死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

「――キーンコーンカーンコーン……」

 聞こえてきた学校のチャイムの音。

「予鈴のチャイムかぁ……。はぁ、戻らなきゃ」

 昼休みが終わり、5時間目の始まりを告げる5分前。トイレの個室の中。便器に座っていた私は、荷物掛けに引っ掛けていた鞄を取った。

 中には食べ終わったお弁当箱が入っている。読んでいた「自殺マニュアル」の本を鞄にしまい、気が進まないまま扉の鍵を開けた。

「カチャ」

 鍵の音が、静かなトイレの中に響く。教室に向かう廊下も人気はなく、静かなもの。

 お昼ご飯を食べ、昼休みを過ごしていたトイレは、教室がある校舎棟とは違った。理科室や音楽室、家庭科室がある、目的がなければ人の出入りがない別の棟だった。

 だからこそ快適な昼休みが終わり、教室に向かう足取りは重い。

 ……戻りたくない、戻りたくない。
 私なんていなくったって、何の問題もないんだから。

 ずっとトイレで過ごさせて欲しいと思いながら、教室がある棟に戻ってくる。
 1―4。それが自分のクラスであり、4組だからこそ、廊下を奥まで進まなければならなかった。

「うわ、出た」

 歩いていれば、聞こえてきた声。

「マジでキモイよなぁ」

「見た目マジ幽霊だからな」

 私の姿を見た、いや見てしまった男子ふたりが、うえっと不快な表情をして言う。

「目が見えなくて、黒髪ロングて。もさいにも程があるだろ」

「逆に狙ってんじゃね? 幽霊みたいって絶対思うじゃん」

「あー、逆に? だったらぴったりだもんな。トイレの花子さん」

 不快に思っていたと思えば、最後に悪口を言ってあははと笑い出す。
 もちろん聞こえるように言われているので、全部を聞いていたが、彼らの方を見ることなくスルーして通り過ぎた。

 ――言い返す勇気なんて、ない。
 あるはずもなく、そもそも勇気があればきっと。こんなことにはなっていないんだから――。

 陰口や悪口は日常茶飯事。けれど心には当然ダメージはあって。
 じわじわと湧き出てきた負の感情に、自分の素直な気持ちを心の中で呟いた。

 あぁ……。
 死にたい。