死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

 おばあちゃんが死んじゃうかもと思うと、涙を堪え切れなかった。ぼろぼろと泣きながら、祖母の家の前から立ち去る。
 走って走って。向かうところは家じゃなかった。当然学校なんかでもなくて――向かう先もなく、ただ走った。

 もう、死にたい……。
 生きてたって、何も楽しくない!
 辛くて苦しくて、しんどいだけ!
 私が死んだって、誰も悲しまないんだから。

 死んだら唯一、おばあちゃんだけは泣いてくれたかも知れない。でもそのおばあちゃんが死んじゃったら――


 ――――私は本当に、ひとりぼっちだ――――


 足が走って行く方に走っていれば、やがて人通りが多くなる。いつの間にか、大きな駅の近くの繁華街エリアに来ていた。
 夕方18時前。学校帰りや仕事帰り、塾や習い事に向かう人達。買い物にショッピングモールに向かう人達が大勢歩いていて、私の不気味な見た目が多くの人の目に入る。
 怖っと呟く人、不審者扱いに避ける人、面白がって笑う人。様々な人に、様々な反応。それら全て、私には入ってこない。

 ようやく足を止めて、重い前髪の隙間から、ここが駅前だと理解する。この周辺にある物を思い出して、止めていた足を走らせた。

 駅に来る度、思っていたんだ。
 あのビルからの屋上。飛び降りたら死ねそうだなって――。

 もう何年も前に使われなくなった廃ビル。その前は1階にコンビニ、上階の方には歯医者やどこかの会社が入っていた。

 でも移動か閉店か。ひとつの施設が使われなくなると、次々と空き部屋が増えていき、やがて全てがビルから撤退してしまった。
 それから入る会社はなく、入居者希望の張り紙が貼られて数ヶ月。買い手の付かない廃ビルとなった。

 もちろんビルの中には入れない。シャッターが下りていて出入り口は塞がれているけど、ビルの外壁には螺旋状の非常階段があった。

 ――そこを上れば、簡単に屋上に行くことが出来る。

 確かこのビルは、10階以上あったはず……。

 昼休み、読んでいた本に書かれていた内容を思い出す。そこには何階以上がいいとか書いてあった気がするけど、失敗したら? とか、怖いとか、そんなことは思いもしなかった。

 ただただ――楽になりたかった。

 廃ビル付近もそれなりに人が歩いていた。ビルを見上げる、不気味な女の子を止める人は誰もいない。

 涙は止まった赤い目を非常階段に向けた時。

 上空からふわりと。黒い服を纏った人が降ってきた。