもんねっ!!」

 興奮から早口になる。オタクが好きな話題を振られて、喋る時みたいに。
 普段人と喋るのが苦手なのが嘘みたいに流暢にしゃべ、いや、捲し立てた。

 引っ張られる男の上半身は、ぐらぐらと揺さぶられる。私よりも背が高いのに。勢いに圧倒され、されるがままと言った感じだった。

「そうだよ。俺はアンタを殺しに――って! 手ぇ離せ」

 最初こそガクガクした状態で話したが、いい加減鬱陶しくなったのか、掴んでいた私の手を払った。
 何だよこいつ……と言った目をしながら、マントを着直すと、元の冷たい表情に戻る。

「スズキ ハナ。アンタの魂を狩りに来た」

 ――何の前触れもなく。
 突如として突き付けられる、死の宣告。

 あれだけ興奮していた私も、信じられないと言った顔をして、その場に固まってしまう。

 目を見開く私を見る男に、同情する念は一切感じられない。そればかりか整った顔が相まって、更に冷酷さや冷淡さが伝わってきた。

 そっか……。
 私……死ぬんだ……。

 そう思うと、足が震えてくる。

 俯いていた顔を上げれば――気色悪い程のニヤケ面を晒した。

「――っ。やっったぁぁぁ!!」