完璧美貌な女装公子は、夜だけ猛獣へと豹変する~顔面凶器な女装公子の秘密を握ったら、知恵も身も心もまるごとお買い上げされました~

「そんなものは後回しだ。今日は、お前を『お買い上げ』してからちょうど百日目の記念日だからな」

 莉鷹様は、私を寝室……ではなく、新しく作られた彼専用の執務室へと連れ込んだ。
 扉が閉まった瞬間、彼は薔薇姫の時のような優雅な微笑みを捨て、猛獣のような、独占欲に満ちた瞳で私を見下ろした。

「……櫻花。お前が導き出した計算通り、この国は救われた。だが、私個人の損失はまだ埋まっていない」

「損失、ですか?」

「ああ。お前が仕事に熱中するたびに、私の『お前を愛でる時間』が奪われている。この精神的苦痛、どうやって支払ってくれる?」

 顔面凶器。
 至近距離で見つめられると、何度経験しても思考がフリーズする。
 彼は私の首筋に深く顔を埋め、甘く、けれど逃がさないという確固たる意志を込めて囁いた。

「借金はもう完済したと言いたいのだろうが、あいにく利息が膨らみすぎた。お前の知恵も、身も、心も——そして、お前の生涯のすべて。私が永久に、高値で買い占めてやる」

 唇が重なる。
 それは、洗濯板を抱えて泣いていた頃の私には想像もできなかった、あまりにも贅沢で、独占的なシンデレラストーリー。

「……莉鷹様。買い取り価格、本当に国一つ分を超えちゃいますよ?」

「構わん。この国ごと、お前にくれてやる」

 外では子供たちが未来を語り、中では執着心の塊のような主人が私を離さない。
 
 どうやら最強で最凶な男に、一生をかけて愛されるという『最幸』の結末を導き出してしまったらしい。

(……まあ、この調子だったら一生安泰そうだし。付き合ってあげてもいいかな)

 私は、降参の印として彼の首に手を回し、甘い豹変を受け入れた。

[完]