死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

「ちょっと厳しいかな? って思ったけど、結果見たら全然余裕だったよ」

「さすが、言うことも違うわ。でもこれなら志望校も確実ね」

 中学3年生。高校受験を控えた、弟の模試の結果の話をしている最中だったようだ。

 蘭、弟は幼い頃から頭が良かった。小学生にはその才がメキメキと発揮され、クラス1には留まらず、学年内でも不動の1位を6年間キープし続けた。

 両親は教育熱心な人達で、物心ついた時くらいから、色んな勉強を教えられてきた。
 耳を慣らす為と、赤ちゃんの頃から英語のCDを一日中流していたり。幼稚園入園と同時くらいに、ひらがなカタカナを教えられ、書けるようにとお絵描きの代わりに鉛筆を持たされた。

 小学生になれば学校よりも先に、算数や漢字を叩き込まれ――友達と遊ぶ時間なんかなかった。

 けれど両親の熱心さとは裏腹に、私の“出来”は良くなかった。ちょっとしたミスが多く、100点が取れない。両親が躍起になればなる程私にプレッシャーが掛かり、満点から遠ざかっていく結果ばかりだった。

 そんな私とは真逆に、1歳下で生まれた弟は、日本語よりも先に英語を喋り出した。ひらがなやカタカナの覚えも早く、テストで100点を取り続ければ、両親の興味と喜びは弟だけに向けられるようになった。

 ――それを境に。両親から勉強についての話は一切なくなった。
 最初こそ解放されて安心感があったけど、それからどれだけ良い点数を取ったとしても、全てが手遅れだった。視界にすら入れてもらえず、適当な返事。悪い点数を取ったとしても、叱られもしない。

 高校受験の時も好きなところを選べばいいとは言われたけど、交通費は出さないからと言われ――徒歩圏内で通える高校を選ぶしかなかった。

 楽しそうな会話をするふたりに背中を向けて、階段を上がる。自分の部屋に入って机の上に鞄を置いてから、ベッドの傍にへたり込んだ。糸が切れて一気に力が抜けたように。
 布団に顔を埋めて、ぎゅっと布団を握り締めた。

 もう……ヤダ……。

 心の中に溢れる感情に、涙が滲み出てくる。
 学校でも、家でも、居場所はない。

 どこで間違っちゃったんだろう?
 どこを失敗した?
 ちゃんとお父さんとお母さんの期待に応えられていたら、今の私の毎日は楽しくなっていた?

 苦しくて辛くて、泣いてしまう。声を殺して泣く私の中に、ひとつの想いだけで埋め尽くされる。

 死にたい……。

 死にたい。死にたい。


 ――死にたい……!