ある行方不明事件の調査について

◯月☓日

定時巡回異状なし。

防犯カメラ監視業務中、窃盗グループから連絡あり。昨日から水谷と連絡がつかないとのこと。なにか知らないかと情報を求めてきたため、ここ数日見かけていないと返答する。以前、水谷のことを相談した際に窃盗グループのリーダーも対応を考えていたとのことで、もしかしたら気づいて逃げたのではないかと推察しているもよう。その可能性が高いと同意しておく。
それにしても、宮下という少女の仕事の早さには驚かされる。水谷がモンスターと言ってたのが皮肉に思えるほど、彼女はしっかりと仕事をしてくれたようだ。


◯月☓日

定時巡回異状なし。

防犯カメラにて監視業務中、宮下が来店しているのを確認。宮下は防犯カメラを見上げたまま、ずっと手招きのような仕草を繰り返す。正直なところ、これ以上は深く関係したくなかったが、宮下に確認するべきこともあったため、売り場にて宮下と接触する。宮下に水谷のことを確認すると、宮下は笑いながらいなくなってよかったねと返答。その目だけ笑っていない笑みに背筋が凍りつきそうになるも、とりあえず水谷の件が無事処理されたことを確認する。
それにしても、この宮下という少女からは本能的な恐怖を感じて落ち着かなくなってしまう。見た目は育ちのよさそうな少女だが、そのどこまでも堕ちていきそうな黒い瞳だけは、この少女が普通ではないと物語っていた。
私もこの仕事について二十年近くなり、多様な犯罪者を見てきたつもりだ。欲に負けて脳が壊れた人間の瞳というのは、私の経験上輝いていないことが多い。これは物理的な光量ではなく、人間の意思のような光と言ったほうがいいだろう。こうした連中の瞳は、笑っていても、穏やかに話をしていても目が輝くことはない。常になにかを警戒し、いつでも嘘をつけるように違うなにかを見ている瞳といった感じだ。こうした連中の瞳が輝くのは、欲望の対象に遭遇したときだけであり、罪を重ねるごとにその輝きはどんよりと重く沈んだものになる。
だが、この少女は違っている。あきらかに普通ではないのは間違いないが、他の連中とは違って重く沈んでいない。むしろ希望に満ちたような輝きを放つこともあり、その異様な雰囲気とのギャップが、本能的な恐怖を呼び起こしているのかもしれなかった。
宮下に訪ねてきた中学生の件を聞くと、宮下は既に対策はしているとのこと。どんな対策かについては言及しなかったが、おそらく聞いても言及しないだろうし、以前話していた驚愕の事実である人をひとり消したということ関係していそうなことがなんとなくわかった。
宮下に来店した用件を聞いたところ、前回訪ねてきた中学生が再度接触してきたら教えてほしいとのこと。理由は言わなかったが、おそらくは対策とやらが関係していると推察し、引き受けることにする。
ついでに中山のことを改めて聞いたところ、平然とした態度で私がやったと自白する。なにをやったかについては、その瞳が妖しく揺らめいたことで追求を断念せざるをえなかった。

※後に防犯カメラのデータを再調査して判明したが、中山とふたりで化粧品コーナーに来たときに、宮下は化粧品を見るよりも中山の動きを見ているようにも見えた。その底冷えするような眼差しから、このときには既に宮下の中で犯行の意志が固まって
いたものと思慮される。