死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

 歯を噛み締めて、握る布団に強く皺が寄る。
 しばらくして落ち着いて顔を上げると、布団にふたつの涙の跡が出来ていた。

 ずっと鼻水をすすって、のそりと立ち上がる。机の引き出しの中から猫用のおやつを取ると、スカートのポケットに入れて、部屋を出る。
 泣いた後、まだ赤い目のままに。

 静かに階段を下りて、リビングの横を通り掛かると、甘い匂いがした。もう模試の話は終わったみたいで、蘭はソファに座ってテレビを見ている。
 母親の姿は見えないけど、甘い匂いから、きっと蘭の好きなホットケーキを焼いているんだろうなと思った。ご褒美と称して。

 そして同時に。そのホットケーキは決して、私に振る舞われることはない。

 家を出ることを告げずに、静かに玄関の扉を開ける。どうせ出掛けてくると言っても、どうぞと言われるだけで、それ以上聞かれることはないから。

 なるべく音を出さないように扉を閉めて、外に出る。友達もいない私が向かう先は、祖母の家だった。


 母方の祖母の家は、そう遠くなかった。歩いて15分程の距離にある。
 おばあちゃんはとっても優しい人で、小さい頃からよく遊びに行っていた。

 出来の良い蘭にだけ貰えていたお菓子も、おばあちゃん家に行けば色んなお菓子を用意してくれていた。
 蘭だけが買って貰えていたおもちゃも、おばあちゃんが買ってくれた。

 両親が蘭ばかりを可愛がることに、反論してくれた人でもあった。でもそれが原因で、母親はおばあちゃんに会いに行かなくなってしまった。

 けれど私には唯一の理解者で、何かあればいつも泣きに行って、話を聞いてもらった。
 そうして「泣いた後は笑わんとあかんよ」と言って、美味しい夕ご飯を作ってくれた。それは家で食べるより何倍も美味しくて、私の大好きな時間だった。

 おばあちゃん家は、私の居場所だった。
 おばあちゃんは、私の心の支えだった。

 そんな私のただひとつの存在だったおばあちゃんは――

 去年の冬に倒れてしまった。