完璧美貌な女装公子は、夜だけ猛獣へと豹変する~顔面凶器な女装公子の秘密を握ったら、知恵も身も心もまるごとお買い上げされました~

「……で、こちらが本日の収支報告です。この宮、お茶代にお金をかけすぎじゃないですか?」

「口を動かさず、手を動かせと言ったはずだが?」

 薔薇姫は先ほどから何やら丹念に、鏡の前で自分の顔を点検している。
 この宮には、初老の女官が二人、若手が二人。そして例の護衛二人組。

「かの方は今頃、国境を越えたあたりでしょうか?」

 護衛の一人、中性的でゆるふわな癒やし系——に見えるが腕は確かな琥珀が、のんきに尋ねた。

「ああ。アレが駆け落ちしてくれたおかげで、こうして堂々と後宮掃除ができる。感謝せねばな」

 薔薇姫がさらりと言ってのける。
 この美貌で、どうやら中身はゴリゴリの野心家。
 話の内容はいまいちわからないが、どうやら後宮の膿を出したいみたい。  

「……櫻花。お前に利用価値がある事を喜んでおけ」

「光栄すぎて涙が出ます、主人様」

 私は棒読みで答えながら、散らばった帳簿をまとめ始めた。
 ブラック企業から、ベンチャー企業の極秘プロジェクト突入したみたい。

 逃走資金を貯める暇……あるかな。